一体どれくらいこの列車に乗っているだろう
1時間…いや もしかすると3時間はここに乗っているかもしれない
列車が線路を走っていく音しか聞こえない
少し孤独だけど、この後まふまふを 探しに行くのだと思えば、どうってことはない
そんなことを考えてさらに列車に 揺られていると、とある場所で 列車は動きを止めた
列車を降りると、そこには無限に続く野原と、中央に立つ一本の樹があった
今までの夜空のような景色とは違って、まるで昼のような青空が広がっていた
取り敢えず、俺は中央に立つ樹の元へ 行ってみることにした
何が原因とか、どこでどうやってとか そういうのがまったく思い出せない
気づいたら体が透明になっていて、暫くショックだったのをよく覚えている
そして気づいたら、あの場所にいて 目の前にはまふまふが寝ていた
今思えば、あいつは俺を自分の夢に呼んだのかもしれないな
そんなことを考えていると、樹の元に 辿り着いた
ピカッ!!
そんなことを考えて樹に触れると 突然眩しい光が樹から出てきた
あまりの眩しさに、俺は両手で 目を覆った
俺はそこで意識がぷっつんと切れてしまって……
気がついたら転生していた
俺は『ソラ』という別の人間として、別の人生を歩んでいた
一体何があってこんなことになったのかはわからない
でも確実に分かることは、俺は日本じゃない別の国で生まれ変わって、『そらるの人生』じゃない人生を歩んでいること
そして俺には『そらるの人生』の記憶がはっきり残ってることも
だから俺の頭の中には、『まふまふ』の 顔も、声も、何もかもがしっかりと 焼きついている
あの時2人で交わした約束通りに、もしかしたらまふまふも別の人生で 俺を探しているのかもしれない
それからしばらく経って、俺が 『ソラ』として生きることに慣れてきた頃
そう考える前に、俺の手は その本を開いていた
俺がめくったページに写っていたのは、とある1人の青年
白髪に赤色の目、そしてこの くしゃっと笑ったような表情……
『病気で亡くなっちゃったのよ』
俺がソラとして生き始めた頃には、もう何もかもが遅かったことを
俺はこの時思い知った
それから俺は、ソラの寿命が尽きるまで生きた
本当はあの時、まふまふの後を追って 死のうとも思った
でも、俺は弱かったから そんなことはできなかった
それに、『後を追う』なんて 俺があの時まふまふにして欲しく無かったことだ
だから多分、まふまふもそれを望まない
そう思ったから、俺はこの人生を 最期まで生き抜いた
そしてソラの人生が終わってから、また俺は別の世界で生まれ変わった
その時は、そらるの人生の記憶とソラの人生の記憶を持ったまま生まれ変われた
でも、その世界でもまふまふは見つからなくて
何度も何度も諦めようと思ったけど
どうしてもまふまふに会いたかったから
俺は諦めずに探し続けた
そして俺が『そらるの人生』を 終えてから、4度目の人生を迎えた
『そらるの人生』を終えてから 4度目の人生
現在、俺は『空流』という 18歳の高校3年生として生活している
そして今日は、色々あって引っ越した先の高校に初めて行く日だ
と、そんな事を考えながら 俺は新しく通う学校に向かった
少し飛んで昼休み
俺は何故か、教室の前に人だかりをつくってしまった
しかもほとんど女子だ……
このまま此処に居続けて、転校初日から教室の入り口を塞ぐわけにもいかない
俺は、昼休みになる前に案内された 屋上に早速入ることにした
本当は生徒会や教師以外、私用で使うことは無理らしいが…
すると下の階から、ものすごい声が聞こえて来た
屋上に出ると、快晴が広がっていた
初日からこんなんじゃ、卒業する頃にはどうなるのだろうか
そんなことを考えてしまったから、頭の中がグルグルしている
何度も何度も人生を繰り返して 沢山の失敗を重ねて来た
どの人生でも、まふまふは俺より先に 別の人生に行ってしまう
ガチャっ!!
