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投稿ありがとうございます! 学校での国語より主さんの物語の方が国語の勉強になりそうです! atmz尊過ぎます😭 両思いなのに自分の気持ちを押し〇してパーティに参加するなんて切なすぎます🥹色々と泣きそうです🥲けど、切ない物語がめちゃくちゃ好みなので義母と義姉に少し感謝です…(?)主さんの物語好きすぎて本屋の小説とか、読めなくなりそうです💞続きも楽しみですっ!!
更新ありがとうほんとに!!あっきぃくん王子様だったのか!あきぷりはな…立場なんて関係なければもっとはやくくっつくのになぁ…でも王様いい人過ぎない!?頑張って欲しいあきぷり!!ていうかあとまぜですよ!泣かせに来てるよ!!!もう大泣き😭切なすぎる最初で最後のキスとか服作りとか好きだったとかどれも二度と会えないからみたいな気持ちでいる悲しいシーンだけどロマンチックでちょっと好きなんよなぁぁぁぁ
今回も最高だよぉぉぉぉ!!! akの元気がないのが辛い… 僕って…誰だよっ!?((殴 あと、atmz尊すぎないか… 普通に泣いてたw 身分とか、家柄で結婚 出来ないなんて… 辛すぎ… 次も楽しみにしてる!!
主。
主。
主。
主。
物語の“王子様”って、一体どんな存在なの?
そんな答えのない問いを何度も自分の中でぐるぐると回しながら、 オレは大好きなあの子の明るい笑顔を思い浮かべる
君たちはさ、王子様って何でも持ってる恵まれた人だと思ってるでしょ
そりゃ食事にも住む場所にも着るものにも困らないし、 お金だってやろうと思えば使い放題、確かに恵まれているのかもしれない
でもその分周りから求められるものが大きくて、 将来この国の王になるっていう責任を負いながら全ての行動を 慎重に起こさなければ国をひっくり返してしまうかもしれない
物語の王子様みたいに唐突に恋に落ちた誰かとすぐに結ばれるなんて そんな無責任で軽率な行動、国の勢力分布を傾けてしまいかねないから できるわけがないし、結婚相手も慎重に選ばなきゃいけない
ずーっとずーっと恋焦がれている若葉色の瞳を持つあの子にだって、 アプローチしてその心を手に入れたくてもできないんだ
せっかく王子様に生まれたんだから、物語の王子様みたいに 都合よく恋に溺れて相手と結婚することができればいいのになあ
もしそれができたなら、オレは迷わず彼にアタックするのに
そんな理想論を考えたところでやっぱりどうにもならないから、 オレはため息をつきながら王城の自室から城下町を見ることしかできなかった
そういえば、あの日オレとあの子に服を作ってくれるって笑っていた 魔法使いのような男の子は今何をしてるんだろう
そんなことPrーのすけに聞くなんてできないし、 知ったところで何なの、って感じではあるんだけどね、w
でもさ、たまにあの魔法使いの男の子のことをいいなあって思っちゃうんだ
だって、王子様と子爵家次男なんて身分が違いすぎて そう簡単には結婚できないけど、上級市民と子爵家次男なら 多少の身分の差はあれど結婚しても許されるでしょ?
しかも、魔法使いだから物語の中のストーリーに縛られないで 自由に恋をして、愛する人と生きていくことができる
“物語であまり語られないこと”がかえって自由で幸せだって、 多くの人が気付けないで王子様に憧れるんだ
“王子様”だって、物語通りじゃない自由な恋がしたいのに。
そんなことを一人で考えて呆れたような笑みを自分に対して浮かべていたら、 Ak王子、と誰かがオレを呼ぶ声がしたので、オレはそれに返事をする
Ak
召使
召使
召使
Ak
Ak
Ak
そう相手を心地いい気分にさせる挨拶を口にして、にこりと笑顔を浮かべる
召使
召使
召使
改めまして、オレの名前はAk
賢王である父上が治めるこの美しい王国の王太子で、 ほとんどの国民からは才色兼備で心優しい王子だと呼ばれている
Ak
召使
召使
召使
Ak
Ak
召使
召使
召使
Ak
彼らが退出したのを確認して、オレはハーッと息をついて ぽすんとベッドに倒れ込んだ
Ak
Ak
Ak
昔は一人称が「オレ」で好きなように話していたものだが、 外聞を気にするようになった10歳あたりから自分の口調を偽るようになった
