今、廊下にあるものとすれば 自分自身の靴音しかない。
他のものは全てが固まった石像のようにしか思えない。
それは恐らく昨日のことがあったから。
学校に来る時。スマイルとは そのことについてしか話さなかった。
ストーブをつけて温まりゆく教室を眺めながら扉を閉めた。
黄野
隣のクラスの教卓に座るのが見えた。
会議や必要な時以外 必ずと言っていいほどここにいる。 その理由は恐らく他の人と話したくないから。
どんだけコミュ障なんだよ
話しかけようかと迷ったが 彼はどうやら書き物をしている。
邪魔をする訳にもいかず そのまま職員室へと戻った。
今日1日 何も変わりはなかった。
ただ家に帰ったらすぐに行くところがある、というだけがただ変わっている事。
いつもは家で仕事やなんかしているものの。
家の鍵を開けて乱雑に放たれるバッグ。 中から財布とスマホのみを取りだして 再び家を出た。
その間約数十秒。
家に入る前と入ったあとで。 外は何も変わっていなかった。
時計の音が鳴り響く室内。
机。ベッド。パソコン。
静けさと切なさを感じるのは 彼自身が薄情者だからだろうか。
差し出されたお茶を1つ飲み 本題に入る。
黄野
紫稲
小さな液晶に映された 彼からの魂のないメッセージ
黄野
紫稲
お互い意見をぶつけては合成し スマホのメモに叩きつけるように。
どれくらいかは分からないが 時間が経った頃
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
思い立ちで 自身のスマートフォンを広げる。
「電話」 アプリを開き、名前順に並んだリストから彼の名前を探す。
黄野
紫稲
そこには彼の電話番号が 書かれていた。
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
なんて言えばいいのか、 何か言っていいのか分からずに ただ無言を貫く。
紫稲
最初に口を開いたのはスマイル。
黄野
決意を決めて彼の 電話番号を押した。
紫稲
スピーカーにして 机の上に置いた。
スマホを隔てて彼がいる。
番号を押す音が なり始めて終わった時。
少しの間があいた。
緊張
「おかけになった電話番号は現在 使われておりません。」
黄野
紫稲
黄野
少し安心した。
しかしどこかで悲しくなっている自分がいる。
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
手を伸ばして
紫稲
スマホに文字を打つ彼。
しばらくして
紫稲
黄野
同時に彼が乱雑にスマホを机に置く。
画面にはしっかりと 記されていた。
久しぶり。俺も黄野も明日空いてるんだが明日でもいいなら行こう。 ちなみに行くとしたら場所はどこになるんだ?引っ越したりしたなら尚更。 今お前は何してるのかも聞かせてくれ。
黄野
紫稲
黄野
紫稲
文章考えて電話しただけで 2時間かかったのか。
紫稲
黄野
紫稲
黄野
彼の言葉に甘えて ここに泊まる。
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
彼に促されて 浴室に向かう。
紫稲
黄野
紫稲
一問一答の形式で 素早く終えた。
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
湯気に包まれて 暖かいお湯に沈む。
一体白田からの連絡は なんだろうか
現実的にありえないはずなのに。
そんな考えても分からないことを 頭の中で巡らせる。
紫稲
黄野
紫稲
黄野
洗面台のドアが開く音。
風呂から上がった時。 部屋にはパスタの匂いが漂っていた。
黄野
紫稲
黄野
彼は俺よりも少しだけ小柄だ。
しかしそこまで変わらない。
紫稲
黄野
そう言って彼は 浴室へと向かった。
何か面白い番組はないかと 探っても大体は砂嵐だ。
一つだけ面白そうな番組を見つけて 手を止める。
頭の片隅に白田のことを思いつつも 番組に目をやる。
黄野
自身の笑いのツボに少しだけヒットし
笑いがこぼれた時
不思議な感覚に襲われる。
黄野
テレビから目を外し
スマホを見る。
スマホ…とは言っても
黄野
彼のスマホには スタ連でもされているかのように 連続で通知が来ている。
ソファの目の前の机。
液晶の明かりを見てみると
真っ黒なアイコンから 意味不明な文章が送られていた
黄野
繊細な傷跡を覗くように
pE?ET@#paw#c'!!
_/ k ec!!
#iewxtj(/G#?@w@mg
!!!!!!!
黄野
止まらない音と通知は心臓を早くする
胃が裏返るほどの緊張感がこびりついて離れない。
息が上がり 辺りが歪む。
後ずさり。
途端ガタッと音がする。
全部の細胞が動き回り 心臓が跳ねる
首を振れば独り暴れている棚。
中身は全くこぼれない違和感。
音が鳴り止まず 部屋には騒音と恐怖。
全ての家具は大人しく役割を果たせば 働きアリの法則
1つ。今までとは違う音が空気をふるわせる。
棚。ソファ。机。
ゆっくりと家具を流して。
黄野
バスタオルを肩にかけた彼が ドアを開けてたっていた。
同時に彼の方へ足を動かして。
紫稲
黄野
3文字の伝えは弱々しい声で。
紫稲
黄野
彼の体を掴んで 棚の方を見る。
黄野
もう、奴は仕事に戻っていた。
紛れ込んだ化け物のように思えた 棚が心地悪く
紫稲
黄野
解決できない不安と怒り
黄野
紫稲
彼がスマホを除けば
紫稲
躊躇も無く手を伸ばし 通知をタップした。
黄野
あまりの勇敢さに声を出す。
パスコードを入力し終わった時
紫稲
黄野
まじ!?じゃあ明日行こ!
場所はもちろん白鳥屋だろ! 俺の名前あるし?ww
夜の6時はいかが!? 晩飯として!
そんじゃ!よろぴくー!
黄野
紫稲
そのままスマホを閉じて。
紫稲
黄野
そういい寝室へと向かう彼に着いた。
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
彼は途端に床に座り込んだ。
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
紫稲
黄野
様々な言い合いの結果 シングルベッドで2人寝ることになった。
狭いは狭かったが 人がいる安心感には勝てなかった。 寝れるとは言えないが。
目を閉じて暗闇の世界。
隣には人が動いて存在しているのがわかる。
安心感に包まれようやく寝れよう、そんな時に起こったこと。
息がつまり苦しさに溺れる。
彼の手が離れないように自分の手を掴んだ。掴み返した時。
ようやく収まったもの。
紫稲
黄野
暗い中皿が割れるような音。 棚が動くような音は死にそうになる。
彼が上半身を起こしキッチンへ向かう。
黄野
電気をつけて 床を見れば
紫稲
固形物がバラバラに内蔵を散らしていた。
1枚1枚拾っていけば 小さい破片が現れる。
悲しいほどに面影が残っていた。
片付け終わった後。
紫稲
黄野
紫稲
黄野
そんな戯言を吐きながら ベッドへと戻る。
ベッドに戻ってももちろん寝れない。
ただ天井を見つめて何もせず 何も考えずいただけだった。
なぜこんなことが。
何故こんなことに。
明日はいよいよ約束の日。
6時。
その数字が重くのしかかった。
コメント
1件
この2人のなかよ感最高過ぎて好きですほんとに