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遠くから、声が聞こえる。
それも、あたしの一番 聞きたかった声だ。
真冬
重い瞼をうっすら開く。 ぼんやりと滲んで見えた彼は、 必死にこちらに向かって呼びかけていた。
やがて、少しずつ焦点が合う。
真冬
今目の前にいるのは、 あたしが一番会いたかった──
真冬
真冬
でも、実際に会ってからのこと なんて考えてなかった。
ジンクスが叶った。 ……または夢の中か、天国?
なんにせよ、いきなり謝るの おかしいかな……。 どうしたら不自然じゃないかな。
そんなことを考えてるあたしの意識は、既にしっかりしていた。
名護 迅
濡れた体が冷たいし、重たい。
真冬
あたしは我に返り、 バッ!と体を起こした。
真冬
上手く声が出ない。
真冬
名護 迅
大丈夫。 言葉の代わりに、 うんうんと頷いた。
だけど。
真冬
今気づいた。
真冬
名護 迅
真冬
真冬
真冬
よく見れば、見慣れない制服を着た彼もびしょ濡れ。
真冬
真冬
一瞬考えたことを 否定しては揉み消す。
真冬
名護 迅
名護 迅
彼は携帯電話を取り出した。
名護 迅
真冬
名護 迅
真冬
雪月湖に来たのは12月25日だ。
真冬
真冬
真冬
もしくは、5年前の……
真冬
名護 迅
真冬
タイムスリップなんか信じるんじゃなかった。初めて彼に怪訝そうに見つめられた。
だけど次の瞬間、彼の口からとんでもない言葉が聞こえてくる。
名護 迅
まるでタイムトラベラーみたいな発言ですね、と笑って。
真冬
真冬
真冬
名護 迅
名護くんはあたしの背中をさすって、タオルをかけてくれる。
真冬
なんとなく彼の名前を呼ぶのは 違う気がした。 にしても、名護くんだって あたしと同じくらい濡れている。
名護 迅
真冬
見覚えのある水泳バッグ。 彼が名護くんであることは間違いなさそうだ。
だけど見慣れない制服の意味に、もっと早く気づくんだった。
真冬
真冬
どうして3年前なのかが、 考えてもさっぱりわからない。
名護 迅
促されて、あたしは彼に支えてもらいながら歩いた。
真冬
真冬
真冬
目の前にいるのは知らない 名護くんみたいで、 なんだか変な感じがした。
大通りに出た。 ここでやっと、行きにどれほど自分が遠回りをしてたのかわかった。
さっきまでとは違い、明るい場所だから、彼の顔もよく見え──…
彼の方へ視線をずらした時、 あたしは少し驚いた。
真冬
しかも中学の頃より身長が伸びてて、更にかっこよくなってる。
ドキドキと胸を高鳴らせながら 自分よりもずっと高い目線にいる彼を見ていた。
すると──。
名護 迅
真冬
真冬
当たり前だが、たった3年で 別人のように変わるわけない。 わかってはいたけど…。
名護 迅
名護 迅
真冬
真冬
確実にあたしのことだ。 なのに“知り合いに似てる人"と 認識してくれたみたい。
真冬
名護 迅
真冬
この頃のあたしが別にいるかもしれないのに、迂闊に“自分"のことは言えない。
なるべく別人らしく振舞わなくちゃね。
あの頃は肩までだった黒髪。 今は腰までのロングヘア。 それに、お化粧だってしてる。
真冬
湖に落ちたんだから、 崩れてるかもしれない。 元々ナチュラルなので、 パンダにはなってないと願って。
そんなことを不安に思いながら。
あたしは、支えてくれてる名護くんの男らしい腕とか、見つめては逸らしてを繰り返していた。…と思う。
名護 迅
大通りのイルミネーションが 年末まで点灯してるからか、 どこも混んでるみたい。
名護 迅
真冬
真冬
名護 迅
名護 迅
真冬
真冬
真冬
真冬
すると、名護くんは少し考えて。
名護 迅
真冬
名護 迅
真冬
名護 迅
真冬
真冬
真冬
名護 迅
真冬
タクシーで、暫く揺られて。
彼に連れられて、 ある場所に辿り着く。
真冬
階段を上って三階の、 一番端の部屋。 表にはオートロックの鍵。
ドアの横には“305"とプレートで表記されていた。
episode.04…再び高鳴るハートは甘く