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医者
そう言われても、俺はうなずくだけだった。
鏡の破片が頭を切ったらしい。3針縫われた。 血は止まったけど、 心のざわつきはまったく止まらない。
処置室で医者の言葉を聞きながらも、 意識はずっと永玖のことばかり考えていた。
医者
あのとき、永玖の目はまるで “ここ”にいなかった。 俺の声も、体温も、全部通り過ぎていた。
処置が終わると、医師に頼み込んで、しばらく 永玖の病室の前に座り込んだ。 面会はできなかった。だけどそれでも、 俺はここを離れるわけにはいかなかった。
はやと
このまま、目を覚まさなかったら。 もう二度と俺の名前を呼ばなかったら。 考えるだけで、震えが止まらなかった。
翌朝
えいく
微かな声が聞こえた気がして、 思わず顔を上げた。 ガラスの向こう―― 永玖が、まぶたをわずかに動かしていた。
はやと
看護師さんが急いで中に入り、 医師もすぐに駆けつける。 俺は中に入れなかったけど、 それでもその瞬間、胸の奥がじわっと熱くなった
えいく
病室に入ると、弱々しくも永玖が 俺の名前を呼んだ。
はやと
ベッドに近づくと、永玖が手を伸ばしてきた。 その手を、震える指でそっと包み込んだ。
えいく
はやと
永玖の目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。 俺も泣きそうだったけど、必死にこらえて、 笑って見せた。
えいく
はやと
言いながら手を握った。 永玖の手は、熱があって、生きている証だった。