TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
殺戮ホテルの案内人

一覧ページ

「殺戮ホテルの案内人」のメインビジュアル

殺戮ホテルの案内人

4 - 殺戮ホテルの案内人 第4話

♥

1,659

2019年06月27日

シェアするシェアする
報告する

ナツキ

え、ちょっと、え!?

突然の出来事に

私は理解が追いつかない。

アキさんの肉片はあちこちに散り、

扉は血で真っ赤に染まっていた。

ドアマン

ったく…

ドアマンさんは、ハンカチを取り出し、

扉を拭き始めている。

ナツキ

アキさん…?

オボロ

ヒャハハハハハハハハ

オボロさんはケタケタと笑っていた。

オボロ

どんな人間も

オボロ

死ぬ瞬間ってのは、呆気なくて汚らしいもんだ

オボロ

だがよぉ?

オボロ

それこそが人間の美しさだろぉ!?なぁ!?

オボロさんは楽しくてたまらないという顔だ。

ナツキ

アキさん、死んじゃった…んですか?

ヨミ

そうですね

ナツキ

なんで!?

ナツキ

なんで殺されたんですか?

ヨミ

殺されたのではありません

ヨミ

彼女はドアマンが閉めた扉に挟まれたのです

ヨミさんは淡々と答える。

ナツキ

なんで閉めるんですか!?

ヨミ

ドアマンは扉を開閉するのが仕事ですから

ナツキ

じゃなくて!

ナツキ

なんで人がいるのに閉めるのかってことですよ!

ヨミ

ドアマンですから

ヨミ

彼は、自分のタイミングで扉を開け

ヨミ

そして閉める

ヨミ

それが仕事です

ナツキ

いやだから!

ヨミ

しかし残念です

ナツキ

残念…?

ヨミ

コンシェルジュが手にかけることによってのみ、

ヨミ

お客様の魂は取り出されるのです

ヨミ

あのような死に方では

ヨミ

魂ごと消えてしまう

ナツキ

止めなかったのは…どうしてですか?

ヨミ

アキ様のコンシェルジュは私ではありませんから

ナツキ

(なんだろうこの奇妙な感じ…)

ナツキ

(私たちの要望には答えてくれるし)

ナツキ

(強制はしない)

ナツキ

(でも…)

ナツキ

(肝心なところが全然伝わっていない!)

ヨミ

さぁナツキ様!

ヨミ

ぜひこの扉をご覧あれ!

ヨミ

どうですか?この装飾!

ヨミ

なんとも立派で美しい!

ヨミ

もっと近くで見ますか?

ナツキ

いや…大丈夫です

ヨミ

そうですか

ヨミ

では、ドアマンと話してみたらどうでしょう?

ナツキ

え!?

ナツキ

いや、その

ヨミ

遠慮することはありません

ヨミ

どうぞ、こちらに

ナツキ

ちょっと!

ヨミさんは私の手を引っ張り、

ドアマンさんのところへと連れて行く。

ナツキ

(あ、やっぱり暖かい)

白い手袋越しなのに、

ヨミさんの手からは温もりが伝わってきた。

ヨミ

お疲れ様です

ドアマン

あぁ、お疲れ

ドアマン

…なんか用?

ヨミ

こちらのお客様が

ヨミ

ぜひあなたと話したいと仰っていまして

ドアマン

…え、俺と!?

ヨミ

えぇ!

ドアマン

なになにどうしたの?

ドアマン

そういうの珍しくない!?

ドアマン

あんた、若いのにわかってんじゃん!

ナツキ

あぁ…はい

ドアマン

それでそれで?何を聞きたいの!?

ドアマン

仕事の哲学とかけっこう語れるよ!

ナツキ

あの、外に出たいんですけど

ドアマン

おぉ外に?

ドアマン

良いじゃん良いじゃん!出なよ!

ドアマン

外は無限の世界が広がっているからさ!

ナツキ

でも、さっきの人みたいになりたくないっていうか

ドアマン

あー、そこは運だよね

ドアマン

俺が開けている間にあんたが通りきれるか

ドアマン

そこはある意味さ、

ドアマン

互いのプライドとプライドの勝負なわけから

ナツキ

例えばなんですけど…

ナツキ

お客さんに合わせるってのはダメなんですか?

ドアマン

へ?

ヨミ

ナツキ様…!

ヨミさんが焦ったような声を出し、

オボロ

ヒヒヒヒヒヒヒ

オボロさんは愉快そうに笑い、そっと物陰に姿を消した。

ドアマン

…今なんつった?

ドアマン

え、なに?俺がお前らに合わせろってこと?

ドアマン

ドアマンが、ドアを通る人間に合わせて扉を開閉しろってこと?

ナツキ

え、いや、しろって言うよりも、

ナツキ

普通そうじゃないのかなって

ドアマン

おいおいおいおい

ドアマン

いい加減にしろよ

ドアマン

人が来た時にドアが開けば良いなら

ドアマン

自動ドアで十分だろうか!

ドアマン

え、バカにしてるよね?

ドアマン

ドアマンバカにしてるよね!?

ナツキ

いやバカになんて…

ドアマン

はい、もうキレた

ドアマン

さすがの俺もキレました

ナツキ

ごめんなさい!

ドアマン

いや許さないから

ドアマン

俺の大事な部分が傷つけられたから

ドアマン

俺の心の扉は閉ざされたから

ドアマン

しかもそれを開く鍵はね、

ドアマン

扉の中に入ってるわけだから!

ドアマン

つまり取り出し不可能だから!!

ナツキ

ちょ、ちょっと意味が分からないかも…

ドアマン

ふんっ!!

ガジャン!

ナツキ

な、なんですか今の音!?

ヨミ

フロア全体の鍵が閉められたようです

ドアマン

エレベーターもだからな!

ドアマン

お前のせいだぞ!

ドアマンは、入り口の扉を開き、

そして外へと出て行こうとした。

ドアマン

悔い改めろ!

ドアマン

ドアマンをバカにしたこと、一生後悔してろ!

その時、

彼が開いた扉の先から

わずかに外の光景が見えた。

ナツキ

(真っ白なバラ…?)

ドアマン

おい!無視してんじゃねよ!

向こう側から顔を半分覗かせて

ドアマンが怒鳴り声を上げる。

ナツキ

あ、ごめんなさい!

ナツキ

えっと、どうしたら許してくれますか?

ドアマン

…許して欲しいか?

ナツキ

あ、はい!

ドアマン

じゃあ、ひとつだけ言わせてもらう

ドアマン

バーカ!!

バタン

ナツキ

ど、どうしましょう!?

ヨミ

ナツキ様、ご安心ください

ヨミ

当ホテルは一流ホテル

ヨミ

こんな時のためにちゃんと備えを用意しております

ナツキ

(一流ホテルならそもそもこんな事態にならない気がするけど)

と思ったけど、私は口に出すのをやめておく。

ナツキ

ああもう…頭が痛くなってきた…

ヨミ

マスターキーを探してきましょう

ヨミ

彼がいれば…

ナツキ

あ…

ヨミ

ナツキ様…?

ナツキ

(…あれ?)

ナツキ

(ヨミさんの声が遠くなる)

ナツキ

(なにこれ?)

私の目の前の景色が、

ぐにゃぐにゃと歪んだ。

サツキ

ナツキ…

ナツキ

(サツキ…?)

ナツキ

(あぁ…早く家に帰らなきゃ……)

そう思いながらも私は、

その場で気を失った。

殺戮ホテルの案内人

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1,659

コメント

35

ユーザー
ユーザー

ツンデレドアマン

ユーザー

バーカ!!!......かわよっ!?

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