テラーノベル
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その日の夕暮れも、
俺の家はひどく冷えきっていた。
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…
その声は空気の壁にはね返されて
誰にも届かない
家族はみんな自室にこもったり
俺がそこに存在してる事さえ
彼らにとっては背景の一部に過ぎない
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誰にも触れられず、誰の記憶にも残らない
そんな毎日に俺の心は今にも消えてしまいそうな程、薄くなっていた
逃げ出すように外へ飛びだすと冷たい雨が降り始め
誰もいない公園の隅にある大きな木の下で膝を抱えて丸くなっていた
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その時
目の前のずぶ濡れの地面に立つ誰かの足元が目に入った
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そっと顔を上げると
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この辺りでは見かけた事の無い、歳も自分に近そうな男の子が 目の前に立っていた
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何も答えられずもう一度俯いてしまう
すると突然、差し出される手が視界に入り
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普通ならそんな軽く着いては行かない
だけどなぜだか吸い寄せられるように立ち上がった
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さっきまで無かった、木の元の大きな穴
男の子はその穴に飛び込んで行った
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俺はこの時何も迷っていなかった
現実の痛みから逃れるためと、初めて自分を見つけてくれたその存在に追いつくために
穴の中は不思議な無重力の世界だった
ゆっくりと落下しながら、 「悲しい記憶」が家具の形をして流れて行く
空っぽのお皿、破られたテスト用紙、 冷たい両親の背中
見たくもないけど日常の悲しい光景
けれど下から手を伸ばしていたのは あの男の子
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彼の手が俺の指先に触れた瞬間、 真っ暗だった視界は 爆発するように鮮やかな色彩に包まれた
その温かい手の感覚に 俺は生まれて初めて 「生きている」事を実感した
これが
のちに二人が恋に落ち、そして
残酷な目覚めへと向かう、 甘い悪夢の始まりでした。
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