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#ギャンブル
りんご
904
19
朽華 歌仙
78
部屋の隅で、巨大な優勝カップが橙色の光を反射していた。
台座には、今も記録が残っている。
第1競技優勝者。
生徒ナンバー18・立花瞳子。
大会記録、3分20秒。
だが、カップの中の少女は見えない。
最後の「んぎゃ!」という声さえ、場違いな歓声に塗り潰されていた。
新倉穂乃花
生島菜々美
金本爽香
和久井莉乃
代わって現れたのは、巨大な円形の足場。
中央には、天井まで伸びる橙色の旗竿。
先端で、“VICTORY”と刺繍された大旗が揺れている。
旗竿から5本のロープが伸び、足場の外周へ配置されていた。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
5人が円形の足場へ上がった。
外周の向こうに床はない。
橙色の光も届かない、底なしの暗闇が広がっている。
生島菜々美
新倉穂乃花
【SYSTEM】
5人が恐る恐る握る。
橙色の繊維は、濡れた蔓のように冷たかった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
橋村弥生
新倉穂乃花
金本爽香
和久井莉乃
【SYSTEM】
【SYSTEM】
足場が、ゆっくり回転を始めた。
最初は歩くより遅い。
5人は足を踏ん張り、ロープを握り続けた。
やがて速度が上がり、身体が外側へ引かれる。
生島菜々美
菜々美の足が滑った。
踏み直そうとしても、運動靴が床を捉えられない。
生島菜々美
指がロープから離れた。
生島菜々美
身体が暗闇へ放り出される。
新倉穂乃花
穴へ落ちる直前――
壁から橙色の網が飛び出した。
網は菜々美を受け止め、安全区域へ運ぶ。
生島菜々美
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
生島菜々美
ロープを離した者は死なない。
気づいた4人の表情が変わった。
新倉穂乃花
穂乃花は自ら手を離した。
外へ飛ばされ、網に受け止められて菜々美の隣へ運ばれる。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
金本爽香
爽香もロープを離す。
続いて弥生も手を離した。
2人も網に受け止められ、安全区域へ運ばれる。
足場に残ったのは、莉乃だけだった。
生島菜々美
和久井莉乃
莉乃は、ロープを強く握ったまま動かない。
回転はさらに速まり、身体が横向きになるほど遠心力がかかっていた。
新倉穂乃花
和久井莉乃
指から血が滲んでいた。
和久井莉乃
第3試練――
幼馴染みの由香利が死に、自分だけ生き残った。
第5試練――
全員から、人を殺しそうだと思われた。
第6試練――
歌が上手かったわけでもないのに、数字の差が志穂より小さくて助かった。
第7試練――
生き残りたい本音を認めただけだった。
和久井莉乃
和久井莉乃
ロープを、さらに強く引く。
和久井莉乃
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
それでもロープを手放さない。
和久井莉乃
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
和久井莉乃
喜びが消えた。
今さら手を離そうとしても、ロープは両手へ巻きつき、指へ食い込んでいる。
和久井莉乃
旗竿が高速回転を始める。
5本のロープが、莉乃の持つ1本へ集約された。
和久井莉乃
【SYSTEM】
旗が大きく翻り、橙色の布が莉乃へ絡みつく。
腕。
胴体。
首。
和久井莉乃
旗竿の巻き上げ装置が作動し、莉乃が天井へ引き上げられる。
和久井莉乃
生島菜々美
透明な壁が、4人の接近を阻んだ。
和久井莉乃
布が口元を覆い、くぐもった悲鳴が響く。
優勝旗は莉乃を包んだまま上昇した。
布の内側で、少女の輪郭が激しくもがく。
やがて――
動きが止まった。
旗が大きく広がる。
“VICTORY”の下に、新たな文字が刺繍されていた。
第2競技優勝者。
生徒ナンバー39・和久井莉乃。
不屈記録、2分39秒。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
生島菜々美
菜々美は、旗に消えた少女の顔を思い出そうとした。
幼馴染みを失って泣いた顔。
自分だけ生き残ったことを責め続けた顔。
最後に、自分の力で勝ちたいと願った顔。
だが、天井に残るのは2分39秒という記録だけだった。
金本爽香
新倉穂乃花
生島菜々美
3人は答えなかった。
名前と記録の結びつきが、すでに薄れ始めている。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
円形の足場が床下へ沈み、橙の間を横断する細い橋が現れた。
下では橙色の炎が波打っている。
橋の手前には1本のレバー。
残された4人の前には、小さな聖火が灯った。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
橋村弥生
残るのは4人――
菜々美。
穂乃花。
爽香。
弥生。
【SYSTEM】
弥生は隣の爽香を見た。
その視線には、すでに何かを決めた静けさがあった。
コメント
1件
わあ、今回も胸が締め付けられました…。莉乃さんが「自分の力で勝ちたい」って願った瞬間、本当に切なかったです。でも、その願いがシステムに利用されてしまう構造が、この作品の一番怖いところですよね。記録だけが残って、名前が薄れていくラストもゾッとしました。次回の「献身の栄光」、弥生さんの目がもう何かを決めてる感じがして、続きが気になりすぎます…!