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妹の名は
「才賀 真冬」
当時小学四年生だった
真冬が死んだのは、今から三年前のこと。
寒い寒いトイレの中で1人、
首を切って死んだ。
部活からの帰り、妹の姿が見当たらず、 家中を探し回った。
トイレの鍵が閉まっている上に、返事もなかったため、 不自然に思い、 力ずくでこじ開けたところ
妹が首を切って倒れていた。
僕がそれを見つけて、抱き抱えた頃には
もう既に、息絶えていた。
周りを見ると、血痕がたくさん見つかり、 妹が倒れていた場所から離れた壁にも、血の跡があった。
10歳の力では、完全に自分の息の根を止めることが出来なかったのだろう。
傷口を見ると、たくさんの切り傷があった。
きっと1人で死ねずに、何度も首を切ったのだろう。
1度切ってしまえば、痛みは絶えず残り続け、 切って息の根をとめないと、 ずっと苦しみ続けることになる。
死ねない痛みに、 じたばたと暴れたのだろう。
当時12歳だった僕は、 息絶えた血だらけの妹を抱きしめながら 泣き続けることしか出来なかった。
泣き叫ぶ僕の声に異変を感じた、 近所の大学生のお兄ちゃんが慌てて僕のところに来て、 妹の姿を見た瞬間に、僕の目を強く覆って
「見ちゃダメだ。 このことは、絶対忘れるんだ。」
青ざめた顔でそう言った。
何をしても変わらない。 世界でたった1人の大事な妹をなくしたこの過去は 一生消えない。
あの時、なぜ僕は真冬の異変に気づけなかったのか。
悔やんでも悔やんでも、 もう真冬の声が聞こえないと思うと、 心の中が空っぽになったようでどうしようもなくなった。
真冬が死んでから父も母も落胆し、 家庭は一気に崩壊した。
墓は立てなかった。 真冬が死んだなんて思いたくなかった。
もし、事故だったならば、立ち直れたのかもしれない。 でも、あの真冬が、自らこの世を去る決断を: した。
その事実に僕らは絶望した。
ニュースで自殺や虐待、殺人事件などが、 世間に晒されている中、
僕ら家族は、家という囲いに隠れ、 平和ボケしていたのかもしれない。
人が死ぬ世の中を 情報の塊1枚隔ててこの目にしているのにも関わらず、 僕らはそれを平和だと謳った。
その無謀さに気づいたからこそ、アイツを殺さない選択なんて出来なかった。 死んでくれ。
真冬を殺した人間が明日を当たり前に生きているなんて耐えられない。 真冬が生きたかったけど生きれなかった明日を、 アイツが軽々と奪って、 明後日も明明後日も、その明日を生きているなんて 許せない。
だから殺したんだ。僕は人を殺めたのだ。
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