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雪月湖~Setsugetsuko~

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雪月湖~Setsugetsuko~

3 - 雪月湖~Setsugetsuko~【ep.03】

♥

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2020年05月13日

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──…ん!…さん!

遠くから、声が聞こえる。

──大丈夫ですか…!
聞こえますか…?

それも、あたしの一番 聞きたかった声だ。

真冬

(どうして…あたし)

重い瞼をうっすら開く。 ぼんやりと滲んで見えた彼は、 必死にこちらに向かって呼びかけていた。

やがて、少しずつ焦点が合う。

真冬

(……っ!)

今目の前にいるのは、 あたしが一番会いたかった──

真冬

…な、ご、く……

真冬

(と、いうことは…まさか)

でも、実際に会ってからのこと なんて考えてなかった。

ジンクスが叶った。 ……または夢の中か、天国?

なんにせよ、いきなり謝るの おかしいかな……。 どうしたら不自然じゃないかな。

そんなことを考えてるあたしの意識は、既にしっかりしていた。

名護 迅

大丈夫ですか…!

濡れた体が冷たいし、重たい。

真冬

(そ、そうだった、
あたし、湖に落ちて──!)

あたしは我に返り、 バッ!と体を起こした。

真冬

ぁ…

上手く声が出ない。

真冬

(名護くんが助けてくれたんだ…)

名護 迅

っ、よかった…
どこも怪我はありませんか?

大丈夫。 言葉の代わりに、 うんうんと頷いた。

だけど。

真冬

(──あれ?)

今気づいた。

真冬

(名護くん…どうして
敬語で喋ってるんだろ?)

名護 迅

お姉さん…?大丈夫ですか?

真冬

お、お姉さんっ!?

真冬

(あ、声出た……)

真冬

(そうだ!名護くん、なんで
ここにいるんだろう!?)

よく見れば、見慣れない制服を着た彼もびしょ濡れ。

真冬

(ん?見慣れない制服…?)

真冬

(…………。いや、まさか)

一瞬考えたことを 否定しては揉み消す。

真冬

あ、あの…今日の日付け、
わかりますか?

名護 迅

……え?

名護 迅

はい。待ってください、

彼は携帯電話を取り出した。

名護 迅

ええと、28日です

真冬

12月ですか?

名護 迅

? はい

真冬

(12月28日…)

雪月湖に来たのは12月25日だ。

真冬

(3日後…なはずないよね。)

真冬

(じゃあ彼が嘘ついてる?
いやいや。そんなはずも)

真冬

(じ、じゃああたし…
死んだっ!?!?)

もしくは、5年前の……

真冬

…今、201X年ですか?

名護 迅

は…?

真冬

(ぅ、違ったみたい…)

タイムスリップなんか信じるんじゃなかった。初めて彼に怪訝そうに見つめられた。

だけど次の瞬間、彼の口からとんでもない言葉が聞こえてくる。

名護 迅

大丈夫ですか、201Z年ですよ

まるでタイムトラベラーみたいな発言ですね、と笑って。

真冬

(201Z年って)

真冬

(えっ、3年前──…?)

真冬

…っ!ゲホッ、ゴホッ!!

名護 迅

! 大丈夫ですか!?

名護くんはあたしの背中をさすって、タオルをかけてくれる。

真冬

名…、あなただって濡れてるのに

なんとなく彼の名前を呼ぶのは 違う気がした。 にしても、名護くんだって あたしと同じくらい濡れている。

名護 迅

えーと…
役に立ってよかった

真冬

って、このタオル…

見覚えのある水泳バッグ。 彼が名護くんであることは間違いなさそうだ。

だけど見慣れない制服の意味に、もっと早く気づくんだった。

真冬

(名護くん、この時代は高校生…)

真冬

(じゃああたし、一体どうしてタイムスリップしちゃったの!?)

どうして3年前なのかが、 考えてもさっぱりわからない。

名護 迅

それより、とにかくどこか
暖まれる場所に移動しましょう

促されて、あたしは彼に支えてもらいながら歩いた。

真冬

(…手、引っ張らなくなったんだ)

真冬

(それも…そっか)

真冬

(あたしのこと、
気づいてないみたい)

目の前にいるのは知らない 名護くんみたいで、 なんだか変な感じがした。

大通りに出た。 ここでやっと、行きにどれほど自分が遠回りをしてたのかわかった。

さっきまでとは違い、明るい場所だから、彼の顔もよく見え──…

彼の方へ視線をずらした時、 あたしは少し驚いた。

真冬

(名護くん、茶髪だ…!)

しかも中学の頃より身長が伸びてて、更にかっこよくなってる。

ドキドキと胸を高鳴らせながら 自分よりもずっと高い目線にいる彼を見ていた。

すると──。

名護 迅

…綾瀬?

真冬

えっ…?

真冬

(どうしよう、バレた!?)

当たり前だが、たった3年で 別人のように変わるわけない。 わかってはいたけど…。

名護 迅

や…すみません。

名護 迅

暗い場所じゃわかんなったけど、すごく知り合いに似てたので

真冬

…そ……そうですか

真冬

(……あれっ?)

確実にあたしのことだ。 なのに“知り合いに似てる人"と 認識してくれたみたい。

真冬

…意外と天然?

名護 迅

え?

真冬

あ!い、いえ…

この頃のあたしが別にいるかもしれないのに、迂闊に“自分"のことは言えない。

なるべく別人らしく振舞わなくちゃね。

あの頃は肩までだった黒髪。 今は腰までのロングヘア。 それに、お化粧だってしてる。

真冬

(ってメイク大丈夫かな!?)

湖に落ちたんだから、 崩れてるかもしれない。 元々ナチュラルなので、 パンダにはなってないと願って。

そんなことを不安に思いながら。

あたしは、支えてくれてる名護くんの男らしい腕とか、見つめては逸らしてを繰り返していた。…と思う。

名護 迅

すみません。歩かせたのに

大通りのイルミネーションが 年末まで点灯してるからか、 どこも混んでるみたい。

名護 迅

お姉さん、家は?送ります

真冬

家!?

真冬

(考えろ、考えるんだ真冬…!)

名護 迅

名護 迅

まさか、帰れない事情でも?

真冬

…そ、そうそうそれ!

真冬

実は…家出してきたというか…

真冬

深い深い事情があって
帰れないといいますか…

真冬

(苦しい)

すると、名護くんは少し考えて。

名護 迅

わかりました

真冬

…?

名護 迅

とりあえず、乗ってください

真冬

?? あ、はい…

名護 迅

俺の家でも大丈夫ですか?

真冬

え!?

真冬

(名護くんの家って…)

真冬

迷惑じゃないかな?いきなり…

名護 迅

いや、こっちは全然

真冬

じゃ、じゃあ…お願いします

タクシーで、暫く揺られて。

彼に連れられて、 ある場所に辿り着く。

真冬

(ここが…?)

階段を上って三階の、 一番端の部屋。 表にはオートロックの鍵。

ドアの横には“305"とプレートで表記されていた。

episode.04…再び高鳴るハートは甘く

雪月湖~Setsugetsuko~

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