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空を見上げていたてらんぺは、光線が伸びているのを見る

この地に残っている鏡が複数寄り集まった謎の建造物に月光が反射し、丘の一点を照らしているようだ

紅楽 てらんぺ

なんだあれ...ちょっと行ってみるか...

光線の先に向かえば、何万年も閉じたまま開くことが無かった、石造りの扉が開いていることに気付く

扉の内部は洞窟のようになっており、中心に意識を失っているはるるが倒れている

倒れているはるるは生きているようだ

はるるは、てらんぺの呼びかけで意識を取り戻す

紅楽 てらんぺ

あれ?人間かなぁ?

紅楽 てらんぺ

おーい、起きてー

四葉 はるる

ん...?

紅楽 てらんぺ

目が覚めた?

四葉 はるる

は...はい

紅楽 てらんぺ

人間と話すのは何万年ぶりだろうなぁー

四葉 はるる

え...?

紅楽 てらんぺ

どうしたの?

四葉 はるる

あ...いや何でもないです...

紅楽 てらんぺ

この世界がどんな世界かはわかってる?

四葉 はるる

まったく…

紅楽 てらんぺ

簡単に言うと…地球は滅びた

四葉 はるる

は…え?

紅楽 てらんぺ

君が知ってる綺麗な地球はもう無い

四葉 はるる

う…嘘ですよね?

紅楽 てらんぺ

嘘じゃないんだなー

四葉 はるる

俺が寝てる間に…地球が滅んだ…?

紅楽 てらんぺ

そういうこと

四葉 はるる

え…

紅楽 てらんぺ

びっくりする気持ちはわかるよ

四葉 はるる

紅楽 てらんぺ

でも切り替えて行かないと、ね?

四葉 はるる

わかりました…

少し落ち着いてから、はるるは自身の肉体の違和感に気付く

全身に痛みがなく、呼吸が苦しくないのだ。まるで病気が治ったかのように。

四葉 はるる

(あれ…痛みも無いし呼吸も苦しくない…何で…?)

紅楽 てらんぺ

大丈夫ー?ぼーっとしてたけど…?

四葉 はるる

あ…大丈夫です…

辺りを見渡すはるるはある物を見つける

洋服を纏ったまま骸骨になった死体を発見してしまう

四葉 はるる

うわっ…!?

紅楽 てらんぺ

骸骨じゃん

四葉 はるる

何でそんな冷静で…

紅楽 てらんぺ

んー何でだろうね

四葉 はるる

はぁ…

四葉 はるる

そういえば…名前は…?

紅楽 てらんぺ

あー俺の名前…なんだっけ…

紅楽 てらんぺ

まぁ…今思い付いた[てらんぺ]って呼んでくれたらいいや

四葉 はるる

わかりました…俺は…四葉はるるです

四葉 はるる

後…食べ物とか無いですか…?

紅楽 てらんぺ

食べ物…は無いなー

紅楽 てらんぺ

飲み物ならあるけど

四葉 はるる

飲み物でもいいので…

紅楽 てらんぺ

わかった、着いてきて

四葉 はるる

はい…!

飲み水を求めて、そこには黄色交じりの乳白色の泉がある

泉にはるるが近づくと、日頃てらんぺが訪れるときよりも、木々が一層ざわめく

いつもより大きく「めぇーめぇー」と鳴く木々は、のたうつ巨木のような胴体に、その太さに釣り合う山羊の足を持った異形だ

よく見ると枝ではなく、薄黒いねじれたロープのような触手という方が的確に見える

四葉 はるる

うわぁ…ちょっと見た目苦手かも…

紅楽 てらんぺ

まぁまぁ

紅楽 てらんぺ

この子は水を飲みに来ただけだからねー

巨木達は、てらんぺが制止する言動を取れば、たちまち大人しくなる

紅楽 てらんぺ

そうそう

四葉 はるる

それで…これを飲むんですか…?

四葉 はるる

えぇ…

泉の水は乳白色で、はるるが意識を失う直前に飲まされた液体に酷似している。飲めば、身体が焼けるように熱くなる

四葉 はるる

でも飲まないとだし…

紅楽 てらんぺ

大丈夫大丈夫ー!

四葉 はるる

じゃあ…(ゴクッ)

四葉 はるる

うっ…はぁっ…はぁっ…

四葉 はるる

ひーっ…ひーっ…

紅楽 てらんぺ

だ…大丈夫?

四葉 はるる

大…丈…夫…です…

紅楽 てらんぺ

無理しないでいいからね?

四葉 はるる

本当に大丈夫です…

紅楽 てらんぺ

ま…まぁ…そろそろ移動しよっか

四葉 はるる

はい…

はるる達が移動をしようとすれば、巨木の一匹が触肢を差し出す

紅楽 てらんぺ

あれ?もしかして連れて行ってくれるの?

四葉 はるる

え…?

紅楽 てらんぺ

この子達いい子だから、しっかり連れて行ってくれるよ!

四葉 はるる

そ…そうなんですか…?

紅楽 てらんぺ

そうだよー

紅楽 てらんぺ

それじゃあ乗らせてもらおうかな!

四葉 はるる

じゃあ…お願いします…

それにつかまると、巨木ははるる達を軽々と持ち上げ、自身の背に乗せる

紅楽 てらんぺ

よいしょっと…

四葉 はるる

うわ…凄い…

紅楽 てらんぺ

ハイパーボリア大陸までよろしくね!

はるる達が向かう先を指示すれば、巨木は嬉しそうに「めぇー」と一鳴きすると、山羊のような足を大股に広げ歩み出す

紅楽 てらんぺ

やっぱり早いねー

四葉 はるる

変な感覚だな…

このスピードであれば、移動時間を大幅に短縮できそうだ

それでも、はるる達は何日も木の上で過ごすことになる

紅楽 てらんぺ

何日間かは木の上だけど行ける?

四葉 はるる

多分…

はるるにとって、地球が滅んだのは昨日のことのようだ

移動中、当時と現在を比較することができる

昼であれば、はるるは、日中の気温が低いことに違和感を感じるだろう、違和感の正体は太陽の明度が少し低いことだ

四葉 はるる

あの…

紅楽 てらんぺ

ん?どうしたの?

四葉 はるる

太陽、少し暗くないですか?

紅楽 てらんぺ

そうかな?何万年も前の太陽なんて覚えてないや

四葉 はるる

えぇ…

また、夜に天を見上げても、当時の星空を見ることはできない

四葉 はるる

あの…

紅楽 てらんぺ

ん?

四葉 はるる

星は…?

紅楽 てらんぺ

星?あぁ…なんかあったね星って、もうとっくの前に無くなってる気がするよ

四葉 はるる

てかあれって…!?

紅楽 てらんぺ

どれのこと?

四葉 はるる

あれ土星じゃ…?

紅楽 てらんぺ

え?あぁそうだよ?

四葉 はるる

なんでそんな冷静で…

紅楽 てらんぺ

んー慣れちゃったからかな?

四葉 はるる

なるほど…?

四葉 はるる

(あれ…なんか月も遠くない…?)

四葉 はるる

(気のせいかな…)

次回へ続く…

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