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アイビーとガラスのピアノ

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アイビーとガラスのピアノ

7 - アイビーとガラスのピアノ 7話

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2022年12月05日

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《僕と清士郎の関係はバレなかった。 ピアニストそのマネージャー。 仕事の打ち合わせって口実にすれば誰にも疑われなかった。》

《ここ最近は忙しかった。 ピアノリサイタルの全国ツアーの打ち合わせとか、バラエティー番組のロケとか、その他諸々……。 ゲスト出演でとある番組のロケ地に同行した。 そこは──》

清士郎と別れたあの“水族館”だった

マヌエル

『(リニューアルオープンしたって聞いたけど)』

何もかもが新しくなっていた

チクッ

胸の痛みに気付かないふりをしてスタッフのあとを付いていく

平日だからが比較的空いていた

順調に進む

マヌエル

『(このまま行けば次の仕事場に間に合うかも──)』

そんなことを考えていると

マヌエル

『(あ……)』

水槽の中でクラゲがゆらゆらと漂っていた

マヌエル

『(ここも変わったんだ)』

“クラゲは寿命を迎えると水に溶けていなくなる”

いっそのこと、僕もクラゲのように水に溶けて……

AD

『どうしました?』

マヌエル

マヌエル

『あ、いえ……、つい見惚れちゃって』

見知った顔のADさんに声をかけられ、とっさにごまかした

AD

『ああ、たしかに幻想的ですよね、クラゲの漂ってる姿って』

AD

『見惚れる気持ちわかりますよ』

他愛のない会話

それを苦々しい顔つきで清士郎が見つめていたことを僕は知らなかった

予定通りロケが終了した

まだ時間はある

マヌエル

『(なんか買おうかな)』

売店には関連グッズやお菓子が売っている

適当にぶらつくと

清士郎

清士郎

『あいつと何話してた?』

いつの間にかそばにいた

なんだか機嫌が悪い

マヌエル

『あいつ?』

清士郎

『クラゲの水槽の前で話してただろ?』

そこでADさんと少し話をしていたのを思い出す

マヌエル

『普通の会話をしただけだよ』

マヌエル

『(全然変わってないな)』

なんとなしにチンアナゴのキーホルダーを手に取ると──

清士郎

『それがほしいのか?』

僕の手からぶんどる

マヌエル

『ちょっと』

清士郎

『…………』

もうひとつ同じものを取りレジへと向かう

数分後

清士郎

『買ってきたぞ』

マヌエル

『──ほしいって言ってないのに』

清士郎

『これでお揃いだな』

マヌエル

『あまり大きい声で言わないで』

マヌエル

『誰かに聞かれたらどうするの?』

清士郎

『心配しすぎだ』

時間になり次の仕事場へ移動する

移動の間、自分の家の鍵にチンアナゴのキーホルダーを付けてみた

意外と悪くない

清士郎も僕が前に渡した合鍵に付けている

マヌエル

『(お揃い──)』

その事実にこそばゆさを感じた

数日後、ピアノリサイタルの全国ツアーの打ち合わせと段取りが最終調整に入った

宿泊先のホテルの予約はもちろん、飛行機と新幹線の時間を調べ、チケットの手配をした

すべて終えたとき、時計の針は8時をさしていた

マヌエル

『(帰りにコンビニによろう)』

机の上を片付け、事務所をあとにした

2ヶ月後

マヌエル

『(ちゃんと準備してるかな?)』

いよいよ明後日は全国ツアーだ。清士郎はギリギリにならないとなかなか準備しない

【準備できた?】

メールを送っても返信なし

マヌエル

『……嫌な予感がする』

僕はすぐに清士郎の家へ向かった

清士郎の部屋

マヌエル

『……なんで準備してないんだ?』

思わず自分の額を押さえた

清士郎

『動画を見てたらついうっかり』

マヌエル

マヌエル

『とにかく僕も手伝うから、さっさと動いて』

そして2時間後、なんとか荷物をまとめた

マヌエル

『──疲れた』

清士郎

『マヌエル』

マヌエル

『……何?』

チュ

マヌエル

『…………!!』

キスされた

清士郎

『手伝ってくれたご褒美だ』

マヌエル

『……バカじゃないの』

視線を床に落とす

当日、ばたばたしながら僕と清士郎は出発した

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