黒崎颯雅
なんで 俺 が …… なんで 俺 が 体育館 の 裏 から 、こんな 場所 まで …… !!

叫びながらも 、川藤 に 腕 を つかまれ 、半ば 強引 に 部室 へと 連れてこられる 黒崎 。その 後ろ では 、関川 、岡田 、御子柴 、湯舟 ら が 半笑いで ついてきていた 。
関川秀太
川藤 の やつ 、黒崎 ほんとに 連れてきちゃった ぜ ……

関川秀太
ど ― すんの 。あいつ 、方向音痴 すぎて グラウンド の 反対 走るぞ 、?

関川秀太
てか、 ボール 見た 瞬間 、キャッチ じゃなくて 観賞 に 入る ぞ 、?

そう 、彼 は 残念イケメン ── それも かなり の やつ である 。
部室 に 着く と 、すでに 安仁屋 や 若菜 、今岡 、桧山 らが 集まって いた 。
安仁屋恵壹
よう …… お前 も 来たのかよ

黒崎颯雅
…… うわ 、圧 強 。来いって 言われた から 来た だけなんで 。

黒崎颯雅
てか 俺 、今日 ほんと は 図書室 で

黒崎颯雅
平安時代 の 恋文 研究 する 予定 だったんだけどな ……

御子柴徹
ウソつけ 、図書室 で 寝てんの 毎回 見てるんだけど 、?

川藤 が 部室 の 前 で 立ち止まり 、堂々 と 宣言 する 。
川藤幸一
今日 から 、お前 たち には もう一度 野球 と 向き合って もらう 。

川藤幸一
辞めた 理由 、逃げた 理由 、全部 ひっくるめて ──

川藤幸一
それでも もう一度 、夢 を 諦められるか 、考えて ほしい 、!!

重い空気 。誰も すぐには 口 を 開けない 。
…… と 、沈黙 を 破ったのは 黒崎 だった 。
黒崎颯雅
え 、先生 、俺 もう 夢 とか 見ないんで 。

黒崎颯雅
寝たら 即 REM 睡眠 行く 体質 なんすよ 。

黒崎颯雅
夢 って 基本 、精神的 ストレス の 投影 らしくて 、それ 俺 には ──

若菜智哉
誰 が 医学講座 やれって 言った 、!?

黒崎颯雅
え 、? 違った の 、?

関川秀太
黒崎 、黙っとけ って ……

黒崎颯雅
でもさ 、俺 一応 、野球 の ことは 忘れて ない っすよ 、?

黒崎颯雅
この前 、ストレート って 何 km で 飛ぶか 調べてたら

黒崎颯雅
間違えて アナコンダ の 時速 ググってて ……

岡田優也
どっから 話 ズレたんだよ 、!?

若菜智哉
逆に すげぇ よ お前 ……

その場 に いた 全員 が 、思わず 頭 を 抱える 。
けれど 、川藤 は 少しだけ 、口元 を 緩めて 言った 。
川藤幸一
…… いいじゃないか 。お前 が どんなに ズレてようが

川藤幸一
まだ 野球 って 単語 に 反応 してんだろ 、?

黒崎颯雅
…… 別に 、反応 とか してねぇし 。アナコンダ の 話 してた だけだし

川藤幸一
そうか 、?

黒崎颯雅
そうだし 。俺 、野球部 とか もう 戻る気 ──

川藤幸一
── でも 今日 、部室 入る 前に 、靴 の 泥 落としてた よな

黒崎颯雅
っ 、!!

御子柴 が ふっと 目 を 伏せ 、安仁屋 が 腕 を 組んだ まま 横 を 向く 。
黒崎 は 真っ赤 な 顔 で 、声 を 荒げた 。
黒崎颯雅
お 、落としたんじゃなくて 、! 踏んだら 滑って 転びそう だった だけ だし 、!!

関川秀太
先生 、今 のは 図星反応 って やつ だから 気にすんな

岡田優也
黒崎 は さぁ 、そういうとこ 、マジ で 素直 じゃね ― よな

黒崎 は 顔 を ぷいっ と 逸らしながら 、小さく 呟いた 。
黒崎颯雅
…… 俺 が 戻って 、意味 あんの 、? あの 事件 起こして 、終わった 部 だろ 。

黒崎颯雅
皆 も 、本気 で また 野球 やりたい なんて …… 思って ね ― んじゃ ねぇの 、?

御子柴徹
本気 で なんて 、まだ 誰 も 言ってない だろ 。

御子柴徹
でも ── もう一回 くらい 夢 見たい って 思ってる 奴 は 、ここに 何人も いる

黒崎 の 顔 が 、ほんの 少し だけ 曇った 。
川藤 は 静かに 、そして 力強く 言った 。
川藤幸一
お前 が 何回 ズレても 、何 言っても いい 。

川藤幸一
ただ ひとつ だけ ── お前 が また 投げたい って 思ったら …

川藤幸一
その 時 は 、全力 で 支える からな

黒崎 は 視線 を 逸らしたまま 、ポケット から チューペット を 取り出した 。
黒崎颯雅
…… それ 、夏用 アイス だったら 信用 してたんだけどな

川藤幸一
なんだ その 基準 は 、!!
