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扉から流れ出した冷気が体を包み込む
再起動した脳が警鐘を鳴らしていた
逃げなきゃ……
志織
しかし後ろからリサに背中を押され、止まることができない
志織
志織
抵抗も虚しく そのまま ずるずると店の中へ押し込まれてしまった
理彩
ぱたりとドアが閉められ、部屋の薄暗さが増す
理彩
志織
志織
理彩
理彩
志織
理彩
志織
理彩
志織
だって………
理彩
志織
なぜか考えが上手くまとまらない
理彩
再び あの香りが脳を通り抜ける
理彩
リサが何やら壁の貼り紙を指さしている
看板と同じ、真っ黒な紙-
警告の言葉が思いつかなくなった私は、渋々 目をそちらにちらと向ける
『こちらのお客様ならば、なんと"無料"で料理致します』
……無料!?
理彩
理彩
志織
理彩
志織
志織
理彩
リサが指さしたのは、文章の一部分だったようだ
吹き出しで何か書き足されている
既視感は頭の隅に追いやられ、それに私は気づかない
私とリサの視線が古びた貼り紙に注がれる
『お若い方、お太りの方大歓迎!! こちらのお客様ならば、なんと"無料"で―――』
志織
理彩
ふたりの視線は自然と、貼り紙から自らの腹部へと移っていた
理彩
志織
志織
志織
志織
理彩
理彩
………
無言で それぞれ相手の腹に手を伸ばす
むにゅ…
…
指先に感じたのは 私たちの腹部に張りつく、確かな質量-
理彩
志織
理彩
志織
理彩
志織
…………
理彩
理彩
志織
理彩
理彩
………
…
志織
理彩
志織
理彩
私たちの間には、罪悪感と甘い香りとが漂っていた
理彩
志織
理彩
志織
呼ばれるときに どれだけ恥ずかしい思いをするのかわからないの?
理彩
志織
理彩
リサの視線を追うと 黄ばんだ受付表が置いてあった
確かに 紙はぼろぼろ、下敷きの板も腐りかけ といった感じだ
【オツベル・ローラン】 【ザネリ・ダルベルト】
古めかしい字体で、いつのインクなのか すでに色褪せている
志織
だとしたら、相当 この店には人が訪れていないんじゃないだろうか
理彩
私の思考が またしても途切れる
いつの間に前に回り込んだのか
リサが受付表に『しおりさ』と書き込みはじめた
志織
ボールペンで書かれてしまい、仕方なく『しお』の部分だけ塗りつぶした
それにしても…
この受付表と にらめっこをする
やっぱりおかしい、よね…
いくら立地が悪いからって、今までの来客が謎の外国人2人だけ……?
もっとお客さんがいてもいいのに、今この部屋には私たち2人しかいない…
疑問が膨らんでいく
そんな私に何者かが反応した
志織
風もないはずの部屋で受付表が独りでに はらりとめくれる
内側で色褪せを逃れた白いページが開かれた
私はついその様子をみつめていた
白い紙の上、名前の欄のところにひとつの染みが浮かび上がる
染みが動き出し、それが線となり……文字が出来上がっていく
字体も言語も異なる膨大な名前が欄に書き込まれ、空白が足りないのか次々とページがめくられていく
だんだんその激しさを増していく
志織
思わず投げ捨ててしまった
その途端 静寂が訪れる
恐る恐る拾い上げると、受付表は何事もなかったようにまっさらなままだった
急な不安感に襲われ、出入口のドアへと駆け出す
ドアノブを力任せに回して、日の下へ出た
……はずだった
何が起こったのか頭が追いつかない
ドアの先に待っていたのは…
あの店のなかだった
焦りに急かされ、ドアノブにもう一度手を掛ける
今度はゆっくりと開いてみる
ギギッ……
………
やはり 同じだった
このドアはどこにも通じていない…
開けても もとの場所に戻ってきてしまう
永遠にここからは抜け出せない
そんな気がした
ふと あの香りを鼻がとらえる
気づけば、この部屋全体に香りが充満していた
第二章 了