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───週末。
中村 翔貴
中村翔貴は
栄田鞠子を
笑顔で出迎えてくれた。
中村 翔貴
中村 翔貴
言われるまま
大人しく栄田は椅子に座って
部屋を見渡す。
栄田 鞠子
中村 翔貴
栄田 鞠子
中村特製のトマト鍋は、
文句の付けようが無いほど
美味しかった。
食べるものが美味しければ、
自然と酒も進む。
缶チューハイから
スパークリングワイン、
白ワインと飲み進めていく。
中村との会話も楽しかった。
栄田 鞠子
空になったグラスを見つめて、
そんなことを思った。
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
洗い物をしている中村は
顎で業務用冷凍庫を指した。
栄田は言われるまま、
特に何も考えずに冷凍庫を開けた。
美味しそうなチーズケーキは
一番上に鎮座しており、
それを手に取ると
栄田 鞠子
その下にあるものが目についた。
栄田 鞠子
それは保存袋に入った
人の
右手
だった。
栄田 鞠子
驚いて手に持っていた
チーズケーキを床に落とす。
中村 翔貴
栄田 鞠子
栄田は震える指で
冷凍庫の中をさす。
中村 翔貴
中村 翔貴
中村は表情を変えることなく
保存袋を手に取る。
そのあまりにも”普通”な装いに、
栄田は強い違和感を覚えた。
栄田 鞠子
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
ゆるやかに酔いが醒め、
脳裏を過るのは
黒く塗りつぶされた名前と
行方不明の文字。
そして、
星崎が言った
”人殺し”
の言葉。
栄田 鞠子
栄田 鞠子
震えた声で言う栄田に対して、
中村は笑みを浮かべる。
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
差し出された保存袋を
反射的に叩き落とす。
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
中村はゆっくりとナイフを手に取る。
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
栄田の顔から血の気が失せ、
ガタガタと震え始めた。
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
そう言って、
ナイフが振り下ろされた。
栄田 鞠子
咄嗟に身をねじって避けたが、
切っ先が二の腕を
ぱっくりと切り裂いた。
栄田 鞠子
栄田 鞠子
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村はわざとらしく首を傾げ、
中村 翔貴
と嘲笑を含んだ声で言った。
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
中村は歪んだ笑みを浮かべ、
栄田は顔を引きつらせる。
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田は逃げようとしたが、
自分の流した血で足が滑って
尻もちをつく。
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村は栄田に馬乗りになる。
栄田 鞠子
中村 翔貴
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
振り下ろされたナイフを
防ごうとした手のひらが
切り裂かれた。
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
栄田 鞠子
栄田 鞠子
栄田は唇を噛み締め、
思い切り中村の金的に
膝蹴りを食らわせた。
中村 翔貴
脳天を貫くような痛みに
彼はその場に崩れ落ち、
床の上で悶える。
中村 翔貴
その隙に逃げようとしたのだが、
中村 翔貴
苦し紛れに振るったナイフが
栄田のふくらはぎを
切り裂いた。
栄田 鞠子
しかし、栄田は足を止めることなく、
テーブルや椅子にぶつかりながら
部屋を飛び出した。
栄田 鞠子
切られた手も足も
焼けるように痛かった。
おまけに
お酒のせいだろうが、
真っ直ぐ歩くことさえ
ままならなかった。
栄田 鞠子
栄田 鞠子
それだけは避けたかった。
栄田 鞠子
そう思った栄田の目に入ったのは、
トイレだった。
栄田 鞠子
ふらつきながら、
栄田はひとまず
トイレに逃げ込んだのだった。
・
・
栄田 鞠子
見上げたトイレの小窓は
想像以上に小さく、
どう頑張っても
そこから外に出ることは
不可能に近かった。
───ドンッ!
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
───ドンッ!
栄田 鞠子
切られて血が出ている手足は痛いし、
恐怖から震えは止まらないし、
どうにかしなければと思っても
思考が纏まらない。
と、突然、
スマホが鳴り響いた。
栄田 鞠子
栄田 鞠子
震える手でポケットから
スマホを取り出すと、
画面には非表示とあった。
中村 翔貴
中村 翔貴
ドア越しに中村が怒鳴る。
栄田 鞠子
栄田は中村の言葉を無視して、
電話に出た。
電話越しの声
栄田 鞠子
栄田 鞠子
電話越しの声
その声には聞き覚えがあった。
栄田 鞠子
栄田 鞠子
栄田 鞠子
電話越しの声
電話越しの声
栄田 鞠子
栄田 鞠子
電話越しの声
電話越しの声
栄田 鞠子
焦る栄田に対して、
風都はのんびりと言った。
電話越しの声
電話越しの声
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
ドアの向こうで
中村が誰かと言い合っているようだった。
中村 翔貴
中村 翔貴
───ドンッ!
何かが強くドアにぶつかる音がした。
栄田 鞠子
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
中村 翔貴
バタバタと響く足音。
中村の声しか聞こえないので、
ドアの向こうで何が起こっているのか
栄田にはさっぱりわからなかった。
中村 翔貴
───ゴンッ!!
栄田 鞠子
一際大きな音がして
それっきり
ドアの向こうは静かになった。
栄田 鞠子
栄田 鞠子
栄田 鞠子
その静寂を崩すように、
パタパタと軽い足音が聞こえた。
風都の声
風都の声
ドアの向こうとスマホから同時に
同じ声が聞こえ、
星崎の声
星崎の呆れたような声も聞こえた。
風都の声
星崎の声
星崎の声
星崎の声
風都の声
栄田 鞠子
星崎の声
星崎の声
風都の声
風都の声
風都の声
トイレの扉を軽くノックされたので、
恐る恐るドアを開けると、
そこには
見覚えのある青年─風都が
出会ったときと同じ
人懐っこい笑みを浮かべて立っていた。
しかし、
その表情はすぐに深刻なものに変わる。
風都(かざと)
風都(かざと)
そう言われ手を差し伸べられた瞬間、
緊張の糸が切れたのか、
栄田は風都に抱き着き
声を上げて泣いた。
その足元に白目をむいて
ぐったりと倒れている中村の姿があった。
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