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コメント
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彰人
他社との販売会議のため 会社から出たところ外は 土砂降りだった。
今日の天気予報は曇りと 出ていたはずだ、だから 雨は降らないだろうと 思って傘を持たずに来たら こんな大事な時にこのザマだ。
彰人
エントランスの横に置いてある 傘立てから透明なビニール傘を 手に取り、先に出た上司に着いて いく形で傘を広げて歩いた。
上司
彰人
ピリッとした空気から 解放され一息つき、一人 廊下を歩いてエントランス まで着いたのだが。
彰人
彰人
彰人
なんと傘立てに置いていた社用の ビニール傘が忽然と姿を消した。 どうして、持ち手に会社名が マーカーで書かれているはず だから持ち逃げはありえない。
もしかして、オレたち以外にも 同社員がココに来ていたのだろうか。 だとしても勝手に持っていっていい訳 がない。オレはビショ濡れで戻れと。
彰人
彰人
そうするしか方法がない、 腹を括ってオレは雨の中 全力で駆けていった。
ビチャビチャと水音を激しく 鳴らしながら歩道を駆け抜け 一旦屋根のある場所へ避難し 休憩を取った。
彰人
彰人
会社は歩いて数十分の場所だ、 走れば尚更時間は縮まるが身体の 正面が雨で思い切り濡れている。 髪はしなだれこの一回の休憩まで にだいぶ濡れたようだ。
彰人
彰人
事務の人に言えばタオル くらい貰えるだろ、と そう思いながら残りの距離を 素早く走っていった。
次の休憩先はコンビニ、 身体の正面はビショ濡れで 髪から水が滴り落ちていた。 肌寒い季節から遠ざかろうと しているこの季節でまだ よかった。
彰人
彰人
あと一回切り抜ければもう 会社に着くのだが、シャツが 身体に密着するほど濡れている。 もはや戻ったところで涼しさを 越えた冷風に当てられたら 百パーセント風邪だ。
彰人
雨音に混じって愚痴を 零していると店内から 誰か出てきて声を掛けられた。
冬弥
彰人
彰人
冬弥
青柳さんが真っ白なタオルを オレに渡してきた、眉を下げて あからさまに心配している様子が 読み取れる程に表情筋が動いていた。
彼の優しさに甘えて髪や シャツの水分を拭き取って いった。
彰人
冬弥
彰人
冬弥
冬弥
彰人
彰人
オレの言葉を無視して 青柳さんはまた店内へ 戻った。慌ただしく動く 彼に珍しいものを見れた 気がすると口元を綻ばせた。
程なくして青柳さんが ビニール傘を抱えて出てきた。
冬弥
彰人
冬弥
彰人
彰人
冬弥
彰人
冬弥
冬弥
彰人
絶句した、たかが二回会ってる だけの、ただの店員と客なのに。 どうしてここまで優しくされるの だろう。出来たことと言えば甘い ものを買えたくらいで他は全くない と言うのに。
それでも、彼の優しさに甘えて しまうオレも大概だなとため息 をついた。あらぬ誤解をさせて しまったのかソレに対して悲し そうに傷付く様子を見て訂正した。
彰人
彰人
冬弥
彰人
冬弥
彰人
冬弥
彰人
彰人
冬弥
彰人
冬弥
いつかは自分の名前も教えよう とは思っていたが、まさかこんな に喜んでもらえるとは。表情が コロリと一変して思わず笑って しまった。
そろそろ戻らなければ何か 言われかねないと時計を見て 焦り受け取ったビニール傘を 開いて「じゃあ」と言葉を 紡いだ。
彰人
冬弥
ぺこりお辞儀をして雨粒の音が 鳴る中、一人会社へ戻った。
無事に会社にたどり着き 青柳と書かれたビニール傘 を傘立てに置いた、さすがに 他人のモノは取らないだろう。
雨の匂いで気付かなかったが、 タオルから柔軟剤の良い匂い がする。
彰人
案の定冷房は効いてる室内だが タオルで拭いた分寒さには堪えた。 それもこれも青柳さんのおかげだ。
お礼として新発売のスイーツ 全部買おうかなと考えながら 仕事に戻った。