とはいえそればっかりも疲れるので、 誰もいない時やPrーのすけの前では自分の本来の口調を話して 自分の人格と性格を見失わないようにしている
いっそ自分を壊して人格や性格を見失ってしまった方が 楽だったのであろうが、オレはいつかPrーのすけと出会った時に 気づいてもらえるかもしれないと思いたくて自分の人格を捨てられなかった
そんな中途半端な状態が身に染み付いてしまい、今に至っている
Ak
Ak
オレは王子だ、大抵のことは好き勝手振る舞うことができる
権力も強いから国王陛下と王妃殿下以外にオレに逆らえる人はいないし、 Prーのすけの家に婚約を申し込めば相手は喜んでその縁談を了承するだろう
でも王子であるオレが彼にプロポーズすることで 彼自身が他の貴族から反感や恨みを買いかねないし、 “王子から提案された婚約“で彼を縛ってしまうのは嫌だった
Ak
Ak
Ak
Ak
オレがもっと自己中で傲慢な人間だったら 彼を手に入れることができたのかもしれないが、あいにくオレはそうじゃない
この性格は王として国に君臨するなら必要なものであるが、 恋愛においては本当に役立たずであった
Ak
Ak
やっぱり人である以上感情に左右されるのは当たり前のことで、 Prーのすけが大好きで欲しいからたまにこの性格を恨んでしまう
Ak
未来の王としての責務を放り投げて恋に溺れられたらと思うけど、 そんなことしたって誰も得をしないし自分の立場も悪化する
オレは大好きな彼を諦めなければいけない、 そんなどうしようもない事実にズキズキと胸が痛くなった
召使
Ak
Ak
召使
Ak
オレはとっくのとうに慣れた偽りの人格で召使にそう返事をした後、 ため息をひとつついてから着替えて父上の待つ玉座の間に向かった
丁寧な所作で玉座の間の扉を開けたオレは、 玉座に座る父上の前に跪いて形式通りの挨拶をする
Ak
Ak
王様(いい人)
Ak
父上はオレの顔を見てにこりと笑うと、人払いをしてオレに話しかけた
王様(いい人)
Ak
王様(いい人)
王様(いい人)
Ak
王様(いい人)
来週の満月の夜の舞踏会で、結婚相手を探してもらう。
Ak
Ak
王様(いい人)
王様(いい人)
王様(いい人)
Ak
王様(いい人)
王様(いい人)
王様(いい人)
その会場で、お前が一番美しいと思う者に求婚しなさい。
Ak
王様(いい人)
王様(いい人)
父上が提示した基準はよくわからないが、 とりあえず我が父王はオレが美しいと思う者に求婚してほしいらしい
結婚なんてしたくない、というわがままはもう通じないということは オレにも十分わかっていたので、オレは父上に了承の返事をした
Ak
王様(いい人)
Ak
オレは玉座に座る賢き王にぺこりとお辞儀をし、玉座の前を後にした
王様(いい人)
王様(いい人)
王様(いい人)
Ak
Ak
父上と自分の認識に盛大なすれ違いがあることに気づかないまま、 オレは好きでもない誰かに求婚する覚悟を決めた
At
先ほど王都に買い出しに出かけたら、 来週の満月の夜に王子の婚約者を選ぶ舞踏会が開かれるという噂を聞いた
今日店に来てくれたTgによると、Mzはその舞踏会に参加するらしい
At
Mzも年頃の青年だ、おそらく舞踏会で出会った誰かと恋に落ちて、 その者の心を手に入れようと一生懸命になるのだろう
今はどうやらよそ見をして俺に心を奪われているようだが、 きっとそんなの恋愛経験がない無垢な子供のような彼のまだ視野の狭い瞳には 慣れない外の世界で一時的に寄りかかった花しか映り込んでいないだけだ
まるで、雛鳥の刷り込みのように。
At
At
At
だから、我慢した。
舞踏会の夜が終わったら、彼の記憶から俺は少しずつ消えていく
誰かにとって都合のいい“魔法使い”は、 最愛の人に思い出してもらえなくなってしまう
At
本当なら舞踏会なんていかないでほしい、ずっと俺の目の届く範囲で、 俺の隣で、あの可愛らしい笑顔を見せてほしい
でも、それが叶わないことだってわかってる
At
シンデレラが恋をするのは、魔法使いじゃなくて王子様だ
Mzが恋をするのは、俺じゃなくてまだ見ぬ誰かだ
だけど、魔法使いが恋をしたのは他でもないシンデレラだった
俺が恋をしたのは、他でもないMzだった
そんなのずっと前からわかりきっているのに、やっぱり心が苦しくて、 俺は思わず誰もいない部屋で自分の胸を押さえてしまった