突然ドアが開く音が聞こえたと思ったら 1人の男子が、息を切らしながら俺に話しかけた
俺が声の聞こえた方へ振り向いた時、俺は思わず驚いて固まってしまった
細身で、肌が透き通るみたいに白くて、それと同じくらい真っ白な髪の毛
何より、あの星空の下で見た時のように輝く赤い瞳
俺は無意識に、名前を呼んでいた
何年も見てきて、ここにくるまでの何十年も忘れたことのない顔を 俺が見間違えるわけがない
こいつは間違いなく、まふまふだ
その名前を呼ばれたのは、一体いつぶりだっただろうか
思わず笑みが溢れた俺とは反対に、 まふまふは涙を流していた
まさかそんなに泣くなんて思わなかったな
あの時も、たくさん泣いてたもんな
あぁ…もう、そんなに泣かないでよ
俺まで泣いちゃうじゃん……
段々と視界がぼやけていく
多分まふまふからみた俺は、 今情けなく泣いているんだろう
あの時と変わらないのは、 きっと俺も同じことだ
すると、まふまふは涙を拭って 俺に改めて向き合った
そっか、思い出したんだな
あの時の、夢の中のこと
そしてあの時と同じように、制服の袖で俺の涙を拭ってくれた
もうとっくに答えは分かりきってるけど、どうしても言葉で聞きたくて 俺はまふまふにそう聞いた
俺がまた泣き始めると、まふまふもまた泣いてしまった
そのあとは、2人で屋上にうずくまって 一生分泣いた
本当は昼休みの終わりに鳴るチャイムも聞こえてたけど、聞こえないふりをした
だから、まふまふの同級生が見つけに来てくれるまで、2人でボロボロになって泣いていた
でも、その探しに来てくれた同級生の姿を見て、俺はしばらく泣くのを忘れて 固まっていた
後からまふまふがしてくれた説明によると、その同級生はどうやら天月と96猫の生まれ変わりのようで
2人とも記憶はないものの、声や性格は何一つ変わっていないのだとか
固まった俺を見たまふまふは 腹を抱えて笑っていた
もうちょっと早く説明してくれなかったかなとか、思うことはまぁまぁあるけど
せっかく歌い手仲間4人が集まったんだ
今この時間を大切に過ごしていきたいな
あの屋上での出来事から、1ヶ月程経った
今日は4人で登校したいというまふの要望により、俺の家の前に集合になっていた
ちなみにまふまふを『まふ』と呼んでいるのは、今のまふまふの名前が『真冬』だから
まふまふもいいけど、『真冬』って名前もピッタリだ
それにしてもこの2人、まだ会って少しなのにすぐに仲良くなれたな
こういうところも、あの時と変わってない気がする
まふはどうやら考え事をしていたらしく、俺たちとは離れたところでぼーっとしていた
そう言って微笑んだまふは、何故かとても煌めいて見えた
もしかしたら、列車に乗ったときに まふに伝えられなかった言葉を、この世界なら言えるかもしれない
俺は、まふのことを
「好きだ」ってことを
『エピローグ そらる視点』 fin
1週間後辺り、この作品の裏話を投稿しようと思います
興味がある方は見ていってください
コメント
4件
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! そらるさん視点ありがとうございます! なるほど……そらるさんもまふくんを ずっとずっと……探して4回目でやっと 会えたんだね……😭 後追いしないでちゃんと人生の終わりまで 生きたのは偉すぎる……! 末永く幸せになりやがれください! 裏話楽しみに待ってます😊
そらるさん視点ありがとうございます! そらるさん、前の人生ではまふ君とすれ違っちゃってたんだ… でも、ちゃんと後追いせずに生き切ったのは偉すぎる…! それに4回目でようやく会えてよかった…!!( *´꒳` ) これから2人には、離れ離れだった分末永く一緒にいてほしい!!w おお、裏話!楽しみにしていますっ!!