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主。

みなさんこんにちはっ!!

主。

こちら、『太陽が沈む、その前に。』の第二話となりますっ

主。

注意事項等はプロローグ参照

主。

それでは、いってらしゃいませ!!

Atと海岸で出会った次の日、オレはいつも通り学校に行って、 クラスメイトに隠された体操着を見つけてから席に着く

すると、正論を振りかざす大人の代表例とも言える担任の教師が 見覚えのない生徒を1人連れて教室に入ってきた

途端教室がザワザワと騒ぎ始めて女子からは すごい、あの子超イケメン、という黄色い声が上がる

Mz

(なんていうか、モテそうなやつ典型例だな、、、)

Mz

(てゆーか、この時期に転校生って変なの、、、)

オレが転校生についてそう考えながらぼーっと眺めていると、 担任は教卓の前に立ちクラス全体に声をかける

担任

よーしお前ら席につけー

クラスメイト

先生、その子転校生ですか?

担任

そーだぞ

担任

それじゃあPr、自己紹介してもらってもいいか?

Pr

はいっ!!

Pr

Prって言います、大阪から来ました!!

Pr

好きなことはゲームとバスケです!!

Pr

新しい学校でちょっと不安やから、友達欲しいなって思っとります!!

Mz

(見るからに陽キャだ、、、)

担任

それじゃあPrの席はー、、、

先生は教室の中の唯一の空いた席であるオレの隣に目をやって Prに見るからに哀れな目線を送る

Mz

(まあ、そうなるよな、、、)

担任からすらも冤罪で信用してもらえないということを目の当たりにして ズキズキと心が痛くなっているオレになんか気がつかないで、 彼はPrを気遣うように続けた

担任

どうしてもあいつの隣だな、可哀想に

担任

Mzってのはあいつのことだ、何かされたらすぐ報告しろよ

Pr

え、わかりました、、、?

Mz

(面倒臭いことになる予感しかしない、、、)

Prと名乗った転校生は、キラキラした笑顔を振り撒きながらオレに話しかける

Pr

Mzって言うんや、よろしくな!!

Mz

お、おう、、、

クラスメイト

何あいつ、転校生に感じワルーイ

クラスメイト

自分と違って人気者になりそうだから嫉妬してるんじゃね?w

クラスメイト

そーゆーことかあ、
まああんなことしたんだから当たり前だよねwww

Mz

(お前らがやった自作自演のくせに、、、)

やっぱり生きていても面倒臭いことしかないということを改めて感じたが、 自分はAtと話す時間が欲しくて少し死期を先延ばしにしただけなので、 周りがどう言おうと結局結末は変わらないということを思い出した

Pr

なあなあMz、俺学校の校内図とか全然わからんから、
このあと案内してくれん、?

Mz

お前のこと案内したがってるやつならいっぱいいるし、
わざわざオレに頼む必要ないと思うけど、、、

こんな人気者を案内しようものならさらに反感を買いそうなので オレがそう返すと、Prは少し困ったように続けた

Pr

ごめん、実は俺女の子があまり得意やなくて、、、

Mz

……あー、なるほど

彼の言葉に嘘はなさそうであるし、他の男子に頼んだところで うちのクラスの肉食系女子がついていかないわけがないので、 オレに頼めば比較的平和に学校の教室を 把握できるかもしれないということなのだろう

Mz

(まあ、こいつ本気で困ってるみたいだし今更反感を買ったところで
どーせ死ぬんだからどうでもいいか、、、)

Mz

そういうことならわかった、オレが案内するわ

Pr

ほんま!?✨

そう言って嬉しそうに笑ったPrの顔には助かった、と でかでかと思いっきり書いてあった

Mz

(分かりやすいやつ、w)

Mz

それじゃあ、もうすぐ授業が始まるし、案内は休み時間でいい?

Pr

ええで!!ありがとう!!

