俳優の英ジュンに似ている顔を持つ俺は車から現れた男達に拉致されてしまう…
謎の男
おい、そろそろ外してやれ

下っ端
はい

俺
……

俺
ここは、何処だ?

頭に被せられていた黒頭巾を剥がされると、そこは倉庫のような殺風景な場所だった
謎の男
少し強く気絶させすぎたんじゃないのか?

下っ端
へい、すいません

謎の男
しっかりしろよ英ジュンさんよ

俺
…あれ?

俺
この顔は…

謎の男
おい声までそっくりだぜ

下っ端
ははは

俺
あ、アンタは…!

謎の男
そうさ

英ジュン
俺が本物の英ジュンだ

俺
……

俺
まじか…!

俺
そのホンモノの英ジュンさんがなぜ俺をこんな目に?

英ジュン
実はさ、キミに俺の代わりをしてもらおうと思って

英ジュンはそう言って俺の前に一枚の紙を差し出して見せた
英ジュン
借用書だ

英ジュン
実はある所から多額の金を借りていてね

俺
……

英ジュン
結構ヤバイ所からの出資でそれを株で溶かしちまった

俺
…ネットニュースで見かけた噂だったけど

俺
英ジュンが金に困って色々事業に手を出してたのは本当だったのかよ

英ジュン
そこで、だ

英ジュン
キミに俺の代わりとして借金の肩代わりをしてもらう

俺
……

俺
はあ?

俺
顔が似てるだけで本人になれる訳ないだろ!

英ジュン
俺はこの後芸能人を引退し、海外に高飛びする

英ジュン
事務所の金も相当ガメたしな

俺
…最低だ

英ジュン
金貸し屋のチンピラ共はもうすぐココにやってくる

英ジュン
俺と同じ顔のアンタを見つけたら問答無用で殺るだろうさ

俺
…つまりこういう事か?

俺
俺にアンタが海外に逃げるまでの時間を稼げと?

英ジュン
時間を稼ぐ?

英ジュン
その必要はないさ

英ジュン
さっき電話で連中を散々煽っておいた

英ジュン
俺に似た顔のアンタを見つけたら問答無用で襲い掛かって殺ったらそれで満足するだろうさ

俺
…クソ野郎だな

下っ端
そろそろ時間です

英ジュン
そうか

英ジュン
それじゃ、俺達はこの辺りで失礼するよ

俺
ま、待て!

手足を拘束された俺を残して倉庫から立ち去ろうとする英ジュンとその仲間達
英ジュン
じゃ、精々俺の代わりを任されてくれよ。ニセモノ君

俺
待てったら!

英ジュン
?

俺
金に困ってるのは分かるけど…!

俺
なんで面識のない俺に対してこんな仕打ちが出来るんだ!

俺
こんな理不尽な事があってたまるか!!

英ジュン
駅前のラーメン屋

俺
……えっ

英ジュン
書いた覚えのない俺のサインが飾ってあった

俺
……

英ジュン
クラブで初めて声を掛けたはずの女が前に俺に口説かれたと言っていた

俺
……

英ジュン
俺に成り代わってオイシイ思いをしてたんだろ?

踵を返して俺の頭掴んで俺とそっくりの顔を近づける英ジュン
英ジュン
いいか?これは当然の報いなんだ

英ジュン
なんの才能もないお前が俺のフリして気楽に暮しやがってよ

俺
……

俺
(確かにコイツの言う通りだ)

俺
(俺は国民的俳優の英ジュンのフリをして相当良い思いをしてきた)

英ジュン
幸せの前借りだ

英ジュン
借りたモンは返さないとな

英ジュン
俺は金を返さねぇけどなwwww

俺
…面白くねぇんだよ

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不在着信

英ジュン
もうすぐ連中がやってくる

英ジュン
まともに会話の通じないチンパン連中だ

英ジュン
これまでの人生を振り返りながら念仏でも唱えてるんだな

俺
ち、ちくしょう…!

謎の声
そこまでだ!!

下っ端
?

俺
?

英ジュン
?

謎の声
警察だ!動くんじゃねぇぞ!

突然倉庫の扉が開き拳銃を構えた武装集団が中に侵入してくる
謎の声
崎山英純、恐喝と誘拐、および資金横領の疑いで逮捕する!

英ジュン
早く車を出せ!

下っ端
は、はい!

その場を駆け出して車に乗り込み、警官達の制止を振り切って逃走を始めた英ジュンとその下っ端達
警官
くそ、逃げられたか

警官
キミ、怪我はないかい?

俺
あ、ありがとうございます…

俺
あ、あんたは…!

警官
ハハ、俺も良く言われるんだ

腕の拘束を解く警官の顔をまじまじと見ながら俺はふっと息を吐く
なぜならその警官も俺と同じく俳優の英ジュンにそっくりだったのだから