丸木田
数年前の俺は、ただのいじめられっ子だった
丸木田
死んだ爺さんの蔵で、あれを見つけるまでは……
丸木田
爺さんは、骨董品のコレクターだった
丸木田
だが、どれも変なガラクタばかりで、ろくな価値はなかった
丸木田
もっと金になるもの残しとけよな、って思ったもんだ
丸木田
だけど
丸木田
実は金では買えない価値のあるものだったんだ
数年前……
丸木田
爺の蔵、不気味な雰囲気があるから、
丸木田
クラスメートを閉じ込めたらおもしろそうだけど、
丸木田
学校から遠いんだよなぁ
丸木田
俺が誘っても、誰もついてこないから、連れてこられねぇや
丸木田
役にたたねぇなぁ
丸木田
せめて、金目のもんでもあったら、盗んでいこっと
丸木田
ゴソゴソ……
丸木田
なんだこのきたねえ本
丸木田
『妖魔召喚術』だってよ、売っても金になりそうにないな
丸木田
こんなもん、誰が信じるんだ?
丸木田
パラパラ……
丸木田
ケッ 馬鹿らしい
そう思って俺は長らくそれを放置していた
ただ、数年後、暇を持て余していたある日、そのことを思い出した
丸木田
まあ、でも、
丸木田
暇だからちょっと試してみるか
丸木田
なになに、淫魔の封印を解く方法?
丸木田
え、これ、淫魔の封印された壺が必要じゃねぇか!
丸木田
誰がもってるんだよ、そんなの!
丸木田
…………
丸木田
あれ、待てよ?
丸木田
じじいのやつ、この本に載ってるのとそっくりな壺、持ってなかったっけ?
丸木田
ゴソゴソ……
丸木田
あった!
そのとき、俺は理解したよ
じじいの骨董品が全部、妖魔関係の物だってことを、な
丸木田
淫魔の封印を解くには、小動物の魂が必要らしい
丸木田
小魚程度でいいらしいんだが
丸木田
確か、クラスの水槽でメダカを飼ってたな
丸木田
あれでいっか
丸木田
こんな時間だから、誰もいねぇよな
クラスメート
あれ、丸木田じゃん、こんな時間に何してんの?
丸木田
ぎょ!
丸木田
な、なんでもねーよ!
クラスメート
ふーん? 変なやつ
丸木田
うっせーな!
丸木田
ふぅ、びっくりした
丸木田
他には誰もいねぇよな……
丸木田
よし、メダカを掬いだして
丸木田
壺を前に、この呪文を唱えると……
丸木田
………………
丸木田
…………
丸木田
……
丸木田
何も起きねぇ
丸木田
まあ、そんなもんだよな……
ビシッ
丸木田
えっ、壺にひびが?
丸木田
あっ、メダカがみるみる干からびていく
丸木田
壺から煙が!
『お前に力を貸してやろう。その代り……』
丸木田
す、すげえ! この本は本物だ!
丸木田
ははっ、あははははは
次の日
丸木田
(学校かったりぃ)
丸木田
(早く、淫魔の力とかを試したいのによ)
先生
……というわけで、昨日、クラスで飼っているメダカを、
先生
水槽から出して殺してしまった者がいる
先生
先生は、君らを疑っているわけではないが、
先生
何か知っていることがあったら教えてほしい
丸木田
(早く終わんねぇかな)
クラスメート
先生
先生
なんだ?
クラスメート
昨日の夕方、教室で丸木田君をみました
丸木田
はぁ!?
先生
丸木田、本当か?
丸木田
知らねぇよ!
先生
実は先生も、丸木田が昨日放課後学校に来たと聞いていた
丸木田
!!
先生
丸木田、どうして嘘をついたんだ?
こうして、俺はこのあとクラスメートからつるし上げられた
教師と、あのクラスメート、絶対ゆるさねぇ……
続く