あの出来事から何十年も経った
朝、起きた時にそらるさんに言われた言葉
『寂しくなったら、俺のこと思い出してね』
『頑張ってそっちに行くから』
確証はないけど、その言葉を信じてボクは彼を待ち続けた
前より沢山外に出て、貴方に似てる人がいないか少し遠出したりして
他の歌い手仲間の人たちにも協力してもらったりした
けど、彼は『まふまふの人生』では見つからなかった
でもボクは、前世の記憶を持ったまま 別の場所で、別の名前で生まれ変わった
それを繰り返して、繰り返して
今は『まふまふの人生』から4度目の人生で、彼を探し続けてる
朝の7:35
『まふまふの人生』では考えられない程早い時間に ボクは鞄を肩にかけて、家から出た
そう、今のボクは『真冬』という 17歳の高校2年生の人生を歩んでいる
しかも『まふまふの人生』からずっと記憶が引き継がれてるから、彼の特徴も 彼の顔も全部頭に焼き付いている
それにしても、この人生は不思議なことがかなり多いなぁ
何でかと言うと……
そう、この人生には 天月こと天ちゃんと、96猫こと96ちゃんが存在している
天ちゃんは『天宮翔太』として 96ちゃんは『黒希夏芽』として ボクと同じ高校生になっていた
ボクとは違って、歌い手の頃の人生の記憶とかは無いみたいだけど、初めて会った時すごく嬉しかった
学校に着くと、クラスメイトが 何かの噂話をしていた
どうやら歌い手だった時と、性格はほとんど変わらないようだ
昼休み、ボク達3人は 噂の転校生の先輩を見に、3年生の教室がある校舎に来ていた
何度も何度も生まれ変わってるからか、こうやって歌い手の仲間がいると すごく安心感があるなぁ
さすが天ちゃん、やっぱり諦めないとこが前と同じで、ボクも元気が出る
ちなみに96ちゃんが天ちゃんのことを前と同じく『つっきー』って呼んでるのは「何となく直感で!」らしい
とにかく、その先輩を探さないと…
中庭に来たはいいものの、中々見つからない
この高校の中庭は校舎にぐるっと囲まれてる中にあって、中庭の中央から校舎の中を見渡せるんだ
3回の廊下にある窓を覗いたボクの視線は、一点に集中していた
そこにいたのは、さっきみんなで探していた転校生の先輩らしき人
その人は黒いふわふわした髪で、透き通りそうなほど白くて綺麗な肌で
まるで……
気がついたらボクは廊下を走っていた
途中すれ違った先生の静止も聞かず、 ただ前を見つめて走り続けた
幾度となくそらるさんの姿を見てきたボクが、そらるさんを見間違えるわけがない
ということは……
屋上に繋がる階段を登り切る頃には、もうボクの体力は限界だった
歌い手の頃と大して変わらないことがあるとはいえ、こういうところは変わってて欲しかったな…
もし仮に、彼じゃなかったら ボクはまた探し続ける日々に戻る
でも、それでもいいと覚悟は出来てる
ガチャっ
後ろ姿だけでも誰なのかが分かる
きっとボクは、それほど貴方が好きなんだろう
その人はボクの方向を振り返ると、 目を見開いて驚いていた
ここでボクはとんでもないことに気づいた
何から話せばいいかをまったく考えて いなかったのだ
ボクが考え込んでいると、先輩は ふと呟いた
この世界では歌い手をやってないから、『まふまふ』は誰にも知られていないはず
なのにどうして……
そう言って、静かに微笑んだ貴方が 『あの頃』の想い出に重なる……
……あれ、なんか視界がぼやけて…
気がついたらボクは泣いていた
ボクの頬を、大粒の涙がいくつも流れていった
こんなに泣いたことは、今までのどこの人生にも無かった
ボクが泣いている目の前で、だんだん声が震えて行くそらるさん
その時、ボクの頭の中に 知らない記憶が流れてきた
綺麗に星が輝く夜に、貴方と列車に乗ったこと
貴方と、貴方が好きだと言った場所を歩いていったこと
彗星が尾を引く空の下で、2人でボロボロになって泣いたこと
何年経っても、貴方を探しに行くと 誓ったことを
どうして今まで忘れていたんだろう
忘れちゃいけないし、何より忘れたくなかったはずなのに
ボクは制服の袖で涙を拭って そらるさんの顔を見つめた
何度も何度も生まれ変わって、まったく知らない場所で貴方を探すのは 決して容易なことでは無かった
何十年、もしかしたら100年くらい 前世の記憶を持ったまま生まれて亡くなってを繰り返して
何度も諦めそうになった
でも、その辛いことも 今日この日のためにあったのかと思うと
あの時のそらるさんみたいに、ボクは そらるさんの涙を拭った
ボクがそういうと、そらるさんはまた 泣き出してしまった
もう、貴方が泣くから ボクもまた泣いちゃうじゃないですかぁ
それからボク達は、屋上で 一生分泣いた
次の授業が始まるチャイムも ボクの耳には聞こえなかった
だから、天ちゃんと96ちゃんが 探しにきてくれるまで、2人で ボロボロになって泣いた
そらるさんは、探しにきてくれた2人の姿を見て、しばらく固まっていた
ボク以上に驚いたその表情を見て、 久しぶりに心の底から笑ったのを 覚えている
これからは、今まで離れてた分 ちゃんと隣に居たいな
ちなみにボクがそらるさんの呼び方を 変えないのは、この世での名前も 『そらる』だから
空に流れるって書いて、「空流」
初めて聞いた時、そらるさんにぴったりな名前だなって思った
そして同時に、運命が本当にあるんだなと実感した
そう言ってこっちを振り向く貴方は、 朝日の所為なのかとても煌めいて見える
もしかしたら『まふまふの人生』で 言えなかったことを、この世界で 言えるかもしれない
ボクは、貴方のことが
「大好き」ってことを
『エピローグ まふまふ視点』 fin
明日の同じ時刻、srr視点を 投稿いたします
コメント
5件
エピローグありがとうございます! うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!😭😭 泣きそう😭4回目でやっと…やっと… ふたりが会うことが出来て良かった… まふくんすごく頑張って待ったんだろうな… めっちゃめっちゃ最高でした😭👏✨ 明日のそらるさん視点楽しみに待ってます✨
エピローグありがとうございます! よかった…4回目の人生で2人とも会えたんだ…!! 天ちゃんと96ちゃんも記憶はないけど一緒にいて、そらるさんとようやく再会できて…(´;ω;`)ブワッ 約束が果たせてよかった…!! めちゃくちゃ最高でした!! 明日のそらるさん視点も楽しみにしています!