伍代
おいおい、初っ端から考え込むわけ?
伍代
最初は互いに絞り込みをしなきゃいけないんだからよ、素直に次に順番を回せよ。
四ツ谷
姐さん……伍代に順番回してもいいか?
七星
(確かに、最初から仕掛けることにメリットはない。ここはもう少し情報を引き出したほうが得策だろう)
七星
(それに、さっき悩んでいたこと自体、間違った答えに導くためのブラフかもしれない)
七星
あぁ、伍代の順番にしてもらって構わない。
平静さを装いながらも、七星の頭の中はフル回転。
七星
(この勝負、先に仕掛けたとしても、間違ってしまったらアウト。下手に先走って自滅する可能性も充分にあり得る)
七星
(かといって、時間をかけすぎると、相手にこちらの登場人物を当てられてしまうかもしれない)
七星
(いかに我慢するところは我慢して、仕掛ける時に仕掛けるか。ゲームの流れを見る力が試されている)
伍代
じゃあ――。
伍代
その登場人物は人魚である。イエスかノーか。
七星
(いきなり突っ込んできたか。だが、これはある意味で想定内)
七星
イエスだ。
七星
(物語に全員登場してはいないものの、設定上では人魚姫は、6人姉妹の末っ子だ。つまり、ここを絞られたところで、まだ選択肢は6つ残っている)
七星
(むしろ、登場人物の数で言ってしまえば、人魚姫は人魚の人数のほうが多い)
七星
(絞り込ませないという意味で考えれば、この質問は比較的ダメージが小さい)
伍代
ふーん、即答ってことは、かなり自信があるな。
伍代
さてさてぇ、じゃあその自信はどこから来るのか。
伍代
人魚姫において、人魚姫を除く姉妹なんて、言ってしまえば単なるモブ。
伍代
だから、セットするのであれば、モブのほうにする。
伍代
モブってのは、物語の中にいるだけで特徴がない。
伍代
だから、そのモブを登場人物として当てるのは難しい。
伍代
――と、普通なら考えるよな。
伍代
でも、実のところ人魚姫が登場人物としてセットされていたとしたら?
伍代
人魚姫は物語のタイトルになっているくらい、作中で重要なポジションかつ主人公だ。
伍代
目立つ存在で真っ先に思いつくからこそ、逆に相手から当てられにくい存在とも言える。
伍代
つまり、あんたの答えが人魚姫ってことは、可能性として充分にあると思うぜ。
七星
ならば、それを答えればいい。
七星
好きなタイミングで答えてくれていいんだぞ。
七星
(この男、的確にこちらの考えを読んでいる。確かに、私が指定した登場人物は人魚姫だ。主役であるがゆえに、まずセットするのを避けてしまう人魚姫だからこそ、逆にいけると踏んだのだが)
七星
(どうやら、あちらもそれなりにやるみたいだな)
七星
(今は悟られぬように振るまうしかあるまい)
四ツ谷
それじゃ、また姐さんの番だな。
七星
あぁ……。
七星
(できることなら、ここで大きく絞り込みたいところ。ここでセットした登場人物の性別を問うのも悪くはない。もし、乙姫がセットされているのだとすれば、高確率で女性かと問えばイエスと返ってくるはず)
七星
(ただ、懸念すべき点もある。それは、伍代が挙げた登場人物のうち、村人と子どもだ。これらは物語上ではどちらとも描かれていない。村人が女性である可能性もゼロではないし、複数人いる子どもの中に女性が混じっていないとも言い切れない。だから、迂闊にその質問をしてしまうと、逆に混乱してしまうかもしれない)
七星
思ったよりも、難しいな……。
七星
(相手の登場人物を当てるのが難しいのであれば、あちらの自滅を誘うのみ)
七星
(今だからこそ仕掛けるしかない)