約束通り、オレは昼休みにPrを連れてこの学校を案内していた

教室を出る時にクラスメイト全員からグサグサと突き刺された 視線が非常に居心地が悪く今後自分がどうなるかいとも容易く予想できたが、 結局死ぬ自分には関係のないことだと無視することにした

Mz

ここが購買、昼飯持ってきてないやつは大体ここで買ってる

Pr

そーなんや、じゃあ最優先で覚えておかんと、、、

Mz

食い意地張りすぎだろwww

Pr

www

彼はしばらくオレの言葉に笑っていたが、 やがて何かを思い出したかのように暗い表情に変わり、うつむいた

Pr

(そういえば、いつも食い意地張っていたあいつは
学校にいないんやった)

Mz

Pr?

Pr

あ、悪い

Pr

ちょっと嫌なこと思い出してしもーて、、、

Mz

そっか、?

下手に追求されるのはあまり気分の良いものではないということを その身を持ってよくわかっているオレは、 彼が浮かべた暗い表情の理由を尋ねることはしなかった

Mz

(誰にもつっこまれたくないことってあるしな、、、)

Pr

(……。)

しばらく校内を案内し、学校生活で必要な教室の場所を すべて案内し終えたところでオレはPrに尋ねた

Mz

一応これで必要な教室は全部だと思うけど、他に気になるとこある?

Pr

あ、じゃあ、、、図書室

Mz

あー、図書室か

Mz

オレあんまり本とか読まないからすっかり忘れてたわ、ごめん

Pr

それはええよ、俺もあんまり読まんし、、、

Mz

え?読まないのに気になんの?

Pr

えっと、それは、、、

言葉を詰まらせたPrを見て、 これは突っ込まれたくないことだったかとオレは自分の言葉を反省する

Mz

悪い、野暮だったな

Pr

え、

Mz

図書室はこっちだよ、ついてきて

Pr

(こいつは、無理に事情を聞いてきたりしないんや、、、)

Mz

Pr?図書室行かねーの?

Pr

あ、今行くわ!!

オレがPrを図書室に案内してやると、 彼はそこにある大量の蔵書を目にして目を見開いた

Pr

すごい、この学校めちゃくちゃ図書室広いやん、、、

Mz

他の学校と比べてもここは広いらしいな、知らんけど

Pr

そーなんや、、、

そう言ってPrは文庫本がたくさん並べられている棚の前まで歩いていくと、 その中のうち一つを手に取ってパラパラとめくった

Pr

うわぁ、これめちゃくちゃあいつが好きそう、!!

Pr

この本もなかなか良さそうやな

Pr

でもあの本も結構気にいるかも、、、

しばらく文庫本を物色した彼は、オレに向かってこんなことを聞いてくる

Pr

なあなあMz、ここの図書室って何冊まで本借りれんの、?

Mz

何冊だったっけ、、、

オレが必死に思い出そうとしていると、後ろから可愛らしい声がした

Tg

最大10冊だよ、期限は2週間

Tg

まあ、カウンターで延長することはできるけど、、、

スラスラと返ってきた言葉にオレが驚いて振り向くと、 そこに立っていたのは司書の先生であるTg先生だった

Pr

Mz、この人は、、、?

Mz

この学校の司書の先生だよ、Tg先生って名前

Tg

君は確かMzくんだよね、隣の子は転校生?

Pr

はいっ、今日転校してきましたっ!!

Tg

元気な子だね、本好きなの?

Pr

いや、俺が好きというより知り合いが、、、

Tg

なるほど

Tg先生はニコニコと穏やかな笑顔を浮かべながら、 Prが持っている数冊の文庫本を指差して尋ねた

Tg

それ、借りる?

Pr

いいんですか!?

Mz

いや本を借りれない図書室とか意味わかんないだろ、w

Pr

確かに、、、

オレたちの会話を聞いてTg先生は楽しそうな笑い声をあげると、 カウンターはこっちだよ、とPrを連れて行った

オレもなんとなくそれについていき、 教室と違ってそこまでうるさくない室内を見渡す

そこではみんな自分の目の前に広がる文字の世界に集中しており、 他者を害そうなんて考えているやつはきっといないに違いない

Mz

(居心地がいいな、、、)

Tg

全部で7冊だね、期限は2週間後

Tg

返却期限を延長したかったらいつでも言ってね、
予約がなければ1週間伸ばせるから

Pr

ありがとうございます!!

