二ツ木からのルール説明が終わり、なかば唐突に始まってしまったゲーム。
使用するのは一宮の所有する桃太郎、シンデレラ、金太郎、赤ずきんの4冊と、十日市が所有するジャックと豆の木の計5冊。
あるいは、他の絵本にはストーリーが2つ……という具合に、セットされているストーリーが異なる。
正確にはストーリーの数がそれぞれの絵本に振り分けられる。
ストーリーが4つの絵本、3つの絵本、2つの絵本、1つの絵本、そしてストーリーが設定されていない絵本。
二ツ木
まぁ、習うより慣れろってやつだから、やってみたほうが早いよ。
二ツ木
先攻と後攻をどう決めるのかは自由だから、そっちで決めてね。
一宮
(このゲーム、ルールから考えるに、まず先攻は避けておきたいところ)
一宮
(とにかくドボンを一発目に踏み抜かないようにするためにも、後攻で様子を見たい)
十日市
私、どっちでもいいよ。
十日市
最初はどうしても運の要素が強くなるんだろうけど、それは後攻だって同じことだから。
十日市
むしろ、先攻は選択肢が5つあるわけだし、簡単に5分の1を踏んだりはしないでしょう。
このゲームの肝となるは、ドボンとなる絵本が存在すること。
二ツ木が設定していないであろうストーリーを口頭にて答える。
もし、そこで二ツ木の設定したストーリーを踏んでしまった場合は、その時点で踏んだほうの負けとなる。
また、一切ストーリーが仕掛けられていない絵本を選択しても、ドボンとなり負けとなる。
二ツ木のストーリーを回避できた場合はポイントとなり、後攻の番となる。
このポイントは単純に仕掛けてあるストーリーの数と比例する。
一宮
じゃあ、先攻はそっちに譲ろう。
十日市
分かった。
十日市
じゃあ、私から行くよ。
十日市
うーん、桃太郎にしよう。
二ツ木
――ドボンはなし。
一宮
(この時点で桃太郎がドボンではないことが確定した)
一宮
(問題は、どれだけのストーリーが仕掛けられているかだ)
一宮
(多くのストーリーが仕掛けられた絵本は、切り抜けた際のポイントは大きいが、しかしストーリーを踏んでしまうリスクも高い)
一宮
(できる限り仕掛けられたストーリーが少ない絵本を選ぶほうが安全だけど、切り抜けても得られるポイントが少ないし、あまりそちらを意識しすぎると、ドボンを引いてしまう恐れもある)
一宮
(ゲーム自体は、ストーリーかドボンを踏んでしまうか、どちらかが5ポイントを先取するかで勝敗が決まる)
一宮
(勝ちに行きたいなら、ストーリーが多く選ばれているであろう絵本を選べばいい。その分、リスクは高くなるけど)
十日市
それじゃあ――【鬼退治をする】でどう?
一宮
(そこはかなり際どいところじゃないか……。今回は行動ではなく口頭での解答だから、それを体現する必要はない。すなわち、現実に鬼がいなくとも鬼退治は実現する。二ツ木がその辺りのストーリーを選ぶ可能性は充分にあるだろう)
二ツ木
セーフ。
二ツ木
十日市のほうにポイントが入る。
二ツ木
十日市2ポイント、一宮0ポイントで後攻へ。
一宮
(桃太郎のポイントは2ポイントか。ということは、仕掛けられていたストーリーは2つだったわけか)
二ツ木
それじゃ一宮、絵本を選んで。
二ツ木
桃太郎はすでに選ばれたから、選べるのはそれ以外の絵本ね。
一宮
(そう、このルールこそが、このゲーム最大の肝。一度選んだ絵本は選べなくなる。そして、このルールがある以上、先攻は損をすることがある)
一宮
(つまり、それは最後までドボンが残ってしまった場合、絵本の数の都合で、最後の1冊は絶対に先攻が選ぶことになってしまう)
一宮
(二ツ木が仕掛けた地雷原。地雷を踏まないよう、いかに駆け抜けることができるか)
一宮
(これがこのゲームの本質だ)
一宮
(なら、俺が次に選ぶのは――これだ)