沢田マリカ
芹沢大和
肉が腐ったかのような
生臭く酷い腐臭が部屋中に充満していた
冷房機がどこにもなく
臭いが熱気と共に襲ってくる
あまりの臭いに思わず鼻をつかむ
扉の直ぐそばに佇む少年の姿
沢田マリカ
井川静(じん)
呼び掛けに反応せず俯いたままの少年
沢田マリカ
次に私の目に飛び込んできたのは
全身に生々しい傷を負った少女の姿
両腕をベッドの柵に括られ
傷のあちこちが化膿し悪臭を放っていた
三村優真
優真さんが強烈な臭いの中を奥へと進む
三村優真
三村優真
呼び掛けに反応がない
沢田マリカ
井川静(じん)
私の言葉に反応したのか
静さんが優真さんをじっと見つめるが
優真さんはそんな視線にも気づかず
必死に彼女に呼び掛け続け
井川あすみ
三村優真
やっと彼女が反応を見せたが
とても弱く全身の力も抜けているように見えた
井川静(じん)
沢田マリカ
井川静(じん)
何かに怯えているかのような震えた声
冷房機もない蒸し暑いこの部屋で
何故か静さんは長袖を着ていた
沢田マリカ
腕をまくると
芹沢大和
静さんの腕にも無数の傷があり
一部、包帯を巻いている箇所も
傷口が膿んで汁が滲み出ていた
井川静(じん)
井川静(じん)
呟きながらその場にへたり込み
静さんは動かなくなってしまった
その間に芹沢さんも奥へと進み
ポケットから十徳ナイフを出して腕のロープを切り
優真さんと二人であすみさんを部屋の外へ
タオルのようなものがかけられていて気づかなかったが
あすみさんはショーツ以外、何も身に付けていなかった
ほぼ裸に近い状態で
この蒸し暑い部屋に監禁されていたのだ
芹沢大和
ぐったりして動けなくなっている彼女を
優真さんが抱き抱えて必死に名前を呼ぶ
目を反らしたくなるほどに酷く化膿した無数の傷
もう何日も部屋に放置されていたのか
痣だらけの身体は痩せ細り
化膿した傷のせいで腕や足は腫れ上がっている
首に残る紐で絞められたような跡が
凄惨な虐待の事実を物語っていた
直ぐに救急車を手配し
母親を足止めしている所長の元へ
そこでは母親がヒステリーを起こし
所長が必死に抵抗していた
所長の顔には爪で引っ掻いた跡があり
騒ぎを聞き付けた近所の人が集まっていたが
母親は興奮で回りが見えていないようだった
高城寛貴(所長)
沢田マリカ
井川かすみ
高城寛貴(所長)
井川かすみ
ざわざわと騒がしくなる玄関先に
一人の男性が現れる
沢田マリカ
松浦大翔(巡査)
母親の動きが止まった
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