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花梨
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令和を生きるハムスター
猫の姿になった志保は、しばらく家の中を駆け回っていた。
飛び跳ねるたびに足先が軽やかで、家具の隙間にすっと入り込めるのが楽しくてたまらない。
でもやがて、胸の奥が落ち着かなくなった。
若林 志保(猫の姿)
窓を少し開けると、夏の風が吹き込んできた。
志保はするりと縁側に飛び降り、そのまま庭を抜け、見慣れた町へと駆け出した。
昼下がりの道。アスファルトは熱を帯び、蝉の声が頭上で降り注いでいる。
猫になった志保の耳は敏感に音を拾い、世界がこれまで以上に鮮やかに広がっていた。
やがて彼女の足は自然に、一つの場所へと向かっていた。
小さな神社。通学のときに何度も見てきた場所だ。
境内の入口に立つ赤い鳥居が、夏の日差しに照らされて鮮やかに浮かび上がっていた。
その鳥居の前に、一人の少年が立っていた。
黒い髪が少し汗で張りつき、肩には学生鞄。
志保より少し年上に見える。
彼は両手を合わせ、目を閉じて静かに祈っていた。
志保は足を止め、しばらく見つめた。
その横顔に、なぜか胸がざわつく。
猫の鼓動が早くなっていく。
若林 志保(猫の姿)
少年は祈り終えると、ふうっと息を吐いた。
そのとき、志保と視線がかち合った。
吉沢 優希
少年──吉沢優希は、少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。
そしてしゃがみ込むと、手を差し伸べる。
吉沢 優希
その声に、志保の心臓はさらに跳ねた。
指先から伝わるぬくもりに、胸の奥が熱くなる。
若林 志保(猫の姿)
理由なんてわからない。
けれど、猫の志保は直感した。
この出会いが、自分にとって特別なものになると。
蝉の声が境内に響く。
赤い鳥居の前で、猫の志保と優希の物語が、静かに動き始めた。
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