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ナンパ男の秘密

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ナンパ男の秘密

9 - ハロー、バイバイ

♥

222

2022年04月14日

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人間の一生はあまりにも儚い

――ハロー、バイバイ

我々の感覚ではこれくらいだと神様は言った

佐竹美香

私だけが幸せになるなんて出来ない

小林

そんなこと言ったら先輩が悲しみます

小林

あなたの涙を止める力が俺にあればいいのに……

幸福が何なのかを知らずに一生を終える者もいる それを教え与えるのが天使の仕事だ

悔いのない幸福な人生だったと言って終えることで その幸福の連鎖は周囲の者へも広がる

佐竹美香

会いたい、会いたいよ……

アマノ

君に会ったら、なんて声をかけようか

アマノ

とりあえず、ハローでいいか

一ヶ月後

ピロン

美香

今日の昼休み時間ちょっといいかな?

美香

……ちょっと相談したいことがあって

アマノ

――三ヶ月以内にある女性を幸福にすること

アマノ

見習いから正式な天使となったオレは

アマノ

神様から初めて仕事を与えられ地上に舞い降りた

アマノ

じゃあ昼休み、屋上で

美香

ありがとう

昼休み

アマノ

いい天気だな、今日も

佐竹美香

ふふっ、そうね

隣で優しく微笑む彼女こそが オレのターゲットである佐竹美香だ

彼女は2年前に恋人を事故で亡くしている 暴走した車から彼女を守ってのことだった

佐竹美香

突然呼び出してごめんね

アマノ

別にいいよ。で、どうしたの?

言葉の出ない口元に伸ばす左手の薬指には 彼女の心を占めているのは死んだ彼だという証である 傷だらけの婚約指輪が今でもしっかり嵌っている

佐竹美香

………

死者への強い思いは時として、重い足枷になる 生者にとっては、死を引き寄せる足枷に 死者にとっては、生前の未練を引きずる足枷に

佐竹美香

私、もう誰も愛したくないの

佐竹美香

……また失うのが怖い

彼女にはもうすっかりその足枷が馴染んでいる 新しい一歩を踏み出せないほどに重い足枷が

アマノ

もしかして小林に告白された?

佐竹美香

……やっぱり2人で組んでたのね

アマノ

オレはね、君を幸せにするために地上に舞い降りた天使なんだ

佐竹美香

すぐにそういう冗談言うんだから

佐竹美香

あの人もよくそういう冗談を言う人だったな……

アマノ

君には見えていないだけだよ

佐竹美香

……え?

アマノ

たった一歩踏み出せば見つかるもの

アマノ

それを君に教えるためにオレはここにいる

3時間後

小林

アマノ先輩!ちょっと!

オフィスの入り口からひとりの若い男が手を振っている

小林

すみません、突然

小林がこうしてオレの元へやってくることも計算済みだ

小林

あの……俺、ついに言ってしまいました!

小林

彼女に好きですって!

小林

うわぁあ!恥ずかしい!

耳まで真っ赤にした小林が自分の手で顔を隠す

アマノ

乙女か、このやろう。まぁでも……

アマノ

よく言ったな。偉いぞ、小林

小林

ただ傍にいられるだけでいいって思っていたんです

小林

彼女の心にはまだあの人が生きているから……

アマノ

彼女の心の中にいる男は思い出にしか過ぎない

アマノ

そんな男に逃げ腰でどうすんだよ

小林

アマノ先輩……

小林は美香の恋人だった男の高校時代からの後輩で 自分に何かあったら美香を頼むとその男から言われていたらしい

小林

でも俺にとってもあの人は大事な先輩です!

これはオレの憶測にしか過ぎないが…… 死んだ恋人は小林が美香に惚れていることに気づいていた 死者の言葉は生者を縛り付けるから厄介だ

アマノ

で、告った結果は?

小林

ただ笑ってありがとうって……それだけ

小林

脈ナシですよね、完全に……

アマノ

バーカ。好きなら諦めんな、絶対

小林

……はい!

数週間後

地上での仕事も残り一ヶ月を切る中、 彼女と小林は少しずつ距離を詰めていった 成功へ向かっていることに喜ぶべきなのに……

アマノ

なんか胸がモヤモヤするんだよな、最近

ピロン

美香

昼休み時間ある?

アマノ

あるよ

昼休み

佐竹美香

ごめんね、また呼び出しちゃって

アマノ

最近小林とよく出かけてるみたいだね

佐竹美香

……うん

アマノ

付き合わないの?

佐竹美香

本当は一度はお断りをしたの

佐竹美香

もう一度人を愛せる自信がないからって

佐竹美香

でもね、小林君が言ったの

アマノ

なんて?

佐竹美香

あなたを好きなことを諦めたくないって

アマノ

あいつはちゃんと新たな一歩を踏み出している

アマノ

君も一歩を踏み出す時が来ているんじゃないのかな?

佐竹美香

でも……

彼女が傷だらけの指輪を無意識に撫でた瞬間、何かが弾けた

アマノ

君が一歩を踏み出さない限り、この先幸せなんか手に入らない

アマノ

君が一生誰も愛さない生き方をしているなんて知ったら

アマノ

悲しむのは死んだ恋人じゃないの?

佐竹美香

そんなのわかってるよ……

アマノ

あ……っ!

彼女の姿がドアの向こうに消えていく

アマノ

……何してんだ、オレ!

アマノ

感情のコントロールを失うなんてこと今までなかったのに

先輩天使

悩んでいるようですね

振り返ると屋上のフェンスに先輩天使が腰かけていた

先輩天使

神が君に与えた仕事は意味あってのことです

先輩天使

君が踏み出せばきっと彼女も踏み出せるはず

アマノ

意味?踏み出す?どういうことですか!?

再び問いかけても、そこにはもう誰もいなかった

数日後

結局オレは彼女に謝る勇気も出ず 天使の姿に戻り彼女を見守っている

アマノ

……天使失格だな、オレ

ピロン

美香

体調、大丈夫ですか?

美香

酷い風邪で休んでいると聞きました

アマノ

……オレの心配なんかしてる場合じゃないだろ

美香

この前は突然逃げてごめんなさい

美香

でもアマノ君の言葉に気付かされました

美香

死んだ彼を悲しませたくないから

アマノ

……え?

美香

これから小林君に伝えに行ってきます

美香

初めてかも。私から誘ったの……

地上を見下ろすと、彼女が今まさにマンションから飛び出し 小林の元へ向かおうとしているところだった

一台のトラックが走り抜けようとしているのが視界に入り 嫌な予感に背中の羽根が毛羽立つ

アマノ

……美香っ!!

佐竹美香

……タカシ?

急カーブでバランスを失ったトラックが彼女へと――

彼女へと手を伸ばした瞬間、足元からガチャンと音がした

アマノ

オレにも足枷が……!?

足元が軽くなると同時に全身を襲う強い衝撃

アマノ

……ぐっ!

――そしてオレはすべてを思い出した

小林

美香さん?……美香さんっ!

騒ぎを聞きつけたのか、顔を真っ青にした小林が走ってくる

小林

美香さんっ!

オレが天使になった理由を知っているか?

オレのいない世界で生きていく強さを与え お前を幸せにしてやりたかったんだ

オレはお前を幸せに出来ただろうか

佐竹美香

……小林く、ん?

小林

良かった……美香さん!

佐竹美香

好き

小林

……ふぇ?

佐竹美香

小林君が好き

小林

こ、こんな時に何を……でも

小林

俺も大好きです!あなたを幸せにしたい!させてください!

最後の力を振り絞り、関わった人々から記憶を そして彼女の指から傷だらけの指輪を消す

アマノ

オレの初めての仕事、大成功じゃね?

今なら言える――悔いのない人生だった、と

一年後

佐竹美香

天井から純白の羽根が……

小林

式場の演出かな?

佐竹美香

この羽根……とてもきれい

アマノ

――幸せになれよ。……バイバイ

佐竹美香

あれ?突然涙が……

小林

はい、ハンカチ

佐竹美香

ありがとう

アマノ

さーて、今度は誰を幸せにする仕事かな

バサッ

アマノ

――今日も世界で幸福で満ち溢れますように

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