静まり返った都会の夜景
流れるような少し冷たい風
マスター
夜空を見上げながら 少し長くなった髭を触り、 飼い猫のメイへ話しかける
メイ
メイはそれに答えるように 僕に向かい可愛らしい鳴き声を響かせる
マスター
マスター
優しく手でメイの 顎あたりを触る
すると、遠くの方で ドアベルの音が鳴り響く
マスター
俺はベランダの扉を 手にかけ、そっと開けた
マスター
お客様
そう、大抵の客はこの店に来ると 位置感覚を無くす
だから、この店はどこにあるのか この店に来た客でも分からないのだ
お客様
興味津々に店の中を見渡す
マスター
俺の声に気付いたのか こちらに振り向く
お客様
お客様
お客様
少し申し訳なさそうに 頭を搔く
マスター
マスター
俺はお客様をカウンターへと 移動させる
マスター
お客様
お客様
そう言われ、服装を見てみると
所々ツギハギになったTシャツ。
裾がボロボロになったジーパンを 履いている
お客様
お客様
少し下を向いて ズボンをぎゅっと強く握っている
マスター
マスター
お客様
お客様
お客様
お客様
苦笑して悔しそうに笑う
マスター
マスター
お客様
俯いていた顔を上げ 不思議そうに目を見張る
マスター
マスター
「大切」と感じているからです
マスター
マスター
拭いていたコップの手を止めて 優しく微笑みかける
お客様
マスター
マスター
お客様
お客様
マスター
いつものようにシェイカーに 液を入れ、準備を進める
準備が完了したらシェイカーを リズム良く振る
お客様
シェイカーをじっと見つめて 目を輝かさせている
マスター
お客様
お客様
マスター
マスター
マスター
マスター
グラスへと注ぎ
周りにカットしておいた果実を付けて 完成。
マスター
マスター
お客様
カクテルをじっと見つめ グラスへ手をかける
お客様
ゴクリと小さく音が響く
お客様
お客様
マスター
マスター
マスター
お客様
お客様
お客様
マスター
マスター
御提供させて頂くのが仕事ですから
俺は優しく笑い 先程続けていたグラス拭きにまた取り掛かる
マスター
マスター
マスター
お客様
マスター
お客様
お客様
マスター
マスター
俺のはなった言葉に 目を見張りこちらをじっと見つめるお客様
少し冷たい空気が漂う
マスター
マスター
マスター
マスター
布巾をテーブルへ置き 目線を合わせる
マスター
マスター
マスター
目が覚めると見慣れた景色が広がっていた
俺
辺りを見渡すと いつも寝ている路地だった
心愛
遠くの方で俺を呼ぶ声が聞こえる
俺
心愛
美しく笑う君。
何故だろう? 今なら伝えられるような気がした
俺
心愛
俺
恥ずかしくて下を向く
心愛
心愛
その声につられ 顔をゆっくりと上げる
俺
心愛
優しく笑う君太陽が照らすように輝いていた
心愛
心愛
心愛
手を強く引っ張られ それにしがみつく様に着いて行く
マスター
俺は積み重なったダンボールの上に グラスを2つ優しく置いた