At
あんなに俺が手をかけて美容の指導をしたんだ
あんなに俺が手をかけて綺麗な仕草を教えたんだ
あんなに俺が手をかけて好きな人とのデートのポイントを教えたんだ
あんなに俺が手をかけて服の選び方を教えたんだ
……あんなに俺が手をかけて世界で一番綺麗な青年にしたんだ。
At
落とせない相手なんて、存在しない。
自分が手間暇かけてMzをそう成長させたのに、 その事実が何よりも苦しくて、俺は泣いている誰かの嗚咽のように呟く
At
好き“だった”なんて大嘘だ、間違いなく俺はまだMzが好き
でも、自分の本当の気持ちに目を向けたところで、 余計に苦しくなってしまうだけだから。
At
At
At
これから先当分消えないであろう自分の気持ちを消すための 魔法の言葉を唱えた俺は、すぅっと息を吸い込んで目の前の布に向き合った
At
机の上にあるのは、あの日ぐちゃぐちゃにしたはずのデザイン画
At
俺が買い物袋から取り出したのは、あの日ズタズタに引き裂いたはずの布
At
クローゼットの奥から引き摺り出したのは、 あの日悲しみと共に封印したはずの電動ミシン
At
棚からそっと引き出したのは、 あの日目を背けて遠ざけてしまった裁ち鋏やチャコペンが入った裁縫箱
At
机の引き出しから取り出したのは、 あの日小箱に詰め込んで視界の外に押しやってしまった針と糸
メモ帳に記したMzのサイズを確認しながら、 布にチャコペンで線を引いて裁ち鋏で正確に布を裁断する
久しぶりに布に鋏を入れた俺を歓迎するかのように、 使い慣れた裁ち鋏の切れ味は抜群だった
At
数年ぶりの服作りで高揚する自分と共に、 あの日のトラウマが蘇って息が詰まりそうになる自分がいる
At
At
あの日の記憶から自分を守ろうとして拒絶反応が出て 手が止まりそうになる体に抗って、俺は一心不乱に布を切っていく
At
そうつぶやいて俺がベッドの下から取り出したのは、 Mzが父親からもらった子供用スーツのことを話してくれた数日後に Tgが俺に渡してくれた“子供用スーツだったもの”
「Atくんなら、これをMzたんに最高の形で届けてくれる気がする。」
そう笑って俺にMzの大切な布を手渡したあざとくてかわいい 俺の旧友の恋人は、Mzが家族との思い出を引き裂かれたあの日、 義母と義姉に捨てられる前にこっそり布を回収していたらしい
At
そんな独り言をつぶやきながら服作りに集中した俺は、 いつの間にかトラウマの恐怖に打ち勝って愛する彼のために ひたすら舞踏会用の衣装を作り続けた
魔法使いからシンデレラへの、想いを込めた精一杯の愛の告白。
At
At
恋の魔法は、魔法使いのトラウマすらも押しのけて 愛する人のために俺を突き動かしてしまう
想いが届かなくても、この恋が叶わなくても、 大好きなあいつに精一杯の美しくなる魔法をかけたいから。
いつの間にか泣き止んだ俺は、まだ少し目尻に残った涙を拭って あいつのためにと自分の手を動かし続けた
ついにやってきてしまった舞踏会当日、 オレは綺麗になる魔法をかけてもらうために見慣れたサロンにやってきた
Mz
At
オレが恋する魔法使いは来店したオレを見て嬉しそうに笑うと、 いつかと同じようにぐるりと椅子を回してオレに着席を促す
At
At
At
Mz
その後Atはいつも以上に真剣な顔でオレの髪の毛とメイクを仕上げ、 鏡の中のオレは今まで見たこともないくらい綺麗になる
Mz
Atの腕でいつもの面影を残したまんま驚くほど綺麗になったオレは、 間違いなく魔法使いの魔法にかけられた人間だった
Mz
At
At
そうオレを褒めるAtの声は今までのどんな声よりも甘くて、 このまま彼が見せてくれる幸せな世界に 溺れてしまうことができたらと思うが、現実はそうはいかない
オレは、義母と義姉が好き勝手使う金のために好きでもないやつに Atのために磨いたこの美貌を捧げなければいけないのだ
Mz
At
表面上は狡猾な美男と彼に恋愛のいろはを教えた師匠の会話
でも、オレにとっては幸せな恋を自分で引き裂いて ゴミ箱に捨てるための覚悟のこもった言葉だ
Mz
Mz
Mz
一人で絶望と戦ってるオレを見て何を思ったのか、 少し辛そうな顔をしたAtはオレにこんなことを言ってきた
At
Mz
