耳の中が猛烈に痒かった
悩みに悩んで決めた行き先は二十四年前
俺が生まれる七年前だ
この時、父ちゃんと母ちゃんが出会っていたかはわからない
父ちゃんはあまり昔の話をしたがらないから
悩みに悩んだとは言ったが
結局は適当にそれくらい前でいいかと思っただけ
明日夢
明日夢
じいちゃん
じいちゃん
明日夢
明日夢
明日夢
じいちゃん
手渡されたのはデジタルの腕時計
明日夢
じいちゃん
明日夢
明日夢
未来や過去へ飛ぶにはこの椅子とパソコンが必要になるけど
このリモコンがあれば簡単に戻ってこれるらしい
未来や過去での最大滞在時間は十二時間
十二時間が経過すると自動でここに戻る仕組みのようだ
腕時計型のリモコンを右腕に装着してヘルメットを被る
じいちゃん
明日夢
じいちゃん
明日夢
じいちゃん
いつものようにじいちゃんがキーボードのenterキーを押した
じいちゃん
愛紗
愛紗
明日夢
明日夢
明日夢
愛紗
愛紗
明日夢
明日夢
明日夢
愛紗
明日夢
目の前には
二十四年前の母ちゃんがいる
明日夢
さっきまでの興奮が一気に冷め
明日夢
明日夢
急に緊張が高まり額からは汗がにじみ出てきていた
愛紗
愛紗
明日夢
明日夢
愛紗
愛紗
明日夢
愛紗
愛紗
愛紗
鳥肌が立った
母ちゃんはこの状況に驚きつつもちゃんと冷静に分析している
俺ならきっとこんな風ではいられない
明日夢
愛紗
愛紗
明日夢
愛紗
愛紗
明日夢
さっきは冷静に分析していると思って驚いたけど
驚きすぎて逆に冷静に見えただけだったようだ
愛紗
明日夢
愛紗
愛紗
明日夢
明日夢
愛紗
明日夢
ここで最大のミスに気づいた
俺は今
言ってはいけないことをさらっと答えてしまった
愛紗
明日夢
愛紗
愛紗
愛紗
俺の話を信じてくれている
普通なら通報されてもおかしくないのに
母ちゃんはそんな素振りは一切、見せなかった
愛紗
愛紗
愛紗
徐々に母ちゃんのテンションが上がっていく
愛紗
明日夢
愛紗
明日夢
また余計なことを言ってしまった
愛紗
愛紗
明日夢
愛紗
愛紗
愛紗
愛紗
明日夢
愛紗
愛紗
愛紗
愛紗
さすがにそれは教えられない
そんなことをしたら未来が変わってしまうかもしれないから
既にちょっとしゃべってしまってるし
これ以上、何か話せばじいちゃんに叱られる
でもどうしても
これだけは伝えたかった
明日夢
明日夢
明日夢
愛紗
愛紗
明日夢
愛紗
明日夢
愛紗
愛紗
明日夢
愛紗
愛紗
その時チラッと見えた母ちゃんの右腕
母ちゃんは俺と同じ深緑の腕時計をしていた
まだ綺麗で新しい
大切に使うようにって父ちゃんが俺にくれた
明日夢
愛紗
明日夢
明日夢
本当に母ちゃんは
その恭也って人と結婚しちゃうのかな……