短編

今までの自分は、酷かったと思う

見た目を気にしないで

ただ、気まぐれに生きていて

そんな性格だから

……人に嫌われるのも

仕方ないと、思ってた

それが、1番楽でいいって

でも、変わろうと思った

あの日、今日もダメだったと思った

気まぐれで見ていたインターネットで

その、電子の海の中で

ある人に、一目惚れをした

その後は、もうめちゃくちゃだった

主に部屋の中が、グッズで溢れた

幸せだった

元気を貰っていた

今日も生きていけると、思えた

……けど、それと同時に

不思議な、欲を抱いたのだ

｢電子の海の彼に、恥をかかせる人になりたくない｣

堂々と、胸を張って

好きだと、言えるように

まさか、自分磨きをすることになるとは

数年前の自分は思ってもないだろう

でも、これが現実だ

髪は整え、メイクを覚え、身だしなみに気を使うようになった

それだけで、まぁ不思議

周りの人からいじられなくなった

いやそんなことどうでもいいか

……今日は、久しぶりの遠出

……実家に、帰るのだ

変わり果てた娘を見て、親はなんて思うだろうか

……都会の娘だ、とか言うかしら

愛されて育てて貰った

恩返しも、したい

だから、だからこそ

……否定されたら、と考えてしまう

……いや、大丈夫

もし親に否定されてもいい

……そもそも、根本が違った

誰の為に、綺麗になったのだ

スマホのロック画面の、彼を見つめる

この次元に存在しない人に惚れたなんて

全く、人生何があるかわかったもんじゃない

でも、本当に出会えてよかった

貴方に会って、本当に良かった

帰ってきたら、受注で頼んでいたグッズが届く頃合いだ

ビジュ良すぎて即買いした

受注なのに……

……まぁいいか

とりあえず、もう出発の時間だ

早く帰ってきたいな

そう思いながら

扉を開けた

私の好きが詰まった部屋へ

私の、全てが詰まった部屋へ