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アルミ
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#カントリーヒューマンズ
ねがてぃぶろっこりー
1,195
日帝
日帝
視界に無数の木目が入った。
日帝
上体を起こし、隣の布団を見る。
すでに布団の膨らみは無くなっており、シーツのシワが目立つ。
アメリカ
日帝
出かかったあくびを噛み殺し、半開きの目でサングラスを見る。
日帝
朝日が眩しい。またぐっすり眠ってしまっていた。
枕元に置いてあるデジタル時計を見る。
7時13分。
日帝
いつもなら稽古に励んでいるはずの時間帯に、一気に覚醒する。
布団から這い出ると、朝特有の温かさが逃げていった。
焦らなければならない理由は無い。
自主的に取り組んでいるものだったから、他人に迷惑はかからない。
それでも……稽古の時間を伸ばすためには、 6時から7時30分までの間の時間は大切だった。
その時間を見ると、クセで布団から出てしまうのだ。
アメリカ
相変わらず支離滅裂とした事を言いながら……
その手にたくさんの最中を抱えている。
日帝
ズドドドドドドドドドドドド
アメリカ
目玉を限界まで開けた中学3年生男子の高速ハイハイ。
アメリカ
すぐそばまで行き、最中を5個受け取って正座した。
日帝
包み紙をペリペリとゆっくり剥がし、半分食べた。
日帝
家で何度も食べた味だけれど、朝に食べるのは初めてかもしれない。
パリパリの生地に包まれているつぶあんと柔らかい餅。
やっぱりこの味だ。家の和室を思い出す。
アメリカ
また変なことをほざいている。
……いや……それにしては声が安定している。
少しだけそのズレが引っかかった。
日帝
アメリカは最中から顔を上げ、うーんと唸った。
その間に、最中の残りの半分を口に放り込む。
アメリカ
日帝
最中の餅を噛む口が止まった。
日帝
もぐもぐと咀嚼を再開するも、味があまりしない。
「食べたことなかった」?
お菓子を?
冗談か……?
いや……こいつは、冗談を言う時はヘラヘラ笑っている。
今は……安定した笑顔だ。
アメリカ
味のしない最中を飲み込んだ。
日帝
触れていいのか分からず、曖昧に誤魔化した。
アメリカ
アメリカはそう言って笑い、次の最中を口に入れる。
その笑顔を一瞬だけ盗み見た。
目元が覆われていて、顔の変化なんて分からない。
俺は、こいつを分かった気になっていたのかもしれない。
でも、出会ってから1週間も経っていない仲だ。
こいつの事なんて分かるはずもなかった。
それ以降食べたお菓子は、味も風味もほとんど失せていた。
3日目 午前9時27分
日帝
アメリカ
俺の急な提案に、にぱっと笑って了承した。
反論も何もせずすぐに受け入れてくれる。
クラスでも慕われていることだろう。
実際、鍵は絶対に重要なヒントだ。
解放されていない場所に行く唯一の手段なのだから。
日帝
前も思って、結局諦めたけれど……
片っ端から探索するのは非効率だ。
ヒントの有無を見分ける印があれば楽だろうな……
アメリカ
日帝
足元を見ながら、そう小さくつぶやく。
日帝
アメリカ
アメリカの口がぽかんと開く。
アメリカ
日帝
アメリカの方に向いた。
日帝
アメリカ
日帝
ドアの色という言葉に、アメリカの背筋が伸びた。
アメリカ
日帝
アメリカは大きく2回頷いた。
アメリカ
アメリカ
拳を胸の前でぐっと握りしめ、こちらを見る。
嘘はついていなさそうだ。
日帝
アメリカ
口角が上がったまま凍りついた。
アメリカ
アメリカ
日帝
俺が見つけたT字の棒の部屋は……
ドアがベージュ、ドアノブがネイビー。
つまり……。
日帝
アメリカ
アメリカがぱちりと目を開いた気がした。
アメリカ
日帝
確か、昨日鍵が見つかった部屋は……
ドアが茶色、ドアノブが青緑。
これらの部屋はすべて…… ドアとドアノブの色が反対色になっている。
日帝
2日間、ずっと欲しかった情報が手に入った。
アメリカ
日帝
自然と口角が上がる。
日帝
アメリカ
……こいつには色相環の勉強が必要だ。
小学生か……と呆れながら、階段を上っていった。
3日目 午前11時07分
機械音声
機械音声
3日目 午前11時25分
日帝
アメリカ
アメリカ
日帝
狭い物置部屋の箱を、端から開けていく。
大きい上に、たくさん白紙が入った段ボール箱。
5箱は開けただろうが……攻略のヒントは中々見つからない。
歩いている途中に条件に合うドアがあったから、 調べる方向に進んだが……
良かったんだろうか……
日帝
紙をすべて出し、箱の底を覗き込む。
……何も無い。
1つの箱を調べ終え、また次の箱に移る。
疲れるけど、いつか誰かがやらなければならないものだ。
ここでやり遂げたい。
アメリカ
アメリカ
飽きないでくれ……本当に。
