人を好きになると
時として周りが見えなくなることがある
良識のある大人であれば
節度をわきまえて相手に接することができるが
たまにそれができなくてトラブルになるケースもある
大人でもこのようなトラブルがあるのだから
子供にだってこのようなトラブルが起きる可能性は十分あり得る
同級生の畑中之裕は
野球部の主将を務める真面目な男だった
教師からの厚い信頼もあったが
女性に対しての免疫が殆どなかったのだろう
高校一年の冬のある日
私はたまたま帰りが一緒になった畑中と
同級生の本橋郁夫と三人で電車に乗っていた
学校の最寄りの駅から三駅
畑中と郁夫はその駅で降りるが
私の地元は更に三駅先にあった
時間にすればわずか12分
でもその12分間、一人でいるのは退屈だった
アラ子
そんなことを思った直後
突然、畑中が私にこう告げた
畑中之裕
アラ子
突然のことに困惑
郁夫も焦っている様子だった
だが畑中の真の目的は
畑中之裕
これだった
自分の告白のために郁夫を利用したのだ
恋愛経験のなかった私はただただ戸惑うばかりで
二人が電車を降りてからも変なドキドキが止まらなかった
そんな電車での告白から二日後
畑中に声をかけられた
畑中之裕
畑中之裕
アラ子
正直、私は返答に困った
でもその後
色々あって私は別の男子と付き合うことになり
そこから約一年間
その男に振り回されながらも付き合い続け
最後は私の方から別れを切り出した
アラ子
そんな気持ちを抱えながら
迎えた修学旅行
私が別れてフリーになったからなのか
畑中はとにかくしつこく接してきた
畑中之裕
アラ子
畑中之裕
最初に泊まった宿泊施設の廊下で手招きをする畑中
何か用事でもあるのか?と付いていくと
アラ子
行きなり腕を捕まれ引き込まれ
畑中に抱きつかれていた
アラ子
正直全然、嬉しくもないバグ
アラ子
畑中之裕
アラ子
アラ子
何とか抵抗して自分の部屋に逃げ帰る
その後も畑中は幾度となく私に手招きをした
仲いい利秀や英樹のいる部屋に行きたいのだが
そこに行くには畑中の部屋の前を通らなければいけなくて
通る度に手招きをしてくる
無視して通り過ぎようとしても
強引に腕を引っ張られる時もあり
仕方なく利秀達の部屋に行くのを諦めたこともあった
宿泊施設で三泊した後
今度はホテルに二泊する予定になっていた
宿泊施設では大部屋だったが
ホテルの部屋は二人部屋で
仲のいい女子と二人で語り明かし
恋バナに花を咲かせたりもした
しかし
ホテルに到着してから畑中の行動は更にエスカレート
自分の部屋から私の部屋に電話をかけてきて
アラ子
畑中之裕
毎回、同じ言葉を繰り返した
アラ子
私はその都度、何も言わずに電話を切ったが
しばらくするとまたかけてくるしつこさにため息が出ていた
同室の子が買い物に出掛け
私は隣の部屋の麻美を呼んで話していた
しばらくするとインターホンが鳴り
アラ子
そう思ってドアを開けると……
アラ子
畑中之裕
畑中が私の部屋までやってきた
アラ子
正直、私はかなりドン引きしていた
しかも畑中はズカズカと部屋の中にまで入ってきて
また私のことを抱きしめようとする
アラ子
アラ子
何を言っても答えない畑中
麻美は驚いた顔で私の方を見ている
アラ子
アラ子
麻美を隣の部屋に帰し
部屋の鍵を閉めてエレベーターに乗った
そこではなぜか大人しい畑中
アラ子
唯一、部屋番号を知っていた利秀と英樹の部屋へと向かう
ピンポーン
吉村利秀
利秀の声がしてドアを開けると
利秀と英樹がカードゲームをしていた
吉村利秀
アラ子
井口英樹
正直、私はルールも何もわからなかったけど
とにかくそっちに話を持っていって畑中を避けた
しばらくして諦めたのか
何も言わずに部屋を出ていく畑中
アラ子
井口英樹
吉村利秀
アラ子
言いかけたところで電話が鳴る
吉村利秀
アラ子
電話の相手を驚かせるつもりで
私は利秀達の部屋の受話器を取った
アラ子
畑中之裕
アラ子
アラ子
吉村利秀
アラ子
利秀に受話器を渡し自分の部屋に戻った
すると再び電話が鳴る……
畑中之裕
案の定、畑中からだった
アラ子
そう言ってガチャ切り
それ以降、電話が鳴ることはなかったが
また鳴るかもしれないと思うとどうも落ち着かない……
その後は別の男子の部屋に逃げ込み
ことの顛末をぶちまけた
励ましの言葉をもらい元気にはなったが
修学旅行が終わってからも
帰りの電車で近づいてきたり
畑中の行動はあきらかにおかしくなっていた
実は修学旅行の班を決める時
既に畑中を警戒していた私は
利秀や英樹達と自由行動をしたかったのだが
畑中がメンバーに加わることになったためその班を抜けた
私のことがそれだけ好きだったのかもしれないが
一方的に抱きしめようとする行為は迷惑でしかない
今後二度と、女性に対してそのようなことをしないで欲しい
そう思った出来事だった
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