テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
紺黄@パピルスって優しすぎん?
#ファンタジー
中学3年の夏。
男子生徒A
女子生徒A
あたしが恋をした彼は、 あの夏一番キラキラと輝いていた。
男子生徒B
水泳部の県大会で優勝した彼は、 案の定のこと、校内でも 注目の的となった。
みんなに優しくて、 女の子にも人気があって。
でも、あたしが彼を好きになったのはもっと前のこと。
真冬
スマートフォンの地図を頼りに、 キョロキョロと辺りを見回した。
ド田舎だけに明かりも少ない。
山道は雨でも降ったら、土砂が崩れてきそうなくらい、足場も悪い。
真冬
半信半疑、といったところ。 暗いし怖いし何か出そうだし…
それでもあたしは、歩みを進めた。
真冬
それは──中学3年の春だった。
春なのに、 季節外れの雪が降ったあの日。
よりにもよって寝坊。 でも、急がなきゃ。
外は既に積もるほどの雪の中。 転ばないように、でもなるべく 早歩きで学校へ向かう。
やっと校門が見えてきて、なんとか間に合いそうだとホッとした。
その時。
最後の最後に気を抜いたせいか、 ズルッ!と滑って、あたしは 尻餅をついてしまった。
ジンジンと痛む手やお尻。
雪を払って起き上がろうとしたところで、やっと周囲に気づく。
女子生徒B
男子生徒C
クスクスと笑って、 通り過ぎてく生徒たちの姿。
あたしは今すぐこの場から消えちゃいたいほど恥ずかしくて、俯いた。
そんな時──。
俯くあたしの目の前に 差し伸べられた、大きな手の平。
目で声の主を辿ると、そこには端正な顔立ちをした黒髪の男の子が立っていた。
真冬(中学3年)
羞恥心のあまり、あたしは 消え入るような小さな声で、 それしか答えられなかった。
それでもあたしを立たせるため、 彼は無言で引き寄せた。
……が。
真冬(中学3年)
唐突だったため、立ち上がるどころか今度は彼の方に向かって倒れ込んでしまった。
しかも、彼を巻き込んで…。
真冬(中学3年)
──キーンコーンカーンコーン…
終わった。いろんな意味で。
遅刻と同時に、彼にまで 迷惑をかけてしまうなんて。
でも、ガックシと 肩を落とすあたしとは違い。
真冬(中学3年)
彼は大声で笑い出した。
どうしてか、わかんないけど 釣られてあたしも笑った。
それだけで、あなたのお陰で 救われたってこと、 彼は知っていただろうか。
男性教員A
遠くから先生の声が聞こえた。
思えば、あたしはこの頃から 彼を目で追うようになってた。
優しくて、無邪気な笑顔で 笑う彼のことを、 あたしは 【名護 迅(なご はやて)】を、
好きになっていたんだ。
時は同じくして。 イルミネーションの下、恋人と腕を組む紗耶のもとに電話が鳴る。
紗耶
《📞着信:名護 迅》
あまりに珍しい人物からの着信に、 紗耶は思わず二度見した。
紗耶
名護 迅
紗耶
懐かしい声が耳を掠めた。 この心地良い声は本当にあいつだ。
名護 迅
紗耶からしてみれば彼氏以外は 褒めたくない。 まあ、心の中だけだし、 こいつに限っては仕方ないのだ。
LINEじゃないところも名護らしい。
紗耶
LINEが主流になる前に、 名護は引っ越したからだ。
紗耶
名護 迅
被せた彼の声からして、 真剣な話だとはわかった。
紗耶
名護 迅
紗耶
無意識に、はあーっ、と 溜め息を漏らしたら。
名護は察したのか、 「ごめん」と謝って、言った。
名護 迅
名護 迅
名護 迅
紗耶
なぜ、その名前が出てくるのか。
思い当たるのはたった一人、 教えたのは真冬だけ。
しかも私が知ってること自体、 どうして名護は知ってる?
だからと言って、真冬が名護に 連絡するはずないのに…。
紗耶
なんだか、説明のつかない 胸騒ぎがした。
名護 迅
真冬
もうすぐ着きそうなのに、 木の枝に髪が引っかかったり、 石につまずいたり。
相変わらず険しい道が続いた。
真冬
ヤケになりながらも、 木々をかき分けて進む。
なんとかジャングルのような 道から抜け出せた。
──その時だった。
真冬
視界いっぱいに広がる、 湖を見つけた。
真冬
一人で来たことに少し後悔する。
だけど、大きな満月が映る湖は とても幻想的で、神秘的で… あたしは一瞬にして虜になった。
そっと湖畔まで近づく。
そして見下ろすと、 揺れる月とあたしの顔。 後者はいらないんだけど…。
真冬
ブルっと肩を震わせたけど、 真冬の湖だ。 想像以上に寒い。
ふっ──…と、
真冬
本当に降ってきちゃった。
満月と、湖と、雪。 あまりにも美しい景色に心を奪われて、頭がぼぅ…っとする。
真冬
だから、あたしは気づかなかった。
真冬
滑って、地面から自分の足が 離れていくことに。
屈託のない笑顔。 手を差し伸べてくれた、 彼を思い出しながら。
真冬
落ちる、 堕ちる、 沈んでく──…
真冬
息ができなくて、苦しくて。 手を伸ばしても空気には触れられなくて、朦朧とする意識の中。
透き通る“青"が 深い“黒"に変わってく。
それが、 あたしが見た最後の景色──…。
episode.03…聖夜に舞い落ちた奇跡