家の名前だけで、微笑む人が嫌いだった
うっすら浮かんだ笑顔には
どろどろの、何かが隠れてる
だから、友達も許嫁も全部決められた
そんな俺に情けをかけたつもりなのか
結婚相手だけは、この中から好きな方を選んでいいと言われた
みんな、カメラを向けられているから
ぎこちない、微笑みが
…なんだか、薄気味悪くて
反射的に、微笑んでない人を選んだ
この人も、大人になれば媚びを売るのだ
そんなこと思うと、もう誰とも話したくない気分になった
そして、初めて会った時
君は確かにこう言った
「私は私で好きなことをします」
「あなたも好きなことをしてください」
「互いに互いを縛るのは辞めましょう」
「所詮、親が決めた結婚ですから」
酷く、冷たい言葉だった
でも、作られた暖かさに浸かっていた俺にとって
それは、心地いいほど冷たかった
だから、好きなことをすることにした
貴女を、惚れさせる
他の誰にも渡さない
だから、俺を捨てないで
捨てられないように
存在価値を示すために
そして、ただ甘やかしたいだけで
今日も、朝ご飯の支度をするのだ