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翌日

久留間悟

……ゼェッ、は……っ

久留間悟

えっげつない、山奥、だね……

久留間悟

じっちゃん、大丈夫?

本田芙蓉

ほっ

本田芙蓉

多少は疲れたがの

本田芙蓉

……まぁ、大丈夫じゃ

ポスト

だからボスは別荘で待っとけって言ったのにぃ

ポスト

そしたら俺が目的地に着いてからさぁ

久留間悟

あ、ホントだ!

久留間悟

お前だけ登らせればよかった!

ポスト

お前は絶対そんな楽させてやんない!!

本田芙蓉

まぁまぁ、ケンカするでないよ

本田芙蓉

わしも少しは体を動かさねばな

本田芙蓉

いざというときに困るじゃろう

本田芙蓉

これくらいはこなさねばな

久留間悟

……じっちゃんは偉いね

久留間悟

俺はできるだけ肉体労働はしたくない

ポスト

お前の体力ミジンコだもんな

久留間悟

誰が一つ目に見える複眼甲殻類だ!

ポスト

そんなこと言ってない!!

本田芙蓉

元気じゃなぁ

本田芙蓉

……しかし、ここが旧道とはのぉ

本田芙蓉

一時は車も通っておったらしいが

ポスト

まるっきりジャングルだもんな

久留間悟

40年前には使う人がいなくなったんだろ?

久留間悟

そりゃ、こんだけ荒れ放題にもなるよね

前日、墓地近辺

久留間悟

さすがにビビるね

久留間悟

墓地間近の洞窟が、まさか風葬地跡とは

ポスト

夕方になってきたし……

ポスト

ちょっと不気味だなぁ……

先々代ユタ

くまぬ方が人目んかいつかん

先々代ユタ

話んかい集中ないんはじ

本田芙蓉

お気遣い、痛み入ります

本田芙蓉

早速ですが、伺いたいことは一つ

本田芙蓉

……霊を見られるようになる苔を、ご存じか?

先々代ユタ

……

先々代ユタ

知とーん

久留間悟

っ、じゃあ!

先々代ユタ

やしが、なーわからん

久留間悟

……分からん?

久留間悟

え、なんで!?

先々代ユタ

ちかとーたん一族、知とーん

先々代ユタ

やしが、なー血が絶えたん

本田芙蓉

お家が断絶した一族が使っておったと

本田芙蓉

そういうことですかな

先々代ユタ

そうやん

ポスト

じゃあ、もう手がかりが……!

ポストが声をあげて空を仰いだときだった

久留間が前のめりに、ユタへ詰め寄った

久留間悟

その一族、どこに住んでた?

久留間悟

なんでそんなの飲んでたのかな

久留間悟

なんでもいいから教えてほしい

唇を噛み締めて請願する久留間に、ユタの霊が静かに揺らめく

先々代ユタ

……いりゆーな、くとぅなんやんやー

先々代ユタ

てぃー、ちないっし

実体と幻覚の狭間にあるような手が、久留間の手をとる

その後、本田にも同じようにするよう無言で指示すると

やがてポストを含め、全員で輪を作った

先々代ユタ

いちゅたー静かんかいしてぃいてぃやー

とたん、脳にノイズのようなものが走る

久留間悟

――っ!?

先々代ユタ

少しの間、体を借りるよ

先々代ユタ

本土から来たあんたたちには

先々代ユタ

私の言葉は聞きにくいだろう

先々代ユタ

こうすれば分かるはずだ

先々代ユタ

憑依は力が要るから、手短にいこう

先々代ユタ

――あの家はね、私らユタの監視者だった

本田芙蓉

監視者、ですかな

先々代ユタ

そう

先々代ユタ

我々がきちんと仕事をしているか

先々代ユタ

霊の見えない者には分からないからね

先々代ユタ

だから、あの不思議な苔を薬にして飲み

先々代ユタ

霊を見えるようになることで、監視していた

久留間悟

実質的な権力者だったわけね

久留間悟

そんな家がなんで断絶なんか

先々代ユタ

……もう50年前にもなるかね

先々代ユタ

跡継ぎが自殺したんだ

ポスト

自殺?なんで?

先々代ユタ

耐えきれなかったんだよ

先々代ユタ

無理矢理ヒトならざるモノを見続けることにね

本田芙蓉

……その跡継ぎという御仁は

本田芙蓉

年頃はいかほどでしょうかな

ポスト

あ!そうだ、それ聞かなきゃ!

ポスト

あとそいつ、眼鏡かけてハラ出てた!?

先々代ユタ

歳は30代半ば

先々代ユタ

確かに眼鏡をかけた、小太りの男だ

本田芙蓉

ならばやはり、そやつが

久留間悟

……人と違うものが見える苦悩ってのはそれかな

久留間悟

元々霊が見えてたわけでも

久留間悟

望んで見たかったわけでもないからこそ、か

本田芙蓉

ほかの候補はおられなかったのですかな

先々代ユタ

みな、不審死を遂げた

ポスト

不審死!?

