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高校生ともなれば、色々と金が用入りとなってくる。
しかしながら、親に頼るには限度がある。
そもそも、用入りとなる金というのが、遊びだったり、自分の欲しいものだったりするため、そりゃバイトのひとつくらいしなければならないわけだ。
特に彼の家庭では、スマホの利用料金は本人が捻出する決まりになっており、ゆえにアルバイトは必ずやしなければならないもの。
もちろん、毎月ギリギリだ。
一里之
一里之かバイトをしているのは、田舎の小さなスーパー。
個人経営のスーパーではあるが、田舎であるがゆえに、それなりに経営は成り立っており、数名のアルバイトと店長でやりくりをしていた。
綾茂
閉店後のスーパー。
基本的に2人体制で行い、1人は商品の補充などを行い、もう1人はレジの金を数える。
一里之
今日の一里之のパートナーは、ベテランバイトの綾茂徹(あやしげ とおる)だった。
品出しを終えると、一里之はレジへと向かう。
綾茂
手提げ金庫とは持ち運びができる簡易的な金庫だ。
4桁の暗証番号を設定できるタイプであり、数え終えたレジ金と売り上げ金をそこに仕舞って、事務所に保管する決まりになっていた。
一里之
商品の補充を終えた一里之は、事務所に向かうと手提げ金庫を持ち、そしてレジのところに戻る。
綾茂
一里之
パートナーによるクロスチェック。
スーパーなど、日常的に金を触るような業務は、それこそ自動レジでもない限り、レジ金に差異が生じてしまう。
むろん、こんな田舎のスーパーに自動レジを導入する余裕なんてあるわけがなく、店員の手渡しによって金のやり取りがされている。
ゆえに、レジ金の差異が生じやすく、こうしてクロスチェックが行われていた。
綾茂
綾茂
レジ金が手渡しである以上、間違ったふりをして、レジ金をポケットに入れる――なんて店員もまるでいないわけではない。
一里之
お金を数え終える。
一里之
綾茂
一里之
金庫を開けるためには、4桁の暗証番号が必要になる。
そして、この暗証番号――開店時に金庫を開けた店長の手により、毎日変更されるのである。
簡易式の金庫ゆえに、暗証番号の変更は簡単であり、暗証番号を変更すると、店長はその日の締めのメンバーのうち、レジ金を数えないほう――すなわち、今日のような体制だと一里之に対して、暗証番号をメールにて送信するのだ。
一里之
店長から送られてきたメールを確認しながら、一里之は金庫を開ける。
当たり前だが金庫は開き、そこに綾茂が売り上げ金とレジ金を仕舞って、金庫を閉じた。
綾茂
綾茂
綾茂はそう言うと、手提げ金庫を片手に事務所に向かう。
一里之
一里之は念のために店の出入り口の施錠を確認して回る。
しばらくしていると、綾茂が戻ってきた。
しかしながら、戻ってきたのは綾茂だけではなかった。
綾茂
綾茂
凛子
一里之
綾茂と一緒に戻ったのは、同じアルバイトの戸田凛子(とだ りんこ)だった。
一里之より歳は上だが、面倒見の良い先輩である。
凛子
凛子
綾茂
綾茂
凛子
凛子
凛子はそう言って笑うが、しかしスーパー開店以来の何かが起きてしまうのだ。
――翌日、手提げ金庫の中から売り上げ金とレジ金が消えた。
よりによって、店長と一里之しか暗証番号を知らない――という最悪のタイミングで。