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ぼくの手は しっかりと

詩乃ちゃんに握られていた

詩乃

わたし

詩乃

これまで付き合った人とか

詩乃

いなくて

詩乃

恋愛経験ないけど

詩乃

それでも、いいなら

アルラ

詩乃ちゃん…

アルラ

よかった

アルラ

今日から

アルラ

ぼくが詩乃ちゃんの彼氏だよ

詩乃ちゃんは 嬉しそうに

握った手を ゆさゆさと動かした

詩乃ちゃんと 肩を並べて通学路を歩く

詩乃ちゃんに 時間と道を合わせて

家に帰るのが

日常になっていた

アルラ

次のデートはどこに行こうか?

詩乃

どこかいいところある?

アルラ

あ!

アルラ

新浜グランドホテルの最上階に

アルラ

美味しいレストランがあるんだよ

アルラ

その場で焼いてくれるシュラスコが

アルラ

とっても美味しいんだよ

詩乃

えっ

詩乃

でもそれって

詩乃

めっちゃ高いんじゃない?

アルラ

お金のことなら心配しないで

アルラ

ぼくが持つから

詩乃

えー、いいの?

アルラ

もちろんだよ

詩乃

今日はありがとう

詩乃

誕生日祝ってもらえて

詩乃

嬉しいな…

詩乃

なんかすごいところに

詩乃

きたみたいだけど

詩乃

大丈夫なの?

アルラ

心配しないで

アルラ

ぼくからのほんの気持ちだよ

詩乃

うん…

詩乃

わ!

詩乃

このケーキ、すっごくおしゃれだね

詩乃

美味しそう…

アルラ

主役なんだから

アルラ

しっかり喜んでもらわないと

詩乃

うん

詩乃

詩乃

アルラさん、それって…

アルラ

プレゼントだよ

詩乃

詩乃

ありがとう…

詩乃

開けてもいい?

アルラ

もちろん

詩乃

…え

詩乃

腕時計…

アルラ

びっくりした?

詩乃

…ロレックス?

詩乃

これを、わたしに…

アルラ

詩乃ちゃんにぴったりの時計だと思ったんだ

詩乃

あ…

詩乃

あり、がと…

アルラ

詩乃ちゃん…

アルラ

ああっ

アルラ

詩乃、ちゃん…

アルラ

好きだよ

アルラ

大好きだよ…

ぼくは スマホに撮り溜めた

詩乃ちゃんの画像を見ながら

呼吸を荒げ

自慰行為に耽っていた

アルラ

ああ

アルラ

詩乃ちゃん…

彼女の画像を見ながら 行為をすると

普通にポルノを見るより 興奮の度合いが大きくなる

リアリティがあるからか

もしくは 背徳感に浸っているからか

ぼくは すぐに果ててしまう

アルラ

はあ…はあ…

アルラ

詩乃ちゃん…

付き合いはじめて 2ヶ月が経った頃だった

ぼくが奥手なのは 自分でもよくわかっているが

早く 詩乃ちゃんの裸体を

この目におさめたかった

アルラ

次のデートだ

アルラ

次のデートで

アルラ

はっきり伝えるんだ…

アルラ

詩乃ちゃんとしたいって…

アルラ

詩乃ちゃん

アルラ

今日は大事な話があるんだ

詩乃

そうなんだ…

詩乃

実はわたしも

詩乃

アルラさんに大事な話があるんだ

アルラ

詩乃ちゃんも?

アルラ

その話って

アルラ

ひょっとして

詩乃ちゃんと目があった 詩乃ちゃんは視線を逸らして

ぼそっとつぶやいた

詩乃

アルラさんと

詩乃

別れたい

アルラ

え?

アルラ

なにを言ってるんだ?

アルラ

ぼくと、ぼくと別れたい?

詩乃

…うん

詩乃

アルラさんといるとこう思うの

詩乃

なんだがすごく高いステージに立ってて

詩乃

追い詰められるみたいで

詩乃

だから

詩乃

もう終わりにしたいんだ

アルラ

そんな、でもぼくは

詩乃

短い間だったけど

詩乃

ありがとうございました

アルラ

詩乃ちゃん、待っ——

そう言うのを待たず

詩乃ちゃんは椅子を立って 一礼すると

足早にカフェから出ていった

アルラ

そんな…そんな…

アルラ

こんなことってありかよ…

それからぼくは 自室に引きこもるようになる

どうしても 詩乃ちゃんとの恋を

忘れることはできなかった

アルラ

詩乃ちゃん…

アルラ

詩乃ちゃん…

食事と排泄以外は 部屋に篭り

彼女の写真を 見続ける

彼女のSNSのアカウント情報を 入手し

彼女の「今」を 監視し続ける

そんな陰湿な日々が 長く続いた

アルラ

詩乃ちゃん

アルラ

もう高校生だね…

月日が経つにつれ

問題は改善するどころか

ますます悪い部分を 肥大させた

幾度も 季節が回転していく

アルラ

詩乃ちゃん

アルラ

5度目の春だね…

ぼくは

ひとりの少女を思い続ける 廃人になり変わっていた

アルラ

詩乃ちゃん…詩乃ちゃん…

世の中には女性が たくさんいるかもしれない

けれどぼくにとって 女性だと思えるのは

詩乃ちゃんただひとりだった

でももうどれだけ 彼女に尽くそうとしても

それは虚しい行為だと

知ってしまった

だが 彼女と別れて6年がたち

思いもよらない事実を 知ることになる

アルラ

詩乃ちゃん…

アルラ

見つけたよ…

詩乃ちゃんは 新浜市内の大学に入学し

ひとり暮らしを始めたらしい

アルラ

これはチャンスかもしれないな

アルラ

もしアパートに

アルラ

潜り込めば…

アルラ

いや

アルラ

ぼくが手を出す必要はないか…

ぼくは 小型カメラと 通信機器を手配した

それからのぼくは

これまでのぼくよりも

ずっと生き生きした状態で 計画を進めることができた

彼女のアパートに 監視カメラを置けば

すぐに見つけ出されるかもしれないし ぼくが罪を被ることになるだろう

ならばリスクの少ない方を 取らなければ

そして彼女が「能動的」に ぼくの欲望を叶えなければならない

だからぼくは 詩乃ちゃんの家ではなく

「彼氏」の方の寝室に 監視カメラを設置した

「彼氏」の名は

田澤トーマ

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