テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
月明かりが照らす山道を、りんねと宇髄はただ歩いていた。
足元の石が転がり、何度もつまずきそうになる。
それでも、後ろを振り返ることはなかった。 前を歩く男――宇髄天元は、何も言わずに進んでいる。
その背中は大きく、まるで”別の世界の人間”のようだった。
……でも、りんねの手は震えていた。
寒さじゃない。不安。恐怖。これから何が起きるのか分からない、そんな先の見えない感情が、体の奥から滲み出ていた。
りんね
その瞬間だった
前を歩いていた天元が、ふと立ち止まった。
宇髄
りんねはハッとして、思わず手を後ろに引こうとした。
けれど、天元は何も言わずにその手を取った
大きくて、あたたかい手。
ごつごつしていて、傷跡がいくつもあるのに、驚くほど優しかった。
宇髄
そう言って、彼はそのまま手を引いたまま歩き出す。
りんねは少し目を見開き、けれど何も言わずに、その手を握り返した。
……この手は、きっと誰かを守るために振るわれてきた手。
自分も、そうなれるのだろうか。
少しだけ、心が軽くなった気がした。
しばらく歩いていると、天元が口を開いた
宇髄
そう言って現れたのは、灯籠の明かりに照らされた大きな屋敷。
飾り帯のような装飾が屋根を彩り、どこか異国めいた風鈴がかすかに鳴っている。
りんねは、ただぽかんと立ち尽くした。
りんね
天元はにやりと笑い、軽く頭を叩いた。
宇髄
そしてその夜、りんねは初めて――「鬼殺隊になる」という覚悟を、心に固めることになる。
屋敷に入ったのも束の間。食事も休息もないまま、天元は立ち上がり、外へ出るように手を振った。
宇髄
りんねは一瞬、顔をしかめたが何も言わずついていく。
屋敷の裏手――山道のさらに奥。そこには薄暗い林が広がっていた。
りんねは「最初の試練」に驚きを見せる。
りんね
宇髄
りんねは意味がわかっていなさそうな顔で宇髄を見る。
りんね
宇髄
宇髄
宇髄
そう言って天元は、腰の装飾から一枚の札のような紙を取り出し、木に貼りつける
宇髄
りんね
その言葉に、天元は口元だけで笑った。
宇髄
りんねは小さく息を吸って、木の間へ足を踏み出した。 ――その瞬間だった。
耳元で誰かの声がした。
りんね
心臓が跳ね上がる。声の主は、聞き覚えのあるものだった。
母の声。兄の声。誰よりも大切で、もう二度と聞けないはずの声――。
りんね
りんねはその場に膝をつきそうになった。 だけど、拳をぎゅっと握る。震えている。怖い。だけど、進まなきゃ――
りんね
自分の中に残っていた“弱い声”を、震える唇で塗りつぶす。
――その瞬間、幻影の声がふっと消えた
風が冷たく吹き抜けるだけの、静かな林。 りんねは、再び立ち上がった
その夜、りんねは罠にかかり、転び、何度も泣きそうになった。
それでも、逃げなかった
それだけで、十分だった。
夜が明け始めたころ、りんねは屋敷にふらふらと戻ってきた。
土まみれ、傷だらけ、涙の跡も残ったまま。 だけど、目だけは――まっすぐだった。
縁側に座っていた天元は、それを見て目を細める。
宇髄
りんね
天元は口角を上げて笑った。
宇髄
怖いはずなのに…
その笑顔は、どこか誇らしげで、少しだけ優しかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!