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星崎 ヒロア
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第1話、読み終わりました。1955年の暮ノ宮町、3人の少年たちの活き活きとした日常が瑞々しく描かれていて、とても引き込まれました。声真似で笑いを取る昇、誠の“魂の籠った声”を録りためる和彦、そして正義感溢れるガキ大将・誠——それぞれのキャラクターが立っていて、特に和彦が「僕の趣味だよ」と平然と言い放つ場面が印象的でした。雷に怯える誠を、昇が父親の声真似で守り、和彦が肩を摩る…あの3人の距離感が愛おしいです。ただ、ラストの「通りゃんせ」の不気味な合唱には背筋が冷えました。注意書きの通り、この幸せな日々がいつ崩れるのか、その予感に心臓が掴まれています。続きが気になって仕方ないです!
⚠︎注意書き⚠︎ この小説には以下の表現が含まれております 読む際にはご注意ください ・ショッキングな描写、鬱展開 ・時代錯誤な表現 ・グロテスク、ホラーな描写
この頃は、 明日が来るのが楽しみで仕方ない、幸せな日常が続いていた
…あの惨劇が起こるまでは
1955年の秋、放課後の暮ノ宮町
茜色の夕暮れは、ただの放課後の合図だった
夕暮れの下では、 泥まみれになった3人の少年が、 息を切らしながら駆け回っている
早川昇
早川昇
テレビのアナウンサーの声真似をする少年・早川昇は、 野球帽をかぶり直し、 四肢を大きく踏み出すようにして、駆け出す
声真似で人を笑わせることが好きな彼は、 テレビの芸能人やアナウンサーの真似をしては、 よく友人を揶揄ったり、茶化してくるお調子者
彼の後ろを小走りで着いてくる少年・常盤和彦は、 メガネのブリッジをクィッと持ち上げると、 初期型の録音機を回す
昇より落ち着いた性格で、口調も大人びているが、 子供達の声を録音することが好きな、風変わりな少年
黒岩誠
黒岩誠
早川昇
黒岩誠
戦闘で走るスポーツ刈りの少年こそ、 昇が何度も名前を連発する、黒岩誠だ
ガキ大将だが威張ることはなく、 正義感が強いヒーロー気質
誠はそのまま真っ直ぐ走るも、その先は行き止まりだった
このまま突進してしまえば、頭に激痛が走るだろう
黒岩誠
常盤和彦
早川昇
昇は男性アナウンサーの高い声から、 年相応の地声に戻った
誠は迫り来る昇と和彦に両手をあげた
黒岩誠
早川昇
誠と昇の横で、和彦は誠のハキハキした快活な声を、 テープに録音して、その場で堂々と聴き返していた
常盤和彦
和彦は満足げに微笑んだ
黒岩誠
常盤和彦
常盤和彦
和彦は大真面目な表情で、そう言ってみせると、 誠の体の動きが、一瞬だけ止まった
黒岩誠
黒岩誠
誠は顔を少し赤らめると、隣にいた和彦の体を、 ふざけて軽く小突いた
早川昇
昇は不満げに、誠と和彦の間に割り込んできた
常盤和彦
早川昇
昇は頭を掻きむしりながら、 眉を顰めて、首を傾げる
困ったような声のトーンだったが、 普段の明るい性格を隠し切れていなかった
和彦はすぐに昇の地声を録音する
常盤和彦
常盤和彦
和彦に真っ直ぐな瞳で、じっと見つめられながら言われると、 昇は一瞬だけ動きを止めるも、サッと後退りをする
片手で野球帽触りながら、和彦をじっと見る
早川昇
黒岩誠
常盤和彦
和彦は高そうな録音機を持つと、 町の向こう側へ足を踏み出そうとする
一歩歩いたところで、和彦は後ろを向いて、 壁にもたれかかる二人に、静かな笑みを浮かべる
常盤和彦
黒岩誠
誠は慌てた様子で、 今にでも転びそうな勢いで、和彦に着いて行こうとする
