生きている様で、死んでいる。
私の人生が、正にそれだった。
部屋全体に漂う異臭。 赤い血がやけに汚く見えた。
これから私が行うのは最後の工程。
後始末だ。
鴉
何のために謝ったのか。 果たして、それは誰に向けた謝罪なのか。
分からない。 自分自身でも分からなくなってくる。
目の前にあるのは、人の体。
お腹が少しだけ上下していることから、まだ生きているんだろう。
私はその心臓目掛けて、思いっきり包丁を振り下ろした。
振り下ろしたところから、鮮血が噴水の様に溢れてくる。
上下していたお腹も,徐々に動かなくなっていた。
最後に手首に指先を当て、脈を確認する。
鴉
鼠
どこか詰まらなさそうに、後ろに立っていた鼠がそう言う。
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
そう言われ、私は思わず黙ってしまった。
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
鴉
鼠は目を細め、美しく微笑む。
その微笑みが気味悪く感じた。
鼠
鼠
鼠
鴉
お前のせいだ。
そう、言い掛けて。口が止まった。
彼女は笑っている。何処まで見ても、やはり笑っている。
その細められた目に、どこか狂気を感じた。
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
三ヶ月前
・
目が覚めて、気付けばそこにいた。
頭が痛い。体も何故か重かった。
鴉
手に、冷たい感触を感じる。
不思議に思い、手首のところを見るとそこには鉄製の首輪が付けられてあった。
鴉
自然と冷や汗が流れていく。
それと同時に襲ってきたのは恐怖だった。
知らない場所 知らない空気 身に覚えのない鎖
全てが怖く、全てが恐ろしく感じられた。
鴉
鴉
そこで、私は違和感に気付く。
思い出せない。
今までの記憶を思い出せないのだ。
鴉
鴉
コツコツ…
奥の方から、ヒールの音が聞こえてくる。
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
叫び声をあげ、何とか助けてもらおうとする。
コツコツ
足音が近づき…そしてその姿が窓から差し込む光によって露わになった。
赤いヒール、黒いSラインのワンピース。
例えるなら…手慣れの娼婦のような風貌を醸し出しながら、その女性は私の元へ歩いてきた。
鴉
鼠
鴉
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
もう何が何だか分からなかった。
目の前に立っている女性は、ふわりと微笑んだ。
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鴉
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
不気味に笑いながら、鼠が差し出した右手には赤いスイッチがあった。
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鴉
ダラダラと汗が流れる。
この女は何と言った? 人を殺せ?
それはつまり、私に犯罪者となれと言ってる様なものじゃないか。
いくら金がくるとはいえ、これは承諾してもいいものなのか?
だが、今の私は小型爆弾を埋め込まれている…もし、逆らったりなんかしたら…
鴉
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鴉
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鴉
こんなこと、分かっている。
本当ならしたくない。こんなこと、やりたくもない。
だが、もしこれを断ったらなんかしたら…
私が死んでしまうんだ。
だから、知らない誰か…。
・
・
私の為に、死んでくれ。
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠が机に置いた封筒を受け取り、その封筒の中身を確認する。
中にはたくさんの書類が入っていた。
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
書類が多くて、中々決めにくい。
それを見兼ねた鼠が、私に話しかけた。
鼠
鼠
鴉
もう面倒になってきた私は、中の書類を適当に数枚取り、そしてそのまま勢いに任せ引っ張り出した。
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
それだけいい、鼠は颯爽とその場から去っていった。
自殺希望会。
私達は、今からその人を殺す。
そう考えると、胸の辺りがザワザワして落ち着かなかった。
二日後
女子高生
女子高生
女子高生
女子高生
女子高生
鼠
女子高生
女子高生
鼠
鼠
女子高生
鼠
女子高生
鼠
鼠
女子高生
女子高生
女子高生
「くまたん」が不思議そうに、私の方を見た。
鼠は少し困った様に笑いながらも、それに応える。
鼠
鼠
鴉
鴉
女子高生
女子高生
鼠
鼠
鼠
女子高生
鼠
鼠
鼠
女子高生
女子高生
鼠
女子高生
鼠
女子高生
容姿のせいでイジメられていたこと。
親が遊び呆けてばかりで、相手を全くしてくれず、育児放棄されてきたこと。
そして、パパ活をしてきたこと。
普通なら話しづらい話を、彼女は全て話してくれた。
女子高生
女子高生
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
女子高生
女子高生
涙を流しながら、そう感謝する彼女。