Atの誘導に促されてオレが夜会の日と同じ更衣室を開けて 自分の目に飛び込んできたものにオレは目を見開く
Mz
その更衣室の中心に置かれていたのは、オレのために作られたかのような、 オレに着てもらうためにこの世に生まれてきたかのような、 そんなオレの美貌を何よりも引き立たせるスーツだった
そしてそのスーツは、あの日破かれた想い出のスーツが 今のオレのサイズに合わせて生まれ変わったかのように輝いている
Mz
オレが呆然としてスーツを撫でながらそれだけこぼすと、 Atがふっと笑ってオレが聞こうとしたことを教えてくれた
At
At
At
Mz
彼がオレのために自分のトラウマを超えてくれたのが嬉しくて、 メイクが完成したはずの瞳から涙が出そうになってしまう
それと同時に、あの日閉じ込めたはずの想いが飛び出しそうになってしまった
At
Atはそう言いながら手早くオレにそのスーツを着せて、満足げに笑う
鏡の中に映り込んだオレは、Atの魔法で誰よりも綺麗になった 物語の主人公のような美貌を持つ青年と化していた
Mz
思わずそう漏らしたオレに、Atは続ける
At
Mz
オレがどうしたのだろうと彼の方を振り向くと、 彼はその瞳を溜め込んできたものを全て集めたかのように 甘く甘く溶かして、オレの美貌を賞賛した
今のお前、世界で一番綺麗だよ。
Mz
義母と義姉に舞踏会のことを話されたあの日、 オレは自分のAtへの気持ちを捨てたつもりになっていた
でもここまで時間をかけて綺麗になる魔法と一緒に 少しずつかけられてきた恋の魔法がすぐに解けるわけもなく、 オレはその気持ちを閉じ込めて封印して必死で無視しているだけだった
オレは、どう足掻いてもこの男が好きだった。
Mz
Atは真っ赤になってしまったオレを見て少しだけ頬を染め、 自分の何かをこらえるようにうつむく
しかししばらくするとこちらに目線を向けて、 あのさ、とその瞳にちょっとの欲望を揺らしながら言った
At
髪の毛のセットが崩れないようにオレの頭を優しく撫でた彼の瞳に 甘くて苦い恋心が揺れているのを見て、オレも一瞬の夢に浸りたくなった
Mz
オレたちはじっと瞳を合わせて、お互いに「好き」とは口にしないで 目線だけで想いを交わし、どちらからともなく唇を重ねた
オレのメイクが崩れないように、触れたのは一瞬だけ
それでもオレは満たされて、“初めて“を彼に捧げることができて嬉しかった
そして、それと同時にオレの脳内に浮かんだこと
Mz
Mz
Mz
というより、何を義母と義姉に言われたからって この恋を諦める必要があるのだろうか
オレがあいつらの無茶苦茶な要求を受け入れたのは、Tgのためだ
つまりあいつらが、Tgがオレを外の世界に連れて行ったと 気づかなければそれでいいのだ
それはもう誤魔化し終えたのだから、 何もこれ以上二人の命令を聞く必要はない
舞踏会に適当に参加だけして、Prとの会話を楽しむだけでいいのだ
そして何もなかったかのような顔で帰ればいいのだ
そうしたら、結婚を免れる確率は上がるだろう
仮にオレの美貌に勝手に吸い寄せられた奴らから あの二人が適当に結婚相手を選んだとして、 そんなの絶対嫌だとオレがごねれば問題ない
そうすれば、あいつらは感情的だから言うことを聞かないオレにキレて、 後先考えずにオレを屋根裏部屋に閉じ込めるだろう
結婚の話など、一瞬にして忘れてしまうに違いない
Mz
Mz
At
Mz
Mz
At
しんどそうな顔をしているAtを見て、オレの気持ちも苦しくなってしまう
Mz
Mz
オレはサロンの出口まで歩いて、扉を開ける
と、その時、二度とAtに会えなくて いつか彼が他の誰かと恋をする時が来たとしても、 たまにはオレを思い出してくれるように彼の心に爪痕を残したくなった
Mz
扉を開けて半分体を外に出したオレは、 彼との別れを惜しむ気持ちを全面に出して彼の方を振り返る
At
不思議そうな顔をしている彼に、 オレはニコッと笑って甘い甘い声で不完全な告白をした
オレ、お前のこと好きだったよ。
At
目を見開いて固まったAtの返事は聞かないで、 オレはサロンの扉を閉めて王城に向けて歩き出した
Mz
Mz
Mz
At
At
オレとAtの行動で、オレたちの“二度と会えない”という運命の歯車が ちょっとだけズレた音がしたことには、オレもAtも気づかなかった