密室×ゲーム

壁が剥がれかけている だだっ広い部屋

その壁の隅に 男の姿がある

もうひとり

その男とは反対の 部屋の角に

身を屈めている スーツ姿の男がいる

先ほどまで 無言だったその男は

どうしてか

苦しげな声を発している

すると スーツ姿の男が

そう口を開いた

この男も なにかを知っていそうな

口ぶりである

おれはその男にも そう問いただした

おれは歯噛みをして 男を睨みつけた

そのとき

右足がずきんと痛んだ

足輪のついた足を見遣る

輪の外側にはカミソリが びっしり剥き出しになっているが

その内部には 釘状の太いトゲが三本

ガスコンロの五徳よろしく生えており 足首に突き刺さっていた

じくりと痛んでいた その痛みの正体を知ると

ますますその痛みは増した

よく輪を観察すると

その直径は足首よりやや太めに 設計されていることに気づく

だが輪は 鎖で壁に繋がれている

おれは部屋を ぐるりと見回す

不思議なことに 外に出られるような扉は

どこにも存在しなかった

おれは その男の話を聞くのを やめるように

悲壮的な表情の男に 視線をおくった

男は両手で目を覆った

おれは額の べたべたした汗を拭う

あることに気づき 慌てて立ち上がった

部屋の中央に

さまざまな工具が置かれている

ハンマー

ハサミ

糸ノコギリ

ドライバー

アイスピック

包丁

ニッパー

薬瓶

あれは 狩猟用のボウガンだろうか

なんの役に立つのか いまいちよくわからない

ふたりも立ち上がって しげしげと「アイテム」を見つめていた

おれはまた あることに気づいた

おれたちそれぞれの手元に

茶封筒が置かれている

だが 手元とはいえ

少し身体を伸ばさなければ

取れない場所に 置かれている

右足首に食い込んだトゲが

皮膚を裂かなければ

取れない位置に あるのではないか

気弱になっていた男は 意を決した様子で

唾を飲み込んだ