……でも、ドアを見ただけで攻略のヒントがあるかどうか 見分けることができるようになった。
一日に集められるヒントの量も増える。
とても効率的だ。
ドアの法則を知らなかった場合、 ヒントが得られない日があってもおかしくないから。
日帝
……どうしたものか……
何も見つからない……
空になった箱を潰し、次の箱に移った。
ゆるく貼られたガムテープをビリビリと剥がし、箱を開ける。
日帝
初めて白紙以外のものが出てきた。
日帝
アメリカ
ついに!?と言った様子で飛びついてきた。
紙ではあるが……
これは明らかに、この建物のマップだ。
日帝
紙一面に色々な形が記されており、外の様子は書かれていない。
……外の存在など無い、と言うように。
アメリカ
……出られない、か。
日帝
最初に探索した子供部屋が記されている。
日帝
爪で印をつける。
日帝
日帝
裏面にも載っている。
裏の紙を見て、廊下をたどる。
たどり着いたのは、一番狭くて細長い部屋。
日帝
アメリカ
日帝
……そして……。
日帝
一番端の部屋に、鍵穴マークが小さく記されている。
日帝
ここからそう遠くなさそうだ。
ここの部屋はこれだけだろうか。
日帝
もうここの部屋にヒントは無い、ということだ。
アメリカ
アメリカはもう立ち上がっている。
よほど暇だったんだろう。
俺も伸びをしながら立ち上がった。
日帝
アメリカ
ドアノブに手をかけているところだった。
その姿が……一瞬だけ、懐かしい残像と重なった。
無邪気なあの顔が、鮮やかに蘇る。
ドアに向かう足が止まった。
日帝
手を強く握りしめる。
息を吐いてから、また歩き出す。
……もう二度と、見失いませんように。
3日目 午後1時51分
機械音声
機械音声
3日目 午後2時11分
日帝
カーテンやソファ、ガラスの机。
すべてきっちりと揃えており、無駄な物が無い。
ホテルの一室、といった感じだ。
アメリカ
アメリカがあたりを見回す。
確かにドアらしい物はない。
でも、鍵穴マークがあるこの部屋は、マップの一番端にあった。
どこかに道が繋がっていてもおかしくない。
ドアが隠されているのかもしれない。
日帝
日帝
カーテンの中央をつまみ、端に向かって引く。
シャッ、と小気味よい音とともに、カーテンが開いた。
アメリカ
日帝
カーテンの向こうにあったのは……窓でもビル群でもない。
ドアだった。
ドアノブの上に、しっかりと小さな鍵穴がある。
アメリカの視線が、俺とドアとを2度行き来した。
アメリカ
きょとんとしながらも、アメリカはポケットから鍵を取り出した。
銀色で、持ち手が錆びた細長い鍵。
それを鍵穴に入れ、ひねった。
カチャッ
聞き慣れた音がした。
日帝
アメリカ
アメリカがドアノブに手をかけ、ドアを外側に軽く押した。
……そこは、
美しいほどに古びた、何も無い廊下だった。
薄暗くて、廊下に終わりが無い。
冷たい照明と生温かい空気に吐いてしまいそうだ。
日帝
アメリカ
アメリカ
日帝
アメリカはサングラスを外した。
整った切れ長の蒼目が露わになる。
そういえば、ちゃんと目を見るのは初めてだったか。
……サングラスをわざわざポケットにしまっている。
かけたまま上にずらせば、またすぐにつけられるのに……
非効率なやつ。
日帝
この廊下に入った事は良いものの、廊下にはドアがたくさんある。
とりあえず手前の部屋から入ろう。
一番近い部屋の方に歩き、ドアの前に立った。
金属製の持ち手を握り、ドアを引く。
……が、ドアは開かなかった。
日帝
アメリカ
押しても引いても開かない。
アメリカ
日帝
内側からしか開けられないのだろうか。
さっき開けたドアみたいに、 内側から鍵を使えば開くかもしれない。
内側の人間に連絡する手段が無いから、 俺達は待つことしかできないが……。
日帝
日帝
アメリカ
アメリカは少し難しい顔をしてから…… マップを取り出した。
アメリカ
日帝
マップを広げ、視線で一つ一つの部屋をたどっている。
アメリカ
アメリカ
俺とアメリカがいる建物は、探索できていないだけで全部で7Fある。
アメリカ
廊下の先を見る。
同じようなドアが……数十個以上。 終わりが見えないから、その倍はあるだろう。
500人いるから当然の数だ。
透き通った蒼い瞳がこちらを見る。
アメリカ
日帝
その言葉に、異論も何も出なかった。
全くの正論であり、事実だったからだ。
1つのフロアだけでもかなり広いのに、
7Fまである。
さらにそれが数十個以上。
ここから出られるまで、どれくらいかかるんだろうか。
気が遠くなる。
1つの県くらい大きな範囲を、隅から隅まで探索して、
ヒントかどうかを見極めながら攻略して、
500人全員で脱出する。
半年で済む話ではないだろう。
日帝
一気にやるべき事が重くのしかかる。
……やらなければ。
「生徒会長」としても、「大日本帝国」としても。