Prはいつも持ち歩いているらしいジャガイモの刺繍が入ったエコバックに 今しがた借りた本たちを入れると、嬉しそうにそれを抱えた

Mz

(なんでよりにもよってジャガイモの刺繍、?)

Tg

あ、そうだMzくん

Mz

どうかしましたか?

Tg先生は周りの大人たちとはちょっと違う優しい笑顔を浮かべると、 オレに向かってこんなことを言ってきた

Tg

図書室って、何も本を読むだけの場所じゃないんだよ

Mz

え、

オレの全てを見透かしているようににこりと笑ったTg先生は、こう告げた

Tg

居心地がいいと思ったなら、いつでも来ていいんだからね?

Mz

!!

Mz

でも先生、オレは、、、

Tg先生はにこりと少しだけ微笑んだ後、 それ以上は何も言わずにPrに向き直ると 何事もなかったかのように会話を続ける

Tg

それじゃあ期限は守ってね、また今度

Pr

はいっ、分かりました!!

Pr

Mz、教室戻る?それとももーちょいここにいる?

Mz

そろそろ昼休みも終わるし、教室戻ろうと思ってた

Pr

ほな一緒に戻ろ、Tg先生さよーならー!!

Tg

2人とも、またおいで

Mz

(なんか、話していて心地がいい先生だったな、、、)

Mz

(まあ、あの先生も結局オレのこと犯罪者だって思ってるんだろうけど)

Tg

(……やっぱどの時代にも、そういう子はいるよね)

Tg

(昔は、あの子もそうだったなぁ、、、)

Tg

(この前の件、見るからに証拠不十分だったし)

Tg

(今日話してみた感じだと、
そういうことをしそうな子には見えないしね)

午後の授業を終えた放課後の教室で、 みんながPrを一緒に帰るのに誘おうと奮闘する中、 当の本人はそれをわかっているのかないのかオレに声をかけてきた

Pr

Mz、一緒に帰ろー

Mz

他の奴らとも交流を深めろよ、、、

Pr

別ええもん、Mzと一緒にいるの落ち着くし

Mz

なんだそれ、クラスの嫌われ者だぞ?

Pr

他の奴らがMzのこと嫌いでも俺には関係ないやん

Pr

あ、、、でも

そこでPrは何かを思い出したように暗い表情を浮かべると、 また同じ失敗するとこやった、とボソリと言ってこう続けた

Pr

俺といたらMzが追い詰められるなら、やめるわ

Mz

そーなん?

Mz

まあオレは今更自分がどうなろうと気にしないけど

Pr

……。

Pr

でも、中途半端はなおさらよくないよな

Pr

危ないと思ったらやめるから、やっぱり一緒に帰ってもええ?

Mz

いやどっちだよwww

Mz

まーいいけど、、、

オレの返事を聞いたPrは周りの子の誘いを丁重にお断りし、 オレと一緒に昇降口に向かった

Mz

(誰かと一緒に帰るとか、久しぶりだな、、、)

Prとお互いの趣味やら何やらを共有しながら通学路を歩いていると、 昨日Atと出会った海岸に続く分かれ道に辿り着いた

Mz

(今日もAt、いるかな、、、)

Mz

あのさ、Pr

Pr

どしたん?

Mz

オレちょっとこっちに用事があるから、ここで別れるんだけど、、、

Mz

迷子にならない?大丈夫?

Pr

大丈夫やで、病院への道は把握しとるし、
迷子になったらぐー◯る先生に聞くから

Mz

なら良かった

Mz

(てゆーか、病院、、、?)

Mz

(まあいいか、多分聞かれたくないだろうし)

Pr

おん、また明日!!

