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4人の夏

第8話 - 8話（最終話） 4人の夏

2020年07月14日

#恋愛

#学園

#スポーツ

#高校生の恋

#1位と2位

#過去

霧夜

久我莉音

は？

久我莉音

力石、また休んだなと思ったら

久我莉音

今度は39度の熱？

布施都

あはは、そうなの

布施都

しかも今日私バイトなの…

布施都

あの、行ってくれないかな？

布施都

多分、麗華かなり苦しがってるだろうから

久我莉音

なるほどね

久我莉音

じゃあ、力石のために行ってあげないとな

布施都

…

布施都

ねえ、久我…いや、莉音君

久我莉音

！

布施都

私じゃ、だめ？

布施都

私、ずっと今まで、莉音君が好きなの

布施都

私が一方的に突き放してしまったのが別れた原因なのは自分でよくわかってる

布施都

だけど、今も気持ちは変わっていないことは莉音君にわかっていて欲しい

布施都

私たち、もう、だめかしら？

久我莉音

…都

布施都

！

久我莉音

俺は君と一緒にいて、すごく幸せだった

久我莉音

俺たちには「大切な人に愛されたい」っていう共通の望みがあって

久我莉音

その言葉通りに純粋に、お互いを愛してた

久我莉音

でも、もう違うでしょ？

久我莉音

君も、俺も

布施都

っ！

久我莉音

君の家族は平穏になって、俺も父さん、母さんと仲直りして

久我莉音

俺たちはもう、一緒にいる必要は無くなった

久我莉音

加えて、俺は力石の事が何よりも好きなんだよ

久我莉音

君以上に、ね

布施都

！

久我莉音

だから、都がどんなに俺を好きでいてくれていても

久我莉音

もう、俺には…

布施都

うん、もう気づいてたよ

久我莉音

え？

布施都

毎日、麗華の話ばっかりで

布施都

麗華のことを話す度に莉音君は嬉しそうにしてた

布施都

それを見て、もう分かっていたはずなのに

布施都

ごめんなさい

久我莉音

都、俺もごめん

久我莉音

好きでいてくれて、ありがとう

布施都

こちらこそ、私と一緒にいてくれて、ありがとう

莉音君と麗華のふたりの姿を見て

麗華じゃなくて私だったらいいのにって思わなかったと言ったら嘘だけど

莉音君と過ごしたたった8ヶ月の時間は、私の最高の宝物で、大切な思い出

消してしまうのは、少し、寂しいけれど…

布施都

莉音君

久我莉音

？

布施都

…バイバイ

久我莉音

！！

ーーきっと、前へ進めるーー

藤宮大（MASARU）

よう、覚悟決まったか？

久我莉音

もちろん

久我莉音

さっき、布施さんと話してきた

藤宮大（MASARU）

お前は、なんて言ったんだ？

久我莉音

「好きになってくれて、ありがとう」

久我莉音

って言ったけど？

藤宮大（MASARU）

はは、随分とお前も優しいやつだったんだな

久我莉音

なに、その言い方

久我莉音

俺だって冷たくあしらったりはしないし

藤宮大（MASARU）

悪かったよ

藤宮大（MASARU）

で、お前は今日、力石になんて言うんだ？

久我莉音

そんなもの今考えたって無駄でしょ

久我莉音

成り行きだよ

藤宮大（MASARU）

おいおい、変なことするなよ

久我莉音

どうかな

久我莉音

力石の状態による

藤宮大（MASARU）

お前、それ力石が抵抗できない状態だったら襲うって意味に聞こえるんだけど？

久我莉音

バカじゃないの

久我莉音

もっと丁寧に襲うよ

藤宮大（MASARU）

襲うのは変わらないのかよ

久我莉音

俺は迷わない

久我莉音

以上

藤宮大（MASARU）

ったく…

布施都

うっ、ううっ…！

私は泣きながらバスケットゴール目掛けてボールを投げつけていた

布施都

莉音君のバカ！アホ！

藤宮大（MASARU）

派手に暴れてんな、布施

布施都

藤宮君…

藤宮大（MASARU）

泣きすぎて顔ぐしゃぐしゃだぞ

藤宮大（MASARU）

ほら、ティッシュ

布施都

ありがとう…

藤宮大（MASARU）

お前も大変だな

布施都

藤宮君だって、私とだいたい同じ立場なくせに…

藤宮大（MASARU）

俺はそこまでねえよ、力石に告白さえしてないしな

藤宮大（MASARU）

したならしたで力石に投げ飛ばされるか莉音に睨まれるかどっちかだ

布施都

あはは、なにそれ、かわいそう

藤宮大（MASARU）

笑い事でもねぇけどな

藤宮大（MASARU）

そっちはどうだった？

布施都

あ、もう

布施都

思い出させないで

布施都

…最後まで、優しかったよ、莉音君

布施都

ひねくれてるところはあったけど、昔から変わらない

布施都

根は優しいままだったよ

藤宮大（MASARU）

そうか

藤宮大（MASARU）

えっと、その、立ち直れそうか？

布施都

すぐには出来ないと思うけど

布施都

いずれ、また好きな人ができるくらいには立ち直れるんじゃないかな

藤宮大（MASARU）

そうか、俺もだ

久我莉音

ああもう、なんで力石を襲うレクチャーとか受けなきゃいけなかったんだ…

久我莉音

おかげでまともな考えも浮かばない…

久我莉音

まあいいか

久我莉音

失敗したら大を懲らしめればいいだけだしね

ピンポーン

久我莉音

力石さん、いる？

久我莉音

ごめん、鍵を持ってないから開けてくれない？

ガチャ

力石麗華

げほっ！

力石麗華

え？また久我？

久我莉音

またって失礼だね

力石麗華

げほっ、げほっ…

バタリ

久我莉音

力石さん！？

力石麗華

お、降ろして

力石麗華

聞いてるの？

久我莉音

降ろしたところでまた倒れるでしょ

久我莉音

いい加減大人しくして

力石麗華

…

久我莉音

なんか作って来るけど、何食べたい？

力石麗華

…寒気がするからスープ飲みたい

力石麗華

冷蔵庫にあるもの何使ってもいいから

力石麗華

あと、必要な時以外、私のところから離れないでよね

久我莉音

！

久我莉音

了解しました、力石さん

力石麗華

ん、美味しかった、ありがと

久我莉音

どういたしまして

久我莉音

こんなに食べられるほど食欲があるなら、まず大丈夫そうだね

力石麗華

残せるわけないし

久我莉音

え？

力石麗華

久我が作ってくれる手料理、だから

久我莉音

…そう

久我莉音

自分で何言ったか分かってる？

力石麗華

熱のせいで半分分かってないかも

久我莉音

まあ、そうか

久我莉音

それにしても、今日の君の顔、赤リンゴみたいに真っ赤

力石麗華

当たり前でしょ、熱出てるんだから

久我莉音

うん、なんか可愛い

力石麗華

あんたも自分で何言ってるかわかってる？

久我莉音

分かってるよ、俺には熱ないし

力石麗華

あっそ

久我莉音

ふぁ…

力石麗華

？

力石麗華

眠いの？

久我莉音

少しだけね

力石麗華

こっち来る？

そう言って力石はベッドの掛け布団をめくって俺が入るスペースを空けた。

久我莉音

何？誘ってんの？

力石麗華

勘違いも甚だしいよ

力石麗華

少し横にさせるだけだし

力石麗華

私の隣にいすぎると風邪移るし

久我莉音

別にいいよそれは

力石麗華

わっ

久我莉音

うわ、力石の顔あっつ

力石麗華

熱いなら触らなきゃいいのに

久我莉音

やだ、触るね

力石麗華

なんなのよ…

久我莉音

…

力石麗華

…？

力石麗華

（なんか、腰に手、回されてない？気の所為？）

久我莉音

…ねえ

力石麗華

何？

ガタンッ！！

久我莉音

！？

力石麗華

あ、ポストの音だ

久我莉音

こんな大きい音するの？

力石麗華

そう、なんでか知らないけどね

力石麗華

ちょっと取ってきて

久我莉音

はいよ

力石麗華

何が来た？

久我莉音

ねえ、これ、えらい厚みがあるんだけど

力石麗華

なにこれ？施設長から？

久我莉音

開けていい？

力石麗華

いいよ

開けてみると、何十枚もの写真が出てきた

久我莉音

！

久我莉音

これ、力石さんの写真じゃない？

力石麗華

え？盗撮？

久我莉音

違う、そんな物騒なものじゃなくて

久我莉音

なんというか、家族写真みたいなのが何枚も、ある

力石麗華

！

力石麗華

私に家族なんていないはずなのに…

力石麗華

見せて…っ！

麗華が見た写真の1枚に、「命名力石麗華」と書かれていた。

力石麗華

これは、私の家族…？

久我莉音

だと思う

久我莉音

あと、中に手紙みたいなの入ってる

力石麗華

貸して

見てみると、施設長から私の家族のことが記されていた

両親には身寄りがいなかったこと、両親が事故にあい、私を庇って死んだこと

「麗華」という名前に、綺麗に咲く花のように美しい人であって欲しい、と込められていること

両親が亡くなる寸前、知り合いでもある施設長に「麗華には自分の心の支えとなる人と結ばれて欲しい」と口にしていたこと…

私は、初めて泣いてしまった

久我莉音

力石さん…！

久我は黙って私の涙をハンカチで拭いてくれる

そんな些細なことでさえも、優しくて暖かいと思った

力石麗華

ねえ、久我…いや、莉音

久我莉音

ん？何？

力石麗華

先に謝っとく、ごめん

久我莉音

え？

久我莉音

！

初めて名前で呼ばれた驚きに加えて、肩に寄りかかられた事もあって、体が固まってしまった

久我莉音

力石さん

力石麗華

麗華

久我莉音

麗華ね、はいはい

力石麗華

私、気づいたの

力石麗華

認めたくないけど、莉音が好きだって

久我莉音

！

久我莉音

唐突だね

力石麗華

気づいたの、今だから

力石麗華

あんたに近づいたら顔が赤くなるのも、好きだって言う証拠？

久我莉音

そうだね、あってると思うよ

力石麗華

そう、良かった

久我莉音

麗華、俺も、ずっと麗華が好きだった

力石麗華

ほー

力石麗華

なんだ、一緒だったんだ

力石麗華

実は、藤宮に助言を求めたんだけど、「莉音なら全然大丈夫」って言われたんだよね

久我莉音

えっ

力石麗華

なんでだろ、まあいいや

久我莉音

そうだね

久我莉音

麗華、もう1回俺から言わせて

久我莉音

好きだよ

大切な人を見つけた麗華

麗華の傍にいると密かに決意した莉音

過去から立ち直ると決めた都

恋愛から離れることにした大

4人の夏は、バラバラの形で幕を閉じた

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霧夜

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