ナンパ男の秘密

ガララッ

ガララッ

シーツを干し終える

ガララッ

ちょうどL字型になったマンションの中庭に、ベランダがある。私はそこにシーツを干すのが、日曜日の習慣。

私にとってオフモードをスタートする大切な儀式。なのに、同じ時間に決まって向かいに住んでいる男が顔を出す。名前は前に自己紹介されて知った。

一カ月前の夜

ガララ…

ガララッピシャッ

そして現在…

私は完璧で、仕事もプライベートもしっかり者のアキノ。絶対崩したくない、文句言われたくない。嫌われたくない。

ガララッ

ガラララ

その日の夜

ガラララ…

足元が崩れちゃいそうって、言いそうになった。私は、本当は

ガラララ

私は、本当は、堕落している。朝起きられないし働きたくない。

可愛くないし、ぐうたらだ。昔デブってイジメられた。友達が少ない、好かれない。私は・・・

二週間後の夜

ガララ

ガラララ

私は、本当は猫になりたい。ふかふかのシーツでずっとゴロゴロしていたい。私は、本当は。いいのかな…

いいのかも

一週間後の朝

ガラララッ

秋晴れの空に、シーツがゆらゆら。毎週干さなくていい。

でも、今日は気持ちいい。秋晴れの日に、洗濯物を干す恋が始まる。