Mz

うん、また明日

相手から「また明日」と言われたことにも 自分がそれに自然に「また明日」という言葉を返していることにも 1人で驚きながらオレはAtに会うために海岸に向かって歩いて行った

昨日自分が身を捨てようとした海水の近くまで歩いて行くと、 そこには昨日と同じように水に足をつけてぼーっとしているAtがいた

オレがその名をよんで彼に声をかけると、 彼は少し驚いたような様子を見せてこう言ってきた

At

あれ、Mzじゃん

At

今日も来てくれたの?

Mz

まーな

At

どうかしたの?死にたくなった?

表情ひとつ変えずにそう聞いてきたAtにこいつすごいな、なんて思いながら、 オレは別にそういうわけじゃないと否定の言葉を口にする

Mz

別に死ににきたわけじゃなくて、Atと話に来た

At

変なやつ、、、

Mz

昨日のお前もかなり変だったけどな

At

確かに、そうかもね

Atの言葉に頷きながら昨日と同じようにその隣に腰を下ろし、 靴と靴下を脱いで海水に足をひたす

At

今日のMzは少し嬉しそうだね、なんかいいことあった?

Mz

学校でオレと話してくれるやつができた

At

ほんと?

At

あの時そのまま自殺しなくて良かったね

Mz

まだそこまで思うほどではないけど、、、

Mz

また明日、って言ったからちゃんと明日も行かないとなって思った

At

それじゃあもう少しだけ生きてみるというわけだ

Mz

まあ、もし今日Prと話さなかったとしてもお前と話したいから
もうちょっとだけ生きてみるつもりだったけど

At

そう言ってくれると嬉しいよ

そこでなんとなく話題が途絶えてオレもAtも無言で遠くを見つめる

その場に沈黙が落ちるが、それは決して気まずいものではなく、 自分は自分、相手は相手、と境界をしっかり引いているだけの 互いに独立した空間がそこにあるだけだ

現実に疲弊している人間にとって、そのはっきりとした空間は とても居心地がいいもので、オレもAtもそれを壊さずに隣に座っている

と、そこでAtに聞きたいことがあったのを思い出し、オレは彼に声をかけた

Mz

あのさAt、聞きたいことがあるんだけどいい?

At

内容次第

そう即答したAtにオレは薄く笑いながら、 学校にいた時からAtに聞こうと思っていたことを聞いてみた

Mz

Atってさ、本読む?

At

……本?

At

読まないことはないけど、、、唐突にどうしたの

Mz

オレと話してくれるやつ、今日学校に来た転校生なんだけどさ

At

この時期に転校生って、、、珍しいね

Mz

オレもそう思った

Mz

それで、今日そいつに学校の中を案内した時に図書室寄ったんだけど

At

うん

Mz

その図書室、めちゃくちゃ居心地が良くて、
今度から休み時間はそこで過ごそうかなって思ってて

At

居心地がいい場所見つかったんだ、良かったね

At

それで?

Mz

どうせ図書室で過ごすなら、
久しぶりに読書でもしてみようか、って考えてるんだよね

Mz

何かおすすめの本とかある?

At

おすすめの本ねえ、、、

At

俺がよく読んでいるやつなら、いくつか教えてあげようか

Mz

まじ!?教えて

Mz

あ、でも難しすぎるのは却下で、、、

At

いや、俺もそこまで頭いいわけじゃないから
読んでるのはラノベだとかそんなんばっかだよ

Mz

それならオレでも読みやすいかも

At

そう?じゃあ教えるね

その後Atにいくつか本のタイトルを教えてもらい、 オレはそれを頑張って記憶しようと努める

Mz

覚え切れるかな、、、

At

忘れたらまた聞きにくればいいよ、いつでも教えてあげる

Mz

サンキュ、そうしてもらえると助かるわ

そこまで話したところで、オレはそろそろ太陽が沈み始めて、 夕方が終わるということに気がついた

Mz

やべ、オレそろそろ戻んないと

Mz

お前は?

At

もうちょっとだけここに残るよ

Mz

わかった、また来るわ

At

うん、待ってる

Atと再会の約束を交わしたオレは、 もう少しここに残るという彼を残して海岸をあとにして孤児院へと戻った

太陽が沈む、その前に。

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