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アイビーとガラスのピアノ

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アイビーとガラスのピアノ

6 - アイビーとガラスのピアノ 6話

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2022年11月30日

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《まさか再会するなんて思わなかった。 あれから20年以上は経つのに……》

繁華街でばったり清士郎と会うなんて、なんの因果だ

マヌエル

『(あの頃と変わってないな)』

呑気にそう思っていると──

ぎゅっ

マヌエル

『…………!?』

抱きしめられた

マヌエル

『ちょっと……!』

清士郎

『…………』

離れようとする僕を許さず腕の力が強くなる

マヌエル

『いったん離せ』

清士郎

『……嫌だ』

マヌエル

『とにかく離せって』

マヌエル

『人が多すぎる』

幸いというべきか通行人たちは僕らに目もくれず気づいていない

なんとか説得し、清士郎はしぶしぶ離れる

マヌエル

マヌエル

『……付いてきて』

清士郎の腕を引っ張り、その場をあとにした

清士郎を自分の家へ連れてきた

マヌエル

『──うちの両親、5年前に海外へ移住してるから気にしないで』

清士郎

『マヌエル』

マヌエル

『冷蔵庫になんか入ってたかな〜』

何か言いたげな清士郎を残して、僕は台所に入っていく

シードル(林檎酒)の缶とおつまみを盆に載せテーブルの上に置く

マヌエル

『飲むでしょ?』

清士郎

『……ああ』

缶を開け、ごくりとシードルを飲む。ほんのりとリンゴの匂いがした

清士郎

清士郎

『あのあと、どうしてた?』

マヌエル

『──調理師免許を取って、飲食店の厨房で働いてた』

マヌエル

『で、その飲食店がたたんじゃったから』

マヌエル

『次どうしようかなと……』

清士郎

『…………』

言うまでもなく清士郎は“天才ピアニスト”として名を馳せている。

こっそり本人のピアノ・リサイタルに行ってることは本人に内緒だ

マヌエル

『(自分で別れを切り出したくせに、未練だらだらなんて知られたくないし)』

マヌエル

『(それに──)』

清士郎

『マヌエル』

名前を呼ばれ顔を上げると

チュ

唇を奪われた

マヌエル

『…………っ!!』

がっちりと頭を押さえられ逃げられない

マヌエル

『〜〜〜〜!!』

しかも濃厚なのをかまされた

ようやく唇を離した

マヌエル

マヌエル

『どういうつもりだ……?』

清士郎

『どう、とは?』

マヌエル

『お前は結婚して子供だっているだろ?』

マヌエル

『なのに、どうして──』

清士郎

『わからないだろうな』

清士郎

『あんたがいない間、俺がどんな寂しい思いで過ごしてきたなんて……』

射通すような鋭い目付きに何も言えなくなる

マヌエル

『……清士郎』

清士郎

『結婚して家庭を持てば、マヌエルを忘れられると思ってた』

清士郎

『でも忘れるどころか、ますます思いが広がっていくだけだった……』

マヌエル

『…………』

清士郎

『あんたじゃなきゃ、ダメなんだ──』

優しく僕を抱きしめる

マヌエル

『(本来なら抵抗すべきなんだろうけど)』

マヌエル

マヌエル

『するんなら、早くして……』

抗うことなく

清士郎

『言われなくても──』

僕は清士郎を受け入れた

《一瞬で“あの頃”に戻った》

《清士郎からマネージャーにならないかと誘われた。 前任者は家庭の事情でやめたのこと。 「マネージャーになれば、そばにいられる」 僕はその“悪魔の囁き”に二つ返事で了承した。》

冴夏

…………

日記帳にはわたしたち家族のこと、マネージャーの仕事内容のこと、逢瀬を重ねていたことが書かれていた

そして、見え隠れする“罪悪感”────

ページを進める

《清士郎からアイビーの水挿しをもらった。 枯れないように気をつけなきゃ》

《蔓が少しだけ伸びた♪》

嬉しそうな顔が浮かぶ

冴夏

(あのアイビーはお父さんからもらったものなんだ)

《家の鍵を無くし途方に暮れている冴夏ちゃんを放っておけなくて、自分の家に連れてきた。 玄関のドアを開けた瞬間、ちょうど一階へ下りてきた清士郎と出会した……。 まずいと思った僕は彼女に少し待っててもらい、急いで清士郎を二階の部屋へ押し込んだ。 説明している暇はないし、今会わせるわけにもいかない。 万一のため清士郎の靴も下足箱に隠した。 そして彼女を招き入れた》

ゴメンね、僕は清士郎との関係を無くしたくないんだ──

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