見知らぬ少女
杜松 楓
芥子菜 未来
『体に埋め込まれた小型爆弾の起爆スイッチを、
解除するレクリエーションを行います』
引きこもり対策室室長を名乗る女、梔子 六花はそう言った。
そして実際に爆弾が埋め込まれていることが、
今、目の前で立証された。
思春期の少年の心臓を焦げたミンチにすることで。
見知らぬ少年
学ランを着た少年の、どんよりとした瞳が、
未来や楓達にギョロリと向けられる。
だが、その瞳はやがて白目を剥き、
机や椅子を巻き込んでドサリと倒れた。
芥子菜 未来
杜松 楓
芥子菜 未来
芥子菜 未来
芥子菜 未来
芥子菜 未来
梔子 六花
梔子 六花
梔子 六花
梔子 六花
梔子 六花
芥子菜 未来
芥子菜 未来
魂の存在が感じられない、マネキン人形を思わせる表情。
六花は今から食肉加工される養豚場の豚でも眺める目つきで、
淡々と説明を終えた。
見知らぬ少年
杜松 楓
芥子菜 未来
杜松 楓
否応なく死のゲームに駆り立てられる未来。
未来とは真逆の反応を示し、
パニックになることで心の均衡を保とうとする楓達。
コンマ数秒で教室に境界線が敷かれ、
ただひとり孤立した未来の脳裏に、ある記憶の残像が走る。
それは、自分が引きこもりになった原因を作った事件を切り取って、
下手なパッチワークで繋げた、出来の悪いフラッシュバックだった。
クラスメイト
クラスメイト
???
芥子菜 未来
芥子菜 未来
芥子菜 未来
芥子菜 未来
芥子菜 未来
杜松 楓
ほんの少し。極僅かだが出逢ってすぐに芽生えた好意を打ち捨て、
どんなビジュアルで、どんな色をしているのか、
まったく検討もつかない解除装置を探す。
芥子菜 未来
机の中、カーテンの裏を覗く。
そこからは錆が浮いたハサミが出てきた。
芥子菜 未来
ゴミバケツの中からは、ハサミよりは錆びていない、
手術用器具の鉗子が幾つか出てきた。
芥子菜 未来
教室の後方に並ぶロッカーからは、
針が混入しているかどうかを検知する小型センサーである、
ハンディ検針器と『私を探して』と赤字で殴り書かれた、
気味の悪いメモが出てきた。
芥子菜 未来
芥子菜 未来
見知らぬ少年
見知らぬ少女
芥子菜 未来
ハンディ検針器の電源を弄び、
教室の至る場所に視線を投げつける。
しかし思考の袋小路に陥った未来は、
苛立ちをぶつけるみたいに、
ハンディ検針器を投げ捨てた。
芥子菜 未来
瞬間、ピピッ!と電子音が聞こえた。
ハンディ検針器が何かに反応している。
芥子菜 未来
音がしたほうを見やる。
そこには未来が目覚めた席と、
冷たい床に横たわる黒髪少女の死体があった。
ピピッ!再びハンディ検針器が鳴る。
近くには少女の死体。
ピピッ! 早く気づけとハンディ検針器が急かす。
ハンディ検針器のセンサーは黒髪少女の腹部を向いている。
ピピッ!ピピッ!ピピッ!
無機質な音が響く中、未来は全てを察した。
芥子菜 未来
芥子菜 未来
黒髪少女が着ているシャツを、
へその上あたりまでめくりあげる。
そこには、フランケンシュタインの怪物を連想させる、
不気味な縫い傷があった。
杜松 楓
見知らぬ少年
見知らぬ少女
自分以外の誰かにジョーカーを引かせたい。
薄汚くて卑怯なババヌキでもするみたいに、
皆が皆、責任から逃れようとしている。
そのことにほとほと嫌気が差した未来は、
錆びたハサミと鉗子をかき集めて、
黒髪少女のすぐ傍に膝をついた。
芥子菜 未来
芥子菜 未来
震える舌を感情で抑えつけ、
未来は黒髪少女の縫い目にハサミの刃をあてた。
そして…プツンと縫合糸を切る。
見知らぬ少年
芥子菜 未来
杜松 楓
芥子菜 未来
血は僅かに滲んでいるが、流れ落ちてはこない。
未来は吐き気をこらえながら、すべての縫合糸を切り、
鉗子で皮膚を固定し視野を確保した。
その直後、未来は内臓の奥深く。
うねる腸で包むように置かれた、
銀色の装置を見つけた。
芥子菜 未来
芥子菜 未来
…グチャリ。
顔をそむけしかめ、黒髪少女の腹の中に手を突っ込む。
冷め切った腸のヌルリとした感触に寒いものを感じながら、
未来は爆弾の解除装置を手に入れた。
見知らぬ少年
見知らぬ少女
杜松 楓
全身にじっとり汗をかき、
乱れた呼吸をどうにか整える未来。
その体全身を正体不明のアドレナリンが駆け巡り、
今にも大声で叫びたい気持ちになる。
そんな未来を、教室にいる20数名の少年少女が褒め称え、
羨望の眼差しを向けてくる。
未来はそれに応じるように、
銀色に輝く解除装置を頭上高くかかげた。
芥子菜 未来
杜松 楓
杜松 楓
芥子菜 未来
未来は満面に笑みをたたえながら、
解除装置のスイッチを親指で押した。
次の刹那…。
バスンッ!!
杜松 楓
未来以外の生徒全員の胸が爆ぜた。
杜松 楓
血にまみれた千切れかけの乳房をぶらさげ、
楓が未来に手を伸ばす。
芥子菜 未来
頭がまっしろになる。
自分が手に入れたのは解除装置のはず。
未来は阿鼻叫喚の地獄と化した教室で、
ただひとり無傷のまま立ち尽くしていた。
と…その時。
ガラリッ!!!
教室の扉が唐突に開き、
黒服の護衛を引き連れた六花が、
未来の前に姿を現した。
芥子菜 未来
梔子 六花
梔子 六花
梔子 六花
梔子 六花
梔子 六花
場を凍りつかせる六花の報告を合図に、
楓達が血だまりに倒れ込んでゆく。
その様子を呆然と眺めていた未来は、
楓達の後を追うみたいに、どさっと倒れ込んだ。
To be continued…。
コメント
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こわーい