左か右か

ドン！！！

急に駆け出した大人を跳ねてしまった

しかし男はすぐに自分の言ったことに 後悔する。

「私が見てましたから」というのは 裏を返せば「この男が事故を目撃し た」ということにもなる そう、事故をみていたのは他でもない 容疑者とたった１人の男だったのだ

運転手は無言でタクシーにエンジンをかけ直し、走り出した

男はこのままだと確実に殺されると思った。事故を見てたのは、自分だけなのだ。

運転手も動揺していた、 選択していたのだろう

気づくと男は泣いていた

運転手も泣いていた

そして車は交差点にさしかかった。

ここを左に曲がれば さっきの事故の場所に戻れる。

右に行けば 人里離れた山奥へと一直線だ。

運転手は何かを心に決めたのか、 スピードを落とすことなくハンドルを ぐいっと切った

その決意の強さを代弁するかのように タイヤがキキっときしんだ。