ノア
この魔法界は、先程も言った通り、初代オルコットが創り上げたんだ。
ノア
魔法使いと呼ばれる、人間とは言い難い“人”が増え、それぞれ違った属性の使いが現れた。
ノア
火、水、木……そこから派生して、氷や風。今この魔法界には、“6つ”の属性が存在している
確かに、今まで出会った
使いや闇使いは、この6つの
属性魔法を使ってた
ノア
そしてシャノンの無属性は、その派生の中で生まれた別属性同士の混血。その別名は、“全属性”。
ノア
決まった属性を持たないから“無”とは呼ばれるものの、戦闘では相手に有利な魔法を使えるから、重宝されていたんだ。
ノア
一つの属性への魔力の傾きが大きければ、固有武器も扱えるからね
シャノン
えっ、そうなんですか!?
ノア
あぁ。ただ今も昔も、これは異例中の異例だからね。知らない使いの方が多いのも無理はない
無属性でも固有武器を……そしたら、
光に傾いている96ちゃんなら、
もしかしたら……?
ノア
話を戻すよ。
ノア
沢山ある属性の中でも、光と闇は特別でね。
ノア
派生もせず、他と合わさることもなく、それぞれ孤立していて、特別な力もあるんだ
彼方
特別な力?
ノア
光属性なら“瞬間移動(テレポート)”、闇属性なら“感情操作(コントロール)”。
ノア
これが、光と闇だけの、魔法とは言い難い特別な力
翔太
え……瞬間移動って、光属性の魔法じゃなかったんですか?
ノア
あぁ、そう思われがちだけれどね。それに、魔法というわけではないから、私達は使っているんだ
魔法じゃない……魔力を
使わないから、ノアさん達は
普通に使ってたってこと?
ノア
“感情操作(コントロール)”については、みんなも心当たりがあるんじゃないかな
真冬
使いを闇堕ちさせる力……ですか?
翔太
いや、少し違うと思う。
翔太
僕は前まで自分で使ってたけど……あれは闇堕ちさせるって言うよりも、その為に負の感情を増幅させて、堕とすのを促してる感じだった。
翔太
僕の闇は、自分の魔力を直接流し込んでた感じでもあったけど……多分これは違うかな。
翔太
だから、その“感情操作(コントロール)”は、闇堕ちとはちょっと違うような……?
ノア
そう、元々この力は、人の感情を操作するというだけのもの。
ノア
闇属性使いなら、力の使い方によっては、明るい気持ちにさせることも可能なんだ
渉
じゃあ、言い方悪くなるけど……それを悪用してるのが、闇使いってことっすか?
ノア
言ってしまえばそうだね。ただ闇属性と“闇”は、同じようで、実は少し違うんだよ
彼方
違う……?
ノア
“闇”は、魔法は関係なく、感情を持つ者全てに発生し得るもの。
ノア
魔法使いにとっての“闇”は、魔力が感染して蝕まれていくイメージが正しいかな。
ノア
対して闇属性は、歴とした一つの魔法属性。ただ、特別な力がある代わりに、固有武器を使うことができない。
ノア
“闇”と通づるものは確かにあるけれど、本質は違うんだ
魔力を通して心を侵食する“闇”と、
一属性として確立している闇……
話を聞く限りだと、確かに2つは、
似ているようで少し違うような、
そんな感じがする
ノア
ただ、その闇属性は、昔とあることをきっかけに、魔法界から追放されてしまった
彼方
それがさっきの……
ノア
あぁ、5代目オルコットの犯した禁忌だね。
ノア
その事件後、闇属性は一族全員現世へ追放され、5代目は統治者の任期終了と共に処刑された
真冬
処刑……!?
ノア
この禁忌は、オルコットの血だけではない。闇属性一族にとっても、同じく禁忌だったんだ
渉
つまり、お互い同じ属性の人としか婚約しちゃダメってことですか?
ノア
あぁ。オルコット側は、創造者の血をできるだけ穢さず、統治者として力を強めていく為。
ノア
そして闇属性側は、他属性へ闇の影響を与えてしまわない為に
優
闇の影響……?
