仕事帰りに車に乗り込むと、上着の内ポケットに入れていたスマホが震えた
取り出して画面を見てみると、彼女からのメッセージだった
開く為にタップしようとしたが
赤葦京治.
なんて考えて別に通知から見ようと画面に触れた時、タイミングよく彼女から写真が送られ、うっかりと彼女とのトーク画面を開いてしまった
秒でついたであろう既読のマークに引かれていないことを祈りつつ、諦めて送られてきたメッセージと写真を見る
駅前のイルミネーションの写真にもうこんな時期かと、窓に目を向けた
確かにこの間、彼女と出かけた際に見た店もクリスマス仕様になっていたことを思い出す
家に帰ろうと車を走らせていたが、目的地を駅近くに変えた
幸いにも今いる場所から駅はそこまで遠くない
行く旨を伝えれば、待ってるねという返事とうさぎのスタンプが送られてきた
送られてくる可愛らしいうさぎのスタンプを見る度に女の子だなと思う
駅近くに着き、車から降りた
イルミネーションの場所まで足早に向かうと、想像よりもイルミネーション付近には人が多くいたが、彼女の姿はすぐに見つけた
傍に行き、名前を呼びながら肩を叩くと頬と鼻を赤くした彼女が振り向く
俺の姿を捉えると"京治くん"と白い息を吐いた
赤葦京治.
赤葦京治.
赤葦京治.
短時間ではあるが寒空の下の中にいたのを物語る赤い頬が更に色を増していく
身長差故に自然と上目遣いになる彼女が可愛くて風で乱れた髪を直すように頭を撫で、そのまま冷えた頬に手を滑らせた
頬を撫でると指先が首筋を掠めたのか彼女はくすぐったそうに首を竦め、ピンク色のマフラーに顔を埋めた
そんな些細な仕草でも可愛い
先程まで鳴っていなかったクリスマスソングが聞こえた途端に彼女はそう言い、パッと目の前にあるツリーに目を向けた
そのすぐあとに言葉通りツリーのライトアップが始まった
イルミネーションと同様に設置されたツリーは5分ほどの曲に合わせて色が変わる仕組みらしい
周りを見るとツリー付近にはさらに人が集まっている
すでにすっかりとツリーに夢中になっていた彼女が不意に俺の方を見て笑い、胸がドキッと音を立てた
ライトアップに照らされた彼女の目はキラキラと輝いて綺麗だ
俺の目を真っ直ぐと見つめ、心の底から嬉しいと言わんばかりの彼女の表情に息を呑む
彼女から向けられる純粋な好意に未だに慣れず、かける言葉を選んでいた時、近くにいた子供が彼女にぶつかった
突然のとこにバランスを崩した彼女を抱き寄せるとぽすっと俺の胸元へ倒れ込む
彼女は腕の中にすっぽり収まってしまうほど小さくて、抱いた華奢な肩がより一層そのことを実感させた
先程の彼女からの言葉も相まって今俺の顔は寒さとは別の意味で赤いだろう
それを見せるわけにもいかないと、小動物みたいにもぞもぞ動く彼女が顔を上げる前に耳元に唇を寄せる
赤葦京治.
激しい鼓動は彼女に聞こえてしまっているかもしれない
抱き寄せていた手の力を緩めると、1歩だけ後ろに下がって彼女は目を伏せたまま眉を垂らしていた
俺の言動に困惑して照れている姿でさえ可愛いと思うんだから、相当彼女に溺れてしまっている
赤葦京治.
赤葦京治.
赤葦京治.
赤葦京治.
赤葦京治.
本来は家族や友人を優先してほしいから誘うつもりなんてなかったのに
小規模のイルミネーションであんな嬉しそうな顔をされたら、正直堪ったものじゃなかった
"デート"という言葉を出せば嬉しさと困惑が綯い交ぜになり眉を下げる彼女も可愛くて、つい意地悪をしたくなってしまう
指先を擦り合わせている赤くなった手に触れて、俺はつけていた手袋を外し、彼女の手につける
そして、手袋をつけていない方の手同士の指をするりと絡ませた
俺よりも小さな手がぴくりと動き、前髪の隙間から見えた額でもが赤くなっていた
俺の行動にキャパオーバーしているのが目に見えて分かる
顔を覗き込むように首を傾げた
赤葦京治.
赤葦京治.
家まで送ると声をかけて、とっくに曲が終わり、元の緑色に戻ったツリーの前から離れた
その際、繋いだ手をコートのポケットにしまえば、遠慮気味だった手を握り返してきた
緩んだ口元を見られないようにマフラーに顔を埋めた________
fin.
コメント
12件
ずんきちゃん…ちょっと前に通知みたらフォロー来ててビックリしますた…😌💗 これからも愛読させていただきます…😍
ずんきちゃん天才🥺💗 見てるこっちもドキドキした🤦♀️💗
〜〜ッ!あかぁしーーーーーー!!! 貴方目線とかてんっさい!!??