先々代ユタ

苔を飲む前だったと聞いている

先々代ユタ

その後も父親がなんとか務めてはいたが

先々代ユタ

ある日、姿を見せなくなってね

先々代ユタ

それ以上のことは、私にも分からないよ

ゆるりと体からなにかが抜けていく感覚に襲われ

視界が風葬跡地へと引き戻される

あまり時間は経っていないはずだが

すでに陽は海に落ちかけていた

湯気のようにあやふやな指先が、一つの山を指す

先々代ユタ

あぬ山んかい、ぬぶりんさい

先々代ユタ

昔ぬ道進らん先んかい、やーがあん

先々代ユタ

うまがうぬ一族ぬやーやん

本田芙蓉

あの山に、その一族の家があると

本田芙蓉

なにからなにまで痛み入ります

久留間悟

お供えは泡盛でもいいです?

先々代ユタ

充分やさ

先々代ユタ

……あまみんちゅが面倒かけとーんぐとーんやー

先々代ユタ

無事んかい終わいんくとぅ願とーんさぁ

久留間悟

……てことで、ようやく辿り着いたけど

久留間悟

まぁひどい有様だね

本田芙蓉

外観はあまり朽ちておらんが

本田芙蓉

中を見るには苦労しそうじゃな

久留間悟

表札は……伊、としか書いてないね

久留間悟

伊さん?

ポスト

変わった名前だなー

ポスト

……ん?

ポスト

ねぇボス、あっちからなんか聞こえる

ポストが誘導したのは、より鬱蒼と木々が茂る、家の脇だった

 

だれかぁ

だれかぁ

 

掻き消えそうな声で、確かに誰かが囁き続けている

久留間悟

この茂みの下になんかあるね

久留間悟

……石、かな

久留間悟

そこそこおっきいのが4つ

久留間悟

木片を囲むみたいに立ってる

本田芙蓉

……石敢當(いしがんどう)じゃな

本田芙蓉

魔物を立ち入らせんようにする魔除け石じゃ

本田芙蓉

囲んでおるということは、内側になにかあるようじゃな

本田芙蓉

木片は……木札か

ポスト

じゃあここにいるのって悪霊!?

久留間悟

いや、悪い気配はないね

久留間悟

……木札と石、同時にどけるよ

久留間悟

じっちゃん、いい?

本田芙蓉

無論じゃ

木片を取り上げると同時に、石敢當の1つを蹴り退ける

するとそこから、もはや原型もわからないほど綻びた

二人分の霊が煙のように立ち上がった

久留間悟

っ!

???

やっとぅ……やっとぅやん

??

やっとぅニライカナイんかい行けいん……

言葉を発するたびに、霊体がボロボロと崩れていく

それを目にし、久留間は慌てて声をあげた

久留間悟

消える前に教えてほしい!

久留間悟

アンタら、ここの家の最後の人か!?

久留間悟

霊が見える苔はどこにある!?

久留間悟

あんたらを封じたのは誰だ!!

必要な問いだけを、早口に投げる

それをまるで夢見心地で聞いた様子で

ふたつの霊体は歌うように口を開いた

??

……苔ぇ、裏んかいあん池んかい

??

わきゃー封じたんのー、わぬくぉ

???

イ、ヨシトミ

???

……スナモリ、ヨシトミ

久留間悟

……スナモリ?

久留間悟

あっ……!!

本田芙蓉

……逝ってしまわれた

本田芙蓉

封じられてから、ずっと助けを求め続け

本田芙蓉

魂をすり減らしてしまったんじゃな

久留間悟

わぬくぉって、なんだろ

本田芙蓉

我が子、じゃろうな

ポスト

じゃあ自殺した跡取りってやつ?

ポスト

なんでそんなこと

久留間悟

そんなの知るわけないだろ

久留間悟

それより……

久留間悟

さっきのスナモリって、なんだろ

本田芙蓉

まだ分からん。――が

本田芙蓉

まずは裏口の確認が先じゃろうな

カタヅケ屋霊異記【完結】

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コメント

8

ユーザー

ぴええ!!! な、なんだろう!? すっごいワクワクしてきちゃったぞ!?!? (おそらく)黒幕の名前とか出てくるとテンション上がっちゃうよね!!笑 そしてここに来て憑依!よくありそうで中々無かった! とりあえず、俺も裏口に行ってきます!!!!!

ユーザー
ユーザー

タップ数長め、読み込みの時間...... これはまた、あの合体野郎が出てきますね!!! 今度こそ拳の準備をしておきます!!!(返り討ちに遭って一瞬でこの世を去る予感)(そしてポストに成仏できるよう慰めてもらうんだわーい(( ) すなもり......すなもり? 砂守...何かを守ってる??? それとも砂盛り...盛り塩的な??? 砂杜...とも考えられますが......はて 次回も楽しみですっ!!

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