もう……あの日を繰り返さないためにも。
両手が無意識に固く握られる。
やるべき事の重圧に押し潰されそうだ。
あまりにもゴールが遠すぎる。
たどり着くことができるのかさえ曖昧で、
努力の意味があるのか分からないのに、
怪物や妨害者が行く手を阻む中、
生徒の安全に気を配りながら、
規格外の範囲を完璧に探索しながら、
気を狂わさずに進む。
ここから出たい
何ヶ月かかるかも分からないこのゲームから
抜け出したい
ここから
出してくれ
パキッ
日帝
ガラスが割れるような音。
アメリカ
アメリカ
アメリカ
名前を呼ばれながら、右手首を強く掴まれた。
意識がふわふわと浮いている。
どこか遠い視界の中、自分の右手がぼんやりと見えた。
日帝
指先が、黒くなっていた。
日帝
「負の感情が高まると、怪物になる」
日帝
落ち着け……
落ち着け……っ
日帝
日帝が目を閉じた。
冷や汗が止まらず、体が強張っている。呼吸が荒い。
指先からの黒い侵食は止まらない。
アメリカ
日帝の両手を握った。
白くて冷たくて……震えている。
引き金は俺の話だろうけど、さっきは本当にこれまで通りだった。
何か思い詰めているのかもしれない。
……いや、それは当たり前だろう。
日帝は、生徒会長だ。
どこにいるのかも分からない生徒の安全に気を配らなければならない。
先生がいない今、 生徒に何かあった場合に真っ先に責められるのは生徒会長だ。
その責任の重さなんて想像もできない。
アメリカ
握る力を少し強めた。
アメリカ
苦しい人を1人にしない。
頼れない人には自分が手を差し伸べたい。
人の痛みに気づける俺でありたい。
……そう決めたんだろ。
日帝
日帝がうっすらと目を開けた。
手の震えは小さくなってきた。
指先の黒い侵食は、さっきより小さくなっている。
……良かった。 完全に怪物にならなければ、なりかけても戻っていくらしい。
すっと口角を上げ、日帝を見る。
ふわりととまる蝶ほど小さな力で、握り返された。
日帝
少しだけ、肩の力が抜けたようだ。
ほおが緩んでいるような気もする。
アメリカ
アメリカ
日帝は目をパチパチさせてから、ゆるく微笑んだ。
日帝
普段の真面目さからは想像もできないほど、柔らかい声だった。
……日帝は真面目すぎる。
探索をしているときより、今の方がずっと楽そうにしている。
この状況によほど緊張していたんだろう。
ある意味、俺はこいつの心を守る役目を持ったのかもしれない。
日帝は効率厨だから……
日帝が仕事で無理しすぎないようにそばで見守って、 仕事を手助けする役目。
アメリカ
そう言って、日帝の手を引く。
今はここにいない方がいい。
話が長引いたら、また思い出すかもしれないから。
たくさんお菓子食べて、ぐっすり寝てもらいたい。
頭の中にマップを広げ、今日起きた和室へのルートを浮かべる。
元来た道を小走りで進んでいった。
3日目 午後10時02分
日帝
消灯してから30分ほどが経つ。
目を閉じているが、眠気は全く無い。
さっきの話が頭から離れない。
1つのフロアだけでもあの大きさなのに……
俺達が探索している建物は、全部で7Fまである。
……その建物が、数十個以上。
まだ見られていないドアもあるだろう。
……本当に、やり切れるんだろうか。
怪物は一定のペースで増えていく。
妨害者はヒントを得ていく。
妨害者が誰なのか分からない今、 誰が敵なのか疑いあってしまう。
敵がたくさんいるのに。
……いや……呑み込まれるな。
今は休息を取らなければ。
またさっきみたいになったら、もう戻れない気がする。
肩の力を抜き、布団の中の温度に集中する。
意識がゆっくりと沈んでいく。
抱えきれないほどの大きな不安を無理やり押し込んで……
泥のような眠りについた。
3日目 午後11時42分
機械音声
機械音声
コメント
3件
めっちゃ楽しみです!なんかすごい書くのが上手い (語彙力無)
第5話、読了しました……! 朝の最中エピソード、アメリカくんが「食べたことなかった」って言ったところで一瞬空気が止まったの、すごく気になりました。なんか彼、普通じゃない背景がありそうでゾワッとしますね。 それからドアの色とドアノブの色の法則——反対色の組み合わせがヒント部屋って発想、めっちゃスマートだと思いました。日帝くんの冷静な推理力が光ってます。 そして後半。彼の指先が黒くなるところ、ほんとに怖かった……。「負の感情が高まると怪物になる」ってシステムがあるの、突然ルールが示されて心臓にきました。アメリカくんが手を握って「俺いるから」って言ったの、すごく優しくてじんわりしました。あの二人の関係、少しずつ深まってて良いです。 それにしても500人、7フロア、数十棟……脱出までどれだけかかるんだろうって考えると、気が遠くなりますね。日帝くんの疲れとか責任の重さがひしひし伝わってきて、胸が締め付けられました。次も読みます。更新楽しみにしてます🖤