早川昇
昇は誠の背中を追うように着いて行った
3人が山を降りて、 いつものように、たわいのない日常を語り合っていると、 暮ノ宮小学校の昇降口の近くで、誰かとすれ違った
黒岩誠
誠は思わず、すれ違った子を二度見すると、 やっぱり自分のクラスメイトだと確信した
ピンクのリボンにおさげ頭の少女・槇原千鶴だ
彼女は誠のクラスの中でも優等生で、 私服は汚れ一つなく、小学生にしては妙な美しさがあった
常盤和彦
黒岩誠
早川昇
テストでは毎回高得点、 丁寧な立ち振る舞いで先生からも好かれていたその姿は、 誠たちにとっては「すげぇ奴」そのものだった
だが、自分たちとは違う世界のオーラで、 話しかけるどころか、近づくことすらできなかった
誠たちはそのまま、千鶴の背中を見送っていた
3人が帰り道を歩いていると、 肩に数滴ほど、雫が落ちてきたように感じた
誠はすぐに違和感を抱き、 自分の手を見つめると、少しだけ濡れていた
雫が落ちるスピードはどんどん早くなり、 じめじめした空気の中で、音を立てながら増えていく
その正体は、「夕立」だった
黒岩誠
早川昇
常盤和彦
誠と昇は和彦に手を引かれて、 都合よく近くにあった、大きな屋根で雨宿りをすることにした
早川昇
黒岩誠
常盤和彦
常盤和彦
和彦は肩をすくめると、 目を細めて悪戯っぽい表情を浮かべた
黒岩誠
しかし、さっきまで茜色だった空は、 鉛色の黒雲がみるみる空を侵食して、不穏な雰囲気を曝け出していた
次の瞬間、天を裂くような鋭い閃光が走り、 一瞬遅れて、耳に響くような爆音が炸裂した
黒岩誠
雷鳴を聞いた瞬間、 誠の顔は「いつもの男前なガキ大将」から、 「怯える普通の少年」に変わった
誠は小さな悲鳴をあげると、 隣にいた和彦の腕にしがみつき、 体を丸めてその場から動けなくなった
今度はさっきよりも遠い場所から、雷鳴が響くも、 誠は更に体を強張らせて、和彦の肩に自身の顔を乗せた
常盤和彦
和彦は震える誠の背中を摩る
昇は自分の両手で誠の耳を塞ぎながら、大きな口を開く
早川昇
早川昇
昇はいつもよりずっと、声を低くすると、 誠の父親の声真似をしながら、大きな声で雷の音をかき消した
誠は上手に言葉が出なかったものの、 一瞬だけ穏やかな顔つきに変わった
目の前の雷鳴が通り過ぎるのを待つことに夢中になっていたからか、 和彦が誠の弱々しい声を録音していることに、昇も誠も気付けなかった
気がつけば雨は止み、 さっきまで雷が鳴っていたとは思えないほど、 静かなそよ風の音だけが響いていた
黒岩誠
誠は雷の音がしなくなった途端、 汗を拭うと、歯を見せてニカッと笑った
しかし、すぐに二人の表情を見ると、 不安そうに眉を下げ、小声で呟く
黒岩誠
早川昇
昇は能天気な地声で、こんなことを言っているが、 最初から彼の弱みを言うつもりはなかった
常盤和彦
和彦は誠の肩に手を置くと、 冷静な声のトーンで言った
その時、どこか遠くから、 幼い子供が「通りゃんせ」を歌う声が聞こえる
その歌声はどこか棒読みで、 まるで感情がないようだった
よくよく聞けば、他の子供達の声が、 エコーのように重なっており、まるで人間じゃないみたいだ
常盤和彦
和彦は鼻にシワを寄せて、眉を顰めた
早川昇
早川昇
足をすくめる昇と怪しげに顔を歪める和彦を見て、 誠は二人の手を強い力で握り締める
黒岩誠
黒岩誠
黒岩誠
黒岩誠
誠のハキハキした声に励まされ、 二人の心の底にある不安は、段々と小さくなる
早川昇
常盤和彦
黒岩誠
3人の少年は、お互いの手を強く握りしめながら、 血のように赤く染まる夕暮れの向こうへ、足を踏み出したのだった