畳と押入れしかない殺風景な部屋で少年4人は浮かない顔をしていた。
浩二
特殊刑はどんな内容の事をするんだ?刑務所みたいに働かされるんだろ?
A
ああそうだ。まず、死んだ動物の処理だ。
A
時々、道端で車にひかれた猫を見かけるだろう?ああいうのを処分するんだ
浩二
そんな…気味の悪い仕事できるかよ
A
そんなのまだましだよ
浩二
は?
A
もう一つ最悪な仕事を任されている
浩二
なんだ最悪な仕事って?
A
死刑囚の性処理だ
浩二
性処理って…自慰行為を手伝うって事?
A
そうだ。
浩二
そうなの未成年にやらしていいのかよ?
A
未成年と言ってもいじめ禁止法は義務教育を終えた者に適応される。つまり、中学生や小学生には適用されない。
浩二
それじゃあ、いじめ禁止法の意味がないじゃん…きちんと小中のいじめも裁けよ
A
そこは心配いらない。小学生や中学生の頃に起こったいじめを裁けなくても高校生になれば裁ける。きちんといじめの証拠を残しておいて義務教育を終えるのと同時にその証拠を警察に提出すれば問題ないのさ。
浩二
にしてもよ、高校生に死刑囚の性処理させるって、この国の連中はいかれてる…
A
僕も君と同じ意見だ。でも、高校生になれば性の事など誰だって知っている。
A
死刑囚の性処理をしろなんて言われたら、そりゃいじめも減るだろうなぁ〜
浩二
お前、もうその仕事やったのか?
A
ああ。
浩二
死刑囚は異性なのか?
A
もちろん。
浩二
ならいいじゃん…
A
いや、最悪だ。異性といえども相手は死刑囚…君もやればわかる
浩二
でも、一般の人間は死刑囚に立ち会えないだろう?変じゃねーか?
A
俺達はもう一般の人間じゃない。罪人さ
浩二
だけどよ…いじめって言っても人を殺したわけじゃない。殺人犯より罰が重いっておかしいよ
A
去年総理大臣が変わった事は覚えてるか?
浩二
ああ。もちろん
A
奴が総理大臣に認定された大きな理由は「私はいじめ撲滅に一番力を注ぎます」っていう一言なんだ。
浩二
つまり、その言葉が本当だったって事を証明する為にいじめ禁止法を作ったんだな?
A
そういう事だ…
浩二
ふざけんな。俺達は総理大臣の道具じゃねー
浩二
もっと違うやり方あんだろ?
浩二
仕事ってこの2個だけか?
A
ああ。
浩二
何時から何時まで?
A
朝の8時から夕方5時までだ
浩二
一日に2種類の仕事をやるのか?
A
そうだ。二つの仕事を終えた後、夕飯をみんなで作る
浩二
朝ご飯も自炊って言ってたけど、一体何時起きなんだ?
A
5時おきだ
浩二
ふざけんな…
浩二
土日休みはあるのか?
A
日曜日だけは休みだ
浩二
はあ。しんどいな…普通こう言った特殊刑の説明は警官とか刑務官がやるだろ…
浩二
ん?そういえば刑務官らしい人間がいないなぁ…普通、こういう隔離環境には大勢の見張りがついているはずなんだけど、俺達の見張りとして存在するのは顔の怖い男一人だけだ。
浩二
脱走できるんじゃね?
A
脱走なんかできるはずがない。刑務官がいなくたってあの男がいれば無理だ。あの男こそこの地獄生活の一番の元凶なんだから…
浩二
そんなに怖いのか?確かにムショあがりとは言ってたな。
A
奴は殺人鬼だ
浩二
元殺人鬼だろ?今は更生したから大丈夫だって警官が言ってたぞ
A
お前は知らないだろうけど、この部屋の始めの状態は異常だった。
浩二
異常?
A
畳に壁、押入れ、色んな箇所に血がついていたんだ…
浩二
嘘だろ…
B
あの恐怖は今でも忘れられない。
浩二
なんだBもその時いたんだ。
A
僕とBは同じ日にここに来たから…
浩二
なるほど。そんでその血を見てお前らはどうしたんだ?
B
急いで、ここの小屋の主を呼んだ
A
奴は自分の事をボスと呼ばないときれる。
B
そうだったな。ボスを呼んできて、この部屋の血について訪ねた
A
そうしたらボスは言ったんだ…「お前らもこうならないように気をつけろ」って、笑いながら…
浩二
つまりボスはお前らがここに来る前に人を殺してどっかに死体を隠したって事か?
B
そうとしか考えられないだろう…
浩二
ああ…確かに。
浩二
俺は1カ月間
浩二
動物の死体を処理して
浩二
死刑囚の性処理をして
浩二
殺人鬼かもしれない男に怯えながらここで暮らすの…
A
そうだ…お前だけじゃない。俺らもだ
浩二
にしてもそこにいるCって奴はさっきから喋らないな…
浩二は部屋の隅で体育座りをしてふせているCという少年を指差した。
B
俺達はここに来て一回もCと喋った事がない。点呼の時とボスとの会話の時は口を開くのだが、それ以外は無言だ。
A
変わった奴だろ?
浩二
まあ確かに
特殊刑についての説明を聞いた浩二…あまりの凄惨な仕事内容に驚きを隠せない
新たに深まる、ボスの謎。本当にボスは刑務所を出た後、人を殺したのか?更生したという警官の話は嘘だったのか?