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秋斗

うわああああ!!

瞬き

墓石は畦道に至っている

秋斗

く、来るな!!

瞬き

墓石は田の中に佇んでいる

秋斗

だ、ダメだ!!

秋斗

このままだと、目を離すたびに距離を詰められてしまう!!

距離が詰められたとき

あの墓石が目前に迫ったとき

一体

俺はどうなってしまうんだ?

秋斗

まさか……。

殺される

墓石に?

秋斗

わ、わからないけどこのままじゃ、確実に何かやばい事になる。

秋斗

一体、どうすれば…!!

俺の脳裏にある単語が光った

それは……

"じいちゃん"

秋斗

そうだ。そうだよ!!

秋斗

じ、じいちゃんなら、あの墓石をなんとかする方法を知ってるかもしれない。

秋斗

そうと決まれば……。

そうこうしている内に 既に、墓石は50メートル前ほどに 迫っていた

秋斗

じいちゃんに伝えないと!!

急いで寝室に向かった

じいちゃんのもとへ駆け寄ると

じいちゃんは暗い部屋のなか 一人、正座していた

何もない壁を見つめているが そこに何かを探し出すように

目だけは忙しなく動いていた

俺は、なりふり構わず じいちゃんの体を揺すった

秋斗

じいちゃん!じいちゃん!

じいちゃん

……ん、ん?秋斗か。

秋斗

どうしたんだよ。じいちゃん。

じいちゃん

いやぁな、ちょいと昔のことを思い出していたんだ。

じいちゃん

それがなぁ……。

秋斗

待って。今はそんな場合じゃないんだ!!

じいちゃん

どうしたんだ?
そんな顔して。

じいちゃんは 不思議そうに俺の顔を見つめた

そこに何か 差し迫った面相を察したのか

「熊でも出たか」 と、深刻そうに述べた

秋斗

く、くまなんかじゃないんだ。

秋斗

"墓"だよ!!墓が追いかけてきてるんだよ!!

じいちゃん

墓ぁ?

じいちゃん

墓って、あの人を弔うための墓か。

秋斗

そうだよ!!昔、お婆ちゃんも入った、あのお墓だよ!!

秋斗

……あっ。

じいちゃん

優里(ゆり)……。

そこで俺は後悔した

いくら危機的な状況でも 辛い事を思い出させてしまったことに 罪悪感を覚えたのだ

優里とは 俺のおばあちゃんだった人

小さい頃に亡くなってしまったから もう顔も朧げにしか覚えてない

それでも 優しい人だったと記憶している

そんな人のことを いま言う必要なんてない

秋斗

ご、ごめんね……。

じいちゃん

はっはっは。

秋斗

じいちゃん?

じいちゃん

そういうことだったのか。
優里。

秋斗

ど、どうしたの?

じいちゃん

秋斗。何かは知らないが、とにかく大変だったんだろう。

秋斗

そ、そうだ。

秋斗

大変"だった"じゃなくて、今もこうしているうちに、墓が近づいて……!!

じいちゃん

もう、大丈夫だよ。

秋斗

え?

じいちゃん

庭に出ようか。

それだけ言うと じいちゃんはさっさと行ってしまう

秋斗

だ、ダメだってば!!あの墓が、近づいてきてるんだから!!

止めるために 俺も庭へと駆け出した

庭に着くと じいちゃんが一人、空を見上げていた

どこにも墓石なんてない

秋斗

何でだ?

秋斗

さっきまで、あの墓が俺を追いかけてきていたのに!!

秋斗

もう、すぐそこまで迫ってきていたんだよ!!

じいちゃん

おばあちゃんがね、守ってくれたんだ。

秋斗

ばあちゃん……?

じいちゃん

その墓とやらも、別に悪いものではなかったのかもしれないな。

じいちゃん

何かを伝えようとしていただけなのかもしれない。

じいちゃん

でもね、お前さんが墓を攻撃して、何か余計な祟りをもらわないように、ばあさんが食い止めてくれたんだ。

秋斗

じゃあ、もうあの墓は……。

じいちゃん

今はいない。

じいちゃん

でも、それは供養でもしてやらなくちゃいけないかもしれない。

じいちゃん

だからまた明日、日が明けたらそこへ行ってみよう。

じいちゃんはうんと伸びをした

そして 空をまた仰いだ

何が何だかわからず 俺も空を見てみる

そこには

幾万もの星々が信号を送っていた

夜明け

秋斗

はぁ。はぁ。

じいちゃん

ここら辺かな。

秋斗

そ、うだ、ね。

じいちゃん

秋斗、体がなまってるな。都会暮らしだと、運動しなくなるからいかんな。

じいちゃん

若いうちは、もっと体を動かしておくべきだぞ。

秋斗

う、うん……そう、する。

顔を上げると 草木が開けていた

そこから じいちゃんの古い家は見える

そうだ、ここが……

じいちゃん

ここが、あの小さい墓石が初めに見えた場所であってるか?

秋斗

間違いないよ。ちょうど、家が見える位置だからさ。

初めて あの墓石を確認した

山の中の開けた地点に着いた

じいちゃんはショベルを持ち 辺りの地面を掘り始める

秋斗

本当に、あるのかなぁ。

じいちゃん

あるさ。きっとな。

じいちゃん

……ほら。

話している最中 ショベルは ゴツッ という 鈍い音を出した

何かに当たったのだ

秋斗

ま、まさか。

じいちゃん

……掘ってみるよ。

せっせと地面を掘り起こす

そして

そこに現れたものは……

秋斗

う、うわああああ!!!!

じいちゃん

……骨、だな。

じいちゃん

それも、人骨みたいだ。

秋斗

本物じゃん!!

そう 人間の白骨死体だった

じいちゃん

やっぱり、ここで大昔に死んでしまった人の念だったのかもしれないなぁ。

秋斗

念……。

じいちゃん

その念が、秋斗に伝わったんだろう。もしくは、伝えたかったのかもしれないな。

秋斗

俺に……伝えたかったのか。

昨日の夜

俺はすぐに じいちゃんに体験したことを伝えた

墓石が視界から消えるたびに 近づいてくること

見間違えでもなく 本当に山を降りてきていたこと

その恐ろしい体験を伝えると じいちゃんは頷いて

「そこに何かがあるに違いない」

そう断言した

俺がじいちゃん家に着いたとき 初めてあの墓石を発見した

そこで無念に死んだ霊が 俺に何かを伝えようとしたのだと

じいちゃんは推測した

そうと決まれば 日が明けてから山に入る事になり

その問題の地を調べることにしたのだ

正直

俺は日が明けるまで とてもじゃないが、眠ることは出来なかった

秋斗

……この人、何があったんだろう?

じいちゃん

わからない。

じいちゃん

行商人が知らぬ地の山に入って、遭難したか、飢え死にでもしたのか。

秋斗

でもここって、そんなに規模は大きくないんじゃ……。

じいちゃん

秋斗、山を舐めちゃいかん。標高自体が高くなくても、方向感覚を失って、山は人を飲み込むことだってあるんだ。

じいちゃん

ここは特に、草藪も多くて景色は変わらず、どこにいるのか見失いやすい。

じいちゃん

深く入ったら、わしも、帰って来られないかもしれない。

秋斗

そ、そうなんだ。

この開けた地点にくるまでも 俺は幾度もじいちゃんと はぐれそうになった

もし、はぐれていたら 俺もこの骸骨みたいになっていたのかもしれない

鳥肌が立った

秋斗

……………。

秋斗

……でも、これ、どうしたら?

じいちゃん

探して欲しかったんだろうな。

じいちゃん

今から家族の元へ返してやるのは無理だろうから、せめて、祠でも立ててやろう。

じいちゃん

そうしたら、成仏してくれるだろう。

秋斗

そう……だね。

じいちゃんと簡単に この白骨の魂を鎮めるためにも 祠を建てた

俺とじいちゃんは手を合わせ 成仏してくれることを願った

俺は開けた地点から じいちゃんの家を望んだ

そこにふと ばあちゃんの幻を見た

あの家から 微笑んでいてくれたような……

そんな気がした

秋斗

……あ、そう言えば。

じいちゃん

どうした?

秋斗

じいちゃん、昨日の夜、俺が呼びに行った時に何かあったの?

秋斗

昔のことを思い出してた……とか、言ってたけど。

じいちゃん

……ああ。とても、懐かしかったんだ。

「家に帰ろう」

じいちゃんは快活にそう言って 元気に山を降りだした

俺は慌ててその後を追い 最後に後ろを振り返った

"ありがとう"

そんな風に 祠から伝わったような気がした

俺は二度目の幻に

"どういたしまして"

別れの挨拶をした

Happy end

【選択肢で結末が変わる】ホラー短編集

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