そんな彼女を、鼠は優しい目で見詰めていた。
鼠
鼠
女子高生
女子高生
鼠
鴉
女子高生
睡眠薬入りの水を、彼女は飲んだ。
鼠
女子高生
女子高生
女子高生
倒れる彼女の体を受け止め、静かに床に下ろした。
そして鞄のジッパーを開け、道具を取り出す。
後ろで、カメラの起動音が聞こえた。
鼠
鴉
鼠
鴉
鼠
鴉
今でも忘れられない光景と感覚。
鼠のアドバイスに従って、動脈を切った際に溢れた血液の噴水。
首の皮が切れ、バランスを失った頭部が傾いた。
血は止まらずに、止めなく溢れる。
私はもう、どうしたらいいのか分からなかった。
込み上げてくる吐き気と、胃液を抑える事で精一杯だったのだ。
気持ち悪い、全てが。
だらんと力無く傾く頭部 切り裂いたところから少し見える赤い肉 止めなく溢れ、床を汚していく鮮血 色を失い、青白くなる唇 焦点が合わない目玉 半開きになった口 下半身から漏れた排出物も
全てが気持ち悪かった。
胃液を必死に抑え、涙目になりながらも私は手を止めなかった。
止めたら、何をされるか分からなかったかだ。
鴉
あの日の光景。
そして、これから目の当たりにするであろう悪夢。
その日以来、私は中々眠れなくなった。
殺しを始めてからざっと四ヶ月が経ったある日。
私は突然、鼠に呼び出された。
鼠
鼠
鴉
鼠
要件とはなんだろう。
鼠は目を細め、どこかを見詰める。
まるで、遠い記憶を思い出しているかのようだった。
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鴉
鴉
私がそう問うと、鼠はゆったりと笑みを浮かべ、静かに首を振った。
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
殺風景な部屋だ。
必要な家具以外、何も置かれていない。
鼠は慣れた様子で、リビングの椅子に座った。
鼠
鼠にそう促され、私は向かい側の椅子に座る。
鴉
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
机に置かれたのは、今まで鼠が使ってきたカメラだった。
鴉
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
テレビに繋げ終えた鼠は、何故か私の方は歩いてきた。
そして、両手を広げると。
ーーぎゅっと私を抱きしめた。
鴉
鴉
鼠
鴉
強引に口の中に、錠剤を入られた。
吐き出そうとするが、指で無理やり奥に入れられる。
ごくん。
反射で錠剤を飲んでしまった。
鴉
鴉
鴉
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠の唇が、私の耳元に近付いた。
鼠
鼠
鼠
鴉
鴉
鼠
鼠
鼠
鼠
鼠
鴉
鼠が突然、刃物を取り出し、そして私に向かって振り下ろした。
鼠の腕を力任せに剥がし、なんとか刃物の軌道から逃れる。
刃物は右腕を擦り、机に突き刺さった。
鴉
鴉
鼠
妖艶に口角を上げると、また鼠は私に向かって刃物を振り回してくる。
鴉
その太刀筋は、生半可なものではい。
完全に私を殺しにかかっている。
鼠
鼠
鴉
鴉
不意に、鈍器が視界に映る。
一瞬迷ったが、決断は早かった。
鈍器を握り締め、そして…
鴉
ゴンッ!!
部屋に、鈍い音が鳴った。
鼠
鼠
鼠
バタン
鼠が床に倒れた。
鴉
鴉
ジジッ
鴉
音がしたのはテレビから。
テレビの画面を見てみると
そこにはカメラの録画が写されていた。
レン
レン
ベッドの上で、レンは小さく謝った。
ラナ
ラナ
レン
ラナ
ラナ
レン
レン
ラナ
ラナ
ラナ
レン
レン
レン
ラナ
ラナ
ラナ
レン
レン
ラナ
ラナ
ゴソゴソと、鞄から何かを取り出すレン。
レンが持ってきたのは一枚の紙だった。
レン
レン
ラナ
レン
レン
ラナ
紙を読み終わって、私はレンと目を合わせた。
ラナ
レン
レン
レン
レン
ラナ
ラナ
レン
レン
ラナ
レン
レン
ラナ
ラナ
ラナ
レン
ラナ
レン
彼が私に顔を近づける。
私も顔を近づけ、お互いのおでこを合わせた。
ラナ
ラナ
レン
ラナ
レン
ラナ
ラナ
ラナ
ラナ
ラナ
レン
レン
ラナ
ラナ
レン
ラナ
ラナ
レン
レン
ラナ
レン
ラナ
レン
レン
ラナ
ラナ
レン
レン
レン
ラナ
レン
彼は異常だ。
そんな彼を愛している私もまた、異常なのかもしれない。
だけど、私は彼を愛している。
例え、死ぬことになっても。
私は、彼を永遠に愛すのだ。
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
嘘だ
嘘だと言ってくれ
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
ーー狂ってる。
狂ってる、こんなの。
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
気持ち悪い。全部が気持ち悪い。
鴉
鴉
胃液が床に飛び散る。
鴉
フラッシュバックする悪夢。
鴉
繰り返される狂気。
鴉
鴉
鴉
彼女…ラナの顔を見て
そして、床に落とされた包丁を手にして
私は、笑った。
鴉
鴉
ぶしゅっ
・
ザーザー…
録画はまだ終わっていなかった。
画面に表示される、男の顔。
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
テレビ
画面の男は、恍惚と表情を浮かべこう言い放った。
テレビ
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ここまで読んでくれた人ありがと〜😇✨