ノア
私達のような闇の血を継いだ者は、闇の影響で固有武器を持つことができなくなるんだ。
ノア
だから闇属性使いは、その影響で他属性の力を奪わない為に、闇だけの大きな“一族”として繁栄していた。
ノア
無属性使いが闇魔法だけを使えないのも、それが関係しているんだよ
他属性に影響を与えない為……
だから混血の無属性が生まれても、
闇属性は関わりがなかったから、
唯一闇だけを使えないんだ
ノア
そうして闇属性使いが追放された直後、魔法界に“結界”が張られた
シャノン
結界……って、あの?
真冬
そんなのあるの?
シャノン
うん、闇を弾く為のもので、定期的に全部の属性使いが集まって修復してるんだけど……
翔太
……あ、そうだそうだ。前まで“僕”が事件を起こす直前、それっぽいもの壊してた気がする
シャノン
結界壊してたぁ!?
翔太
あ、あはは……なんかごめんなさい……
シャノン
い、いや、それは良いんだけど……
ノア
シャノンが言っていた通り、今では対“闇”に作用が変わってきているけれど、昔は対闇属性用に作られたものだったんだよ
彼方
対闇属性……
ノア
結界の作用は、闇属性の魔力に対する拒絶。これによって、闇属性使いは魔法界へ来られなくなった。
ノア
そして副作用は、結界に魔力が認識された者への、“闇”の蓄積
真冬
え……それってどう言う……?
ノア
……みんなは、魔法使いには、闇が溜まるものだと認識しているね
翔太
は、はい……
ノア
けれどそれは、結界が張られる前は違った。だから昔は、魔法界にも闇生物が発生することもあったんだ
シャノン
え……!?
ノア
そしてその結界は、普段は魔法界にいる使い達の魔力を、少しずつ吸い取って維持されている
翔太
それって……
ノア
昔……結界が張られる前の魔法界は、現世とあまり変わらない場所だったんだよ
真冬
(結界一つで、こんなに世界が変わったんだ……)
ノア
ちなみに、結界の力は魔法空間にも影響している。これは、結界ができてからまた少し先の話になるけれどね。
ノア
この結界は、闇属性の魔力と“闇”を上手く見分けることができないという欠陥があった。
ノア
だから、もし闇生物や闇使いが出現しても、すぐ現世へ強制転送されていくんだ。
ノア
そして今、長い時の中で闇属性自体の存在が忘れられ、結界は少しずつ、対“闇”用へと作用が変わっていった。
ノア
だからもし、闇属性使いが今も生きていれば、再びここに来ることができるかもしれないね
闇属性の人がここにって、普通に
考えて大丈夫なのかとも思うけど、
少し会ってみたい気もする
ノア
それと……あぁ、これは今は関係ないか。
ノア
オルコットの話に戻るけれど、今は闇の力を薄める為にも、光だけの血を継ぎ続けてるんだ。
ノア
……ただ、そうしていく内に、光の力が少し強くなり過ぎてしまってね
彼方
強くなり過ぎた……?
ノア
あぁ。私達オルコットは、魔法は普通に使える。無属性使いのように、固有武器は持たなくとも戦うことはできる。
ノア
……けれど、殺してしまっては意味がない
真冬
っ……!?
ノア
闇を隠す為、私もテオも、一切魔法を使わず生きてきた。だから、力の制御をすることができないんだ。
ノア
強くなり過ぎた力を、加減無しで打てば……例え“光矢(ライトアロウ)”一本でも、人を殺せてしまう
翔太
え……
シャノン
お、オルコットって、そんなに強くなっていたんですか……!?
ノア
あぁ、だから尚更、戦闘には出られない。申し訳ないけれど、みんなに任せるしかなくなってしまったんだ
そうか……そらるさんが言ってた
アデルさんの話も、自分が強すぎる
からと、闇の力が混ざってるから、
戦おうとしなかったんだ
ノア
…………それと……これは本当に、もしもの話だけれどね。
ノア
もし、“オルコットの誰か”と戦うことになった時は……十分気をつけて欲しい
テオ
の、ノア様……?
ノア
あぁ、すまない。今のは忘れてくれ。
ノア
今日は、みんなに伝えたいことがあったんだ