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優真さんは押収された手錠の還付請求をしていた
そうして返却された手錠を
井川あすみ
あすみさんに手渡していた
その手錠を嵌めるようになってから
あすみさんが不安定になることはなくなり
夜中に暴れることもなくなった
片方しか嵌めていないのは
一緒に過ごした三ヶ月の間
優真さんがもう片方を着けていたから
彼女にとってはどんな安定剤よりも効果のある
お守りのような存在だった
かすみさんと静(じん)さん、悟志さんの裁判のため
検察官はあすみさんに裁判所への出廷を求めたが
まだ動ける状態ではないこと主治医が主張し
供述調書を作成し証拠とすることに同意する形で
あすみさんは出廷しないことになった
梶原智香
梶原智香
芹沢大和
芹沢大和
供述調書には
虐待が始まってから優真さんに拉致されるまでと
警察に見つかって家に戻ってからのことが全て記録されていた
所々、記憶が曖昧な部分もあったようだが
かすみさんからの大まかな虐待の様子と静(じん)さんの猛攻
見て見ぬふりを続けた悟志さんの非情な態度
それら全てが記録されていた
そこには優真さんへの想いも綴られていて
監禁の容疑で勾留されていた優真さんを助けるため
あすみさんは虐待の事実を一切、口外しないと言う条件を飲み
かすみさんが訴えを取り下げたことなども記されていた
その後
あすみさんへの虐待は激化し
優真さんが三ヶ月かけて治療した腕や身体に新たな傷ができ
部屋の鍵は常に施錠され
トイレやお風呂に行くことも許されなくなり
もうこのまま……
と言う言葉が何度も頭を駆け巡った
既に抵抗する力もなくなり
声を出すこともできず
そして徐々に
何かを考えることもできなくなっていき
助けに来た優真さんの姿も
幻を見ていると思ったほどだった
その後、意識を失い
目が覚めた時、感じた優真さんの手の温もりに
自分が助かったのだと認識をした
あすみさんは最後まで静さんの想いに気づくことはなかった
静さんがあすみさんを心から愛し
あすみさんの心を奪った優真さんに嫉妬していたことも
あすみさんを守るために避妊具を使っていたことも
むしろ自分は静さんに嫌われていると思っていた
梶原智香
梶原智香
それは違う
あすみさんは悪くない
悪いのは静さんに虐待を強要したかすみさんだ
静さんはかすみさんに脅されていた
妹を助けたければ傷つけろと命令され
必死に守ろうとした
結果的には法の裁きを受けることになってしまったが
静さんは本当は優しい心の持ち主なのだ
ただ方法を間違えてしまっただけ
静さんがもう少しだけ強気になれれば
勇気を出すことができれば
違う形であすみさんを救うことができたはず
裁判で検察官の言ったことは正しい
もう高校生なのだから
自力で止めることもできたはず
それができなかったのは
それまでずっとあすみさんを守ってきたはずのかすみさんが
急に態度を翻し攻撃する側にまわってしまい
下手に刺激したら何をするか予測できなくなったからだ
芹沢大和
沢田マリカ
梶原智香
静さんはきちんと反省して罪を償うと言っている
静さんはまだ未成年だし
あまり重い刑罰を受けないよう祈るばかりだ