涼雅
嘘が上手い……。

鈴花
伊勢崎くん、どうしたの?

鈴花
難しい顔して。

涼雅
え?ああ、いや……。

涼雅
……小景さん、やっぱり嘘ついてたのかなって。

鈴花
え?

涼雅
阿久津先生は、小景さんは嘘が上手い子だって言ってた。

鈴花
でも、小景ちゃんってそんな嘘つくような子だったっけ?

郁斗
いや、むしろ裏表のない正直者って感じだったろ。

確かに、小景さんはいつも明るくて、誰にでも優しくて、何より裏表がないように見えた。
涼雅
……“本当の気持ち”を隠すのが上手だった、ってことかもしれない。

鈴花
本当の気持ち……。

郁斗
まさか、無理してたってことか?

涼雅
阿久津先生も言ってたよな。

涼雅
「全部を背負う必要はない」って。

郁斗
でも、そう言われてもやめなかったんだろ?

郁斗
だったら、どうしようもないじゃん。

涼雅
……いや、本当はやめたかったのかもしれない。

鈴花
え?

涼雅
でも、やめられなかった。

涼雅
“やめたくない”って言ってたのも嘘だったかもしれない。

小景さんが文化祭に向けて一生懸命だったのは、みんなが知っている。
だけど、それが“楽しい”からなのか、それとも……。
涼雅
……“やらなきゃいけなかった”から、なのか。

鈴花
そんな……。

郁斗
でもさ、それだと何でそんなに頑張ってたのかって話になるよな。

涼雅
……それを知るには、もっと話を聞くしかない。

郁斗
誰に?

涼雅
……久我知樹ークガ トモキー。

鈴花
え、知樹くんって……生徒会長だった?

涼雅
ああ。

涼雅
小景さんとも関わりが深かったはず。

郁斗
確かに、話を聞く価値はありそうだな。

そして、俺たちは次の手がかりを求めて、知樹くんの元へ向かうことにした。