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橘靖竜
340
るしゅ
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アンダープリズンは地下であるがゆえに、時間の経過を肌で感じにくい。
しかしながら、アンダープリズンには刑務官を含む多くの人間が勤務しており、時間の経過を直感的に感じられるように、決まった時間にチャイムが鳴るようになっていた。
ここに出入りしている間に、そのチャイムが大きく分けて3種類あることに、縁は気づいていた。
まず、朝の始業開始時間。
学校のチャイムを彷彿とさせる無機質なものが、決まって午前8時半に流れる。
次のチャイムは正午。
交代制ではあるものの、アンダープリズンに勤務する人間にだって昼休憩くらいある。
その合図となるのが正午のチャイムであり、この時には【エーデルワイス】が流れる。
そして、終業の合図――午後5時半に【蛍の光】が流れる。
そして、今まさしく【エーデルワイス】が流れた。
尾崎
尾崎
尾崎
0.5係の詰め所は、かつては独房だった部屋を改装したものだ。
存在自体が秘密裏であるため、警察署には居場所がない。
ゆえに、基本的にここが仕事場ということになる。
縁
アンダープリズンの構造は、思ったよりも複雑で広大である。
地下一階は刑務官の詰め所兼事務所なんかがある。
中嶋の話だと、アンダープリズン内で流れるチャイムを設定する機械も、刑務官の詰め所にあるとか。
坂田が収監されている独房があるのも、地下一階になる。
地下二階は主に住居スペース。
基本的にアンダープリズンの刑務官、従事者達は、泊まり込みでの勤務になる。
船乗りのように数ヶ月単位で泊まり込み勤務をするそうだ。
そのため、個人の部屋はもちろん必要であるし、簡単な軽食を自動販売機で購入できる休憩スペースも設けられている。
一度、弁当を忘れた縁は、二階に降りてパンを買ってきたことがあった。
その他、地下二階には娯楽室、大浴場や食堂などもあるそうだ。
中途半端に部外者である縁達は、それらの恩恵には与れないのであるが。
地下三階は動力室だの機械室があり、アンダープリズンのシステム面を補う場所らしい。
こちらには専門のエンジニアが、泊まり込みで常駐しているそうだ。
そして、普段はあまりアンダープリズンの人間との接点がない縁達だが、この時ばかりは少し事情が異なる。
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チャイムが鳴り終わる前に、ノックもなく0.5係の扉が開き、作業着姿の小柄な女性が姿を現した。
縁
彼女の名は新田桜(にったさくら)といい、三階で常駐するシステムエンジニアだ。
桜
尾崎
尾崎のことをチョンマゲ呼ばわりし始めたのは、間違いなく坂田である。
髪を後ろで結えたスタイルを変えればいいのだが、尾崎は絶対にスタイルを崩そうとしない。
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アンダープリズンの人間は、食堂に向かえばすでに食事が用意されている。
一方、外部の人間である縁達は、基本的に弁当持参。
尾崎にいたっては、自動販売機でカップラーメンを購入するのが、いつものルーティンとなっていた。
食事は提供されないが、しかし食堂を利用することは許可されている。
だから、桜が時折誘いに来るのだ。
なぜ、わざわざ誘いにきてくれるのかと言うと――。
基本的に男社会なのである。
食堂に入ると、すでに刑務官や職員で、テーブルも半分ほど埋まっていた。
その大半が男性であり、そして彼女の席の周りだけ、まるで避けるかのように席が空いていた。
桜
食事を盆にのせて戻ってきた桜は、彼女のほうに向かって歩き出した。
極端に女性が少ない社会であるため、必然的に彼女の周囲からは人がはけてしまうのであろう。
もっとも、彼女には人を寄せ付けないような、独特な雰囲気があったりするのだが。
桜は食事をのせた盆を、彼女の隣の席に置く。
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これをかけた相手は、黒髪ロングの女性だった。
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尾崎
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彼女の名前は本庄流羽(ほんじょうるう)という。
彼女こそシステムエンジニアといった雰囲気ではあるが、彼女は数少ない女性刑務官である。
ゆえに、制服はほぼ中嶋と同じだ。
唯一の違いは、下がタイトスカートになっているくらいか。
尾崎
尾崎は流羽の対面に座り、その隣に縁が座る。
桜は流羽の隣。普段は中嶋がここに加わったりするのだが、今日はいないらしい。
流羽
流羽
尾崎の手がぴたりと止まるが、しかし今は食事が最優先らしい。
改めてラーメンをすすり出す。
流羽
流羽
流羽
流羽
尾崎
尾崎
桜
尾崎
桜
少しばかりうるさかったのであろうか。
テーブルの端っこに座っていた男が立ち上がり、そして縁達のほうを睨みつけてきた。
桜
桜の一言は、さらに火に